Release アロー総研発信情報

ひとのはなしは聴くな。東洋大学・加藤建二の仕事論【連載第2回】

2026.10.30

#大学広報 #大学 #allow intelligence

全国の大学で、最前線で情報発信を担う広報担当者様、そして変革を模索する経営層の皆様へ。
日々、「限られた予算内でいかに志願者を増やすか」「他大学との差別化をどう図るか」という課題に向き合われていることと思います。

私たちアローコーポレーションは、これまで多くの大学のマーケティングや広報戦略に伴走してまいりました。
その中で痛感しているのは、どれほど優れた広告やプロモーションを展開しても、現場の皆様が日々の「作業」に忙殺されていては、本質的な大学の魅力(=選ばれる理由)を社会へ届ける戦略を描ききれないという事実です。

真の広報戦略を成功させる第一歩は、皆様自身が業務を棚卸しし、「考える時間」を取り戻すことに他なりません。
そこで本記事では、「不動不変」とされてきた大学序列を覆し、大胆な教学・組織改変を断行してきた大学改革のスペシャリスト・加藤建二氏(allow intelligenceのプロフェッサーX)のノウハウをお届けします。

現場の意識づくりから大規模なグランドデザインの構築まで、実効性のある改革ノウハウが凝縮された第2回。
惰性の業務を削ぎ落とし、広報戦略や大学の未来を「考える時間」を創出するためのヒントをお届けします。

【執筆者プロフィール】 加藤 建二氏[かとう・けんじ]

東洋大学 経営企画本部アドミッション統括アドバイザー
アロー教育総合研究所 顧問
2026年より現職。2013年4月、東洋大学入試部長に就任。職員生活38年中25年が入試部勤務。2014年から10年間、学校法人の理事も務める(2024年12月退任)。
他大学に先駆け、Web出願、紙の大学案内の廃止や一般選抜での英語民間試験利用等を主導。「不動不変」とされてきた大学序列を覆し、大胆な教学・組織改変を断行してきた大学改革のスペシャリスト。現場の意識づくりから大規模なグランドデザインの構築まで、実効性のある改革ノウハウを提言します。東洋大学OB。講演、執筆多数。

勉強熱心な職員ほど、迷走する

前回、「(大学職員は)ラクすることをめざせ」と書いた。今回は、もう一歩踏み込んで、あえてこう言いたい。
「大学職員は「ラク」をめざせ。加藤建二の仕事論【連載第1回】」の記事はこちら

「ひとのはなしは聴くな」

誤解を恐れずに言う。これは、他人を軽んじろという意味ではない。
むしろ逆だ。真剣に向き合ってきたからこそ、たどり着いた結論なのだ。

大学職員向けの講演会やセミナーに、熱心に通う職員は多い。私も、その熱意を否定するつもりはまったくない。むしろ立派なことだと思う。
しかし、正直に言わせてほしい。そうした勉強が、長続きしないケースを、私は何度も見てきた。

なぜか。

講演で語られる「成功事例」の多くは、その大学の、その時代の、その条件下でだけ成立した話だからだ。
有名大学の職員が語る成功談を聞いて、「よし、うちでもやろう」と意気込んでも、土台となる偏差値も、立地や規模も、ブランド力も違う。
借り物の成功例をそのまま自分の大学に当てはめようとするから、うまくいかない。うまくいかないから、続かない。
これは、本人の努力不足ではない。やり方そのものが、最初から間違っているのだ。

講演会で聞いたことをそのまま鵜呑みにして、真似ようとするのではなく、自分の大学の事情や特質に合ったかたちにカスタマイズする工夫が必要だ。

「東洋大学を知らない人はいない」という事実

各学部からは、よくこんな不満の声が上がる。
「受験者数が増えないのは、広告が足りないからではないか」
 
そのたびに私は、こう問い返してきた。
「東洋大学を知らない人なんて、いますか?」
 
認知度が低いわけではない。知名度が足りないわけでもない。単純に、その学部が「選ばれていない」だけなのだ。
これは厳しい現実だが、データを見れば一目瞭然だ。感覚や印象で語る前に、志願者数の推移、併願状況、競合校との比較を、数字で突き合わせてみてほしい。
そこに答えはすべて書いてある。
 
「大学が悪い」のではない。「学部が選ばれていない」理由が、必ずどこかに存在する。

それを見ずに、感覚や思い込みで不満を語っても、何も変わらない。

入試を知らない人間に、入試をいじらせるな

これは、私が現場で何度も痛感してきたことだ。入試のことを知らない人間に、入試をいじらせてはいけない。
 
たとえば、教員に入試科目の設計を任せると、「数学IIIを入れたい」というような話が出てくることがある。
学問的な理想としては、理解できなくはない。しかし、それが受験生の動向や、競合校の入試設計、実際の出願データと照らし合わせたときに、本当に受験生を集める戦略として正しいのか。
そこを冷静に検証しなければ、善意から出た提案が、結果として受験生を遠ざけてしまうことになりかねない。
 
これは、教員を批判したいのではない。立場が違えば、見える景色も違うというだけのことだ。
だからこそ、入試や広報の最前線にいる私たち職員が、感情論ではなく、データに基づいて冷静に判断する役割を担わなければならない。

私がやったのは、学生を変え、大学を変えること

私がやってきたことは、特別なことではない。入試科目を増やし、文系学部にも数学選択者を増やす。
地味で、時間のかかる取り組みだ。しかし、これらはすべて、データの裏付けがあったからこそ踏み切れた決断だった。
 
「入学する学生を変えれば、大学は変わる」
 
これが、私がずっと信じてきたことだ。華やかな広報戦略よりも先に、まず「誰が入学してくるのか」を変える。
そのために、入試制度そのものに手を入れる。これは、誰かの経験談を聞いて思いついたことではない。
データを丹念に読み込み、他大学の動向と比較し続けた結果、たどり着いた判断だった。

データを信じろ。他大学を見ろ

ここで、最初の言葉に戻りたい。「ひとのはなしは聴くな」の真意は、こういうことだ。
 
人の意見や感覚ではなく、データを信じろ。
自分の大学だけを見るな。他大学も見ろ。
 
講演会で誰かが語る成功体験は、あくまで参考情報の一つに過ぎない。鵜呑みにしてはいけない。
本当に信じるべきは、目の前にある数字と、自分の目で確かめた他大学の実態だ。
 
私たちが向き合うべき相手は、学内の空気でも、過去の慣習でもない。志願動向という事実であり、ライバル校という現実だ。
そこから目を逸らさず、愚直にデータを見続けること。それこそが、私たちに求められている仕事だと思う。

誤解してほしくない

最後に、一つだけ誤解を解いておきたい。
 
私は、人の話に耳を傾けることを否定しているのではない。先輩の経験、同僚の意見、他大学の職員との交流。
そのすべてに、学ぶべき価値がある。私自身、多くの人の言葉に支えられ、ここまで来た。
 
ただ、最後の最後に判断を下すときには、人の話や雰囲気ではなく、必ずデータに立ち返ってほしい。
「あの人がそう言っていたから」ではなく、「数字がそう示しているから」という判断軸を、自分の中に持ってほしいのだ。
 
大学職員は、優しさと冷静さの両方を持ち合わせなければならない仕事だと思う。
人の話には耳を傾け、心を寄せながらも、最終的な意思決定は、冷静にデータと向き合って下す。
その両立ができる職員こそが、これからの大学を支えていくのだと、私は信じている。

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【画像は生成AI作成のものを含みます】

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