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大学職員は「ラク」をめざせ。改革のスペシャリスト、東洋大学・加藤建二の仕事論【連載第1回】

2026.09.30

#大学広報 #大学 #allow intelligence

全国の大学で、最前線で情報発信を担う広報担当者様、そして変革を模索する経営層の皆様へ。
日々、「限られた予算内でいかに志願者を増やすか」「他大学との差別化をどう図るか」という命題に向き合われていることと思います。

私たちアローコーポレーションは、これまで多くの大学のマーケティングや広報戦略に伴走してまいりました。
その中で痛感しているのは、どれほど優れた広告やプロモーションを展開しても、現場の皆様が日々の「作業」に忙殺されていては、本質的な大学の魅力(=選ばれる理由)を社会へ届ける戦略を描ききれないという事実です。

真の広報戦略を成功させる第一歩は、皆様自身が業務を棚卸しし、「考える時間」を取り戻すことに他なりません。

そこで本記事では、「不動不変」とされてきた大学序列を覆し、大胆な教学・組織改変を断行してきた大学改革のスペシャリスト・加藤建二氏(allow intelligenceのプロフェッサーX)のノウハウをお届けします。

現場の意識づくりから大規模なグランドデザインの構築まで、実効性のある改革ノウハウが凝縮された第1回。
惰性の業務を削ぎ落とし、広報戦略や大学の未来を「考える時間」を創出するためのヒントをお届けします。

【執筆者プロフィール】 加藤 建二氏[かとう・けんじ]

東洋大学 経営企画本部アドミッション統括アドバイザー
アロー教育総合研究所 顧問
2026年より現職。2013年4月、東洋大学入試部長に就任。職員生活38年中25年が入試部勤務。2014年から10年間、学校法人の理事も務める(2024年12月退任)。
他大学に先駆け、Web出願、紙の大学案内の廃止や一般選抜での英語民間試験利用等を主導。「不動不変」とされてきた大学序列を覆し、大胆な教学・組織改変を断行してきた大学改革のスペシャリスト。現場の意識づくりから大規模なグランドデザインの構築まで、実効性のある改革ノウハウを提言します。東洋大学OB。講演、執筆多数。

いまの仕事に疑問を持つこと

大学職員になってずっと考えてきたのは、「結果」を出しつつ自分の仕事をいかにラクにするのかということ。
前任者がやってきたことに疑問を持つこと。この仕事が本当に大学や受験生にとって「良いこと」なのかということだ。
いま、私は、あえてこう言いたい。
 
「大学職員は、ラクすることをめざせ」
 

これは怠けろということではない。
意味のわからない仕事、効果のわからない仕事、惰性でやり続けている仕事を徹底的に削ぎ落とし、必要な業務を極力、効率化して、時間も気持ちも余裕のある状態をつくること。
そして、本当にやるべき仕事に、たっぷりの時間をかけて取り組む。そういう職員になれ、ということだ。

疑問を持った仕事から、やめていった

私が最初にやめたのは、形式だけの高校訪問だった。毎年、決まった時期に、決まった高校を回る。
それ自体が目的になっていて、誰も効果を検証していない。
「去年もやったから今年もやる」。そんな理由で続けている仕事が、大学にはなんと多いことか。
疑問を持った仕事から、一つひとつやめていった。それが私の「業務改革」の出発点だった。
 
やめたこと① 出願書類の「紙」依存
 
2013年、紙の願書を廃止した。当時、「予算がないからアウトソーシングできない」という声が上がった。
たしかに、システム導入には費用がかかる。しかし、私はこう問い返した。
 
「自分たちの人件費を、計算してみましたか?」
 
紙の願書を受け付け、仕分けし、入力し、確認する。その作業に何人の職員が、何時間を費やしているか。
アルバイトを雇うコストを問題にする前に、私たち自身のコストを直視すべきだった。
 
数字で見れば、答えは明らかだった。
ネット出願への完全移行は、受験生の利便性を高めただけでなく、職員が「作業」に費やしていた膨大な時間を解放した。
同時に、入試情報サイト「TOYO Web Style」を開設し、広報戦略をデジタルへと大きくシフトさせた。
 
これは単なるIT化ではない。「やめる決断」が生み出した改革だった。
 
 
やめたこと② 紙の大学案内の廃止
 
2013年、私たちは紙の大学案内(2014年度入試版)を廃止した。
 
大学案内の制作がいかに大変か、経験した人ならわかるはずだ。
写真撮影、原稿作成、デザイン、校正、印刷などなど。これだけの人的リソースを投入して、毎年つくり続ける。
 
さらに、大学案内をネットで請求できるようになってからというもの、ハガキで資料請求していたころの約3倍の請求数に膨れ上がり、20数万部もの印刷が必要になった。
これらに対応するコストを積み上げていくと、思わず問いたくなる。

「本当に、つくる必要がありますか?」
 
廃止を決めたとき、周囲からの反発は小さくなかった。
「受験生に届かなくなる」「他大学もやっていない」。
しかし当時、受験生の情報収集はすでにインターネットへと移行しつつあった。紙にしがみつくことが、果たして受験生のためになるのか。
 
ネット出願への完全移行と紙の大学案内の廃止。
この二つは、大学関係者の間でも広く知られる取り組みとなった。
だが私にとっては、「時間をつくるための、当然の選択」に過ぎなかった。

リーダーの仕事、「棚卸し」をせよ

業務の「棚卸し」は、リーダーの仕事だ。部下に「効率化しろ」と言う前に、上司が自ら仕事を見直し、やめてみせなければならない。
口で言うだけでは誰もついてこない。やめる勇気を、背中で示すことが管理職の役割だと、私は思っている。
 
大学職員は、作業をこなすために存在するのではない。考えるために存在する。
考える時間をつくれない組織に、未来はない。

本当にやるべきこと。それは、「売れる学部」をつくること

それでは、効率化で生まれた時間で何をするのか。
私が考え続けてきたのは、「売れる学部をつくること」だ。広報に多額の費用をかけなくても、学生が集まる学部。
そういう学部を生み出すことが、大学の本質的な競争力につながる。
 
残念ながら、多くの大学が逆のことをしている。
「こういう教員が学内にいるから、こういう学部をつくろう」という発想で学部を設置し、そこに多額の広報費を投じて、売れないものを売ろうとしている。
 
一方、龍谷大学農学部は見事だった。
競合が少ない「空白の場所」に、学部を設置した。
教員ありきではなく、市場を見て、需要を見て、戦略的に動いた。
 
現代の受験生は賢い。ちゃんとしたものをつくらなければ、選ばれない。
「どんな学部が求められているか」。
そのネタを提供するのが、私たち職員の仕事だ。
 
教員は、市場を読むことが苦手だ。だからこそ、職員が徹底的に現状を分析しなければならない。
自分の大学だけでなく、ライバル校を分析し尽くし、比較する。私たちが対峙すべき相手は、高校生ではない。他大学だ。

「考える職員」になった、その先に

いらない仕事をやめる。考える時間をつくる。そして、本当に大切な仕事に、全力を注ぐ―。
 私が「いまの仕事に疑問を持て」と言うとき、その先に描いているのは、戦略を考え、大学の未来をつくることに時間をかける職員像だ。
 
作業に追われ、疲弊し、「なんのためにやっているんだろう」と感じながら働く日々。
そんな職員人生を、私は誰にも歩んでほしくない。
 
ラクをすることをめざせ。考えろ。

そして、動け。大学が本当に強くなるのは、そのときだ。

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【画像は生成AI作成のものを含みます】

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