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大学と教育現場が語り合う一日──「高大接続総会 福岡会場」開催レポート

2026.07.16

#大学入試 #高大接続 #総会レポート

激変する大学入試改革や新学習指導要領への対応を見据え、大学側と教育現場が最新情報を共有する「高大接続総会」。
2026年6月12日(金)、株式会社アローコーポレーションの主催・運営により、博多国際展示場&カンファレンスセンターにて開催しました。高等学校教員を中心に135名がご来場。
トークセッション、講演、大学プレゼンテーション、そして進路指導のパネルディスカッションまで、「高大」の枠を超えて縦横無尽に「接続」が生まれた一日となりました。
本記事では、その内容を抜粋してお届けします。

▽ 開催概要

<高大接続総会 福岡会場(学びをつなぐ 総合会議)>
日時:2026年6月12日(金)13:00〜18:00
会場:博多国際展示場&カンファレンスセンター 3階ホール302・303
来場者数:135名(高等学校教員112名/塾・予備校16名/企業・団体7名)
主催・運営:株式会社アローコーポレーション(アロー教育総合研究所)
後援:文部科学省/公益社団法人全国学習塾協会
協力:学習塾団体合同会議/私塾ネット(全日本私塾教育ネットワーク)/一般社団法人教育アライアンスネットワーク(NEA)
大学ブース出展:桜美林大学、九州工業大学、九州産業大学、熊本県立大学、久留米大学、西南学院大学、崇城大学、福岡大学、福岡女子大学、叡啓大学、立命館アジア太平洋大学ほか全国から多数

▽ オープニング|あなたは「国際」を知っていますか?

許斐ナタリー氏(九州大学 国際戦略企画室 教授)と米山裕氏(立命館アジア太平洋大学 学長)が登壇。
中根正義氏(芝浦工業大学柏中学高等学校 校長/毎日新聞客員編集委員)の進行で、「国際化」の本質が語られました。

冒頭、中根氏は「ホテルやコンビニ、飲食店でも外国人スタッフを見かける機会が増えている」と、日本の日常空間で進む「内なる国際化」を提起。
米山氏は、国際化とは語学力ではなく、留学生と寮で生活し議論する中で日本人学生自身が変わっていくことだと強調し、「国際的な学びとは、自分自身を見つめ、発見すること」と語りました。
許斐氏は、九州大学の「グローバルプロフェッショナル認定制度」を紹介し、国際性を海外経験の有無ではなく「ものの見方や行動の姿勢」として捉える視点を示しました。
議論は日本の英語教育にも及び、英語を「を」学ぶのではなく「で」学ぶ発想、そして「完璧さに縛られず、まず使ってみる姿勢」の大切さが共有されました。

▽ スペシャルトークセッション|生徒の夢を実現する 学部・学科選び[工業大学編]

木村智志氏(九州工業大学 高大接続センター 准教授)と土屋公平氏(芝浦工業大学 入試・広報部次長)が、中根正義氏の進行で登壇。「工業大学・工学部のイメージは今、大きく変わってきている」という問題提起から議論が始まりました。

象徴的なのが女子学生比率の上昇です。芝浦工業大学は今年4月の入学者で女子が30%を超え、九州工業大学は女子枠を設けていないにもかかわらず20%に迫るとのこと。
両氏は「女子学生の就職は男子と遜色ないどころか、むしろ良い状況」と口をそろえました。
学びの構造も変化しており、九州工業大学は1年次に専門を固定しない「総合類」、芝浦工業大学は主たる専門を持ちながら他分野も学べる「課程制」を導入。
「大学受験の17歳で下した選択が一生を縛るというのは、半分違う」と、分野を横断する学びの可能性が語られました。

▽ トークセッション|大学受験BIG3トークセッション「2030大学クライシス」

石原賢一氏(教育ジャーナリスト)、木戸葵氏(代々木ゼミナール)、渡辺健太氏(ベネッセコーポレーション)が、倉部史記氏の進行で最新データに基づく卓見を交わしました。
石原氏は「今は受験人口で言えば凪の時代。本当に警戒すべきは2035年からの10年間」と指摘。
2026年度入試については「平均点は下がったが6割程度は取れる」とし、国語・情報・英語リスニングの低下が目立ったと分析しました。
私立大の志願者増は受験生数の増加より「1人あたりの出願数増加」による面が大きく、定員管理の厳格化で合格者数が絞られ実質倍率が上昇したと解説。
2035年以降の大学淘汰・再編を見据え、「大学の看板や偏差値だけでなく、教育内容・地域との関係・社会的必要性が問われる時代になる」と語りました。

▽ パネルディスカッション|「何とかしたい」から始まる進路指導 ── 偏差値を超えて、生徒の「熱源」へ

山内洋氏(大正大学 名誉教授)、池田輝久氏(中村学園中学高等学校)、稲田守(アロー教育総合研究所)が、倉部史記氏の進行で、生徒の潜在的な資質をどう見極め育てるかを議論しました。

倉部氏が「この30分で正解は出ないと思います」と語ったように、教師にとって永遠の課題がテーマに。稲田は職業観の変化やキャリアの非線形化を背景に「正解を教えるだけでは対応できない」と述べ、山内氏は高校の在り方を教科学力と探求力の四象限で整理しました。
中心となったのは、池田氏が鹿児島県立高校勤務時代に関わった、奄美大島から東京大学に現役合格した生徒の事例。
授業のない世界史を「交換日記のような添削」で支えた経験を紹介し、「地方だから無理、経験がないから無理と決めつけず、生徒と一緒に方法を探る」姿勢の大切さを語りました。
「大学受験はゴールではなくスタート」──生徒の内側にある火種を消さずに育てる視点が共有された時間となりました。

▽ 大学プレゼンテーション

北九州市立大学(内田晃氏)

全国屈指の就職実績を誇る公立大学。2027年4月に「情報イノベーション学部」を新設します。
課題解決型学習(PBL)、一流の技術者による実践的教育、起業マインドの醸成、ジョブ型インターンシップという4つの柱を紹介しました。

関西学院大学(三木健之氏)

文系の印象が強い総合大学ながら、理学部・工学部・生命環境学部・建築学部の4学部体制へ拡大し理系分野を強化。
志願者数は約3万3千人から約5万7千人へ増加し、近畿圏以外では九州出身の在学生が最多。
2027年度は出願期間を共通テスト5日後まで延長するなど、受験生に寄り添う改革を進めています。

西南学院大学(前田誠史氏)

「探究学習世代」が大学に入学し始める中、正課教育と準正課教育の間に生まれる「知の往還」を重視。
「教育推進プログラム」のもと、学生創発プロジェクトや海外プログラムを用意し、高校で身につけた「問いを立てる力」を大学でさらに伸ばす環境を整えています。

叡啓大学(村本裕子氏、森佑太氏)

開学5周年、学生の4人に1人以上が海外にルーツを持つグローバルな公立大学。英語のみで学位取得が可能です。
在学生の森さんは「高校の調べ学習はAIなら5分で終わる。従来型の学びがどう役立つのか」という疑問からシステムデザインという学問に出会い入学したと語り、「学生が主役」の若い大学の魅力を熱く伝えました。

▽ 講演ハイライト

マグロのつぎはノドグロ?近大の戦い方(世耕石弘氏/近畿大学 常任理事)

「実学教育」を建学の精神に掲げる近畿大学。2026年2月には世界初となる「ノドグロ」の完全養殖成功を発表しました。
約1000億円を投じた近畿大学病院の移転、建築学部のオンライン学士プログラム、紙の大学案内を廃止し生成AIを活用したデジタル広報への全振りなど、「チャレンジする大学」としての姿を紹介しました。

大学受験系YouTubeの闇(活用法)(天童辰也氏/オンライン塾【展展堂】代表)

受験系動画の多くは「受験の素人向け」に作られており、進路指導にそのまま使える情報は少ないと指摘。
サムネイルをうのみにしない、情報の出どころを確認する、登録者数だけで信頼性を判断しない、という3つの注意点を挙げつつ、学校の先生にしかできない「生徒一人ひとりの個別性を踏まえた指導」の強みを強調しました。

▽ わかべんクリニック|先生方のお悩みに専門家が処方箋

若手高校教員向けオンライン勉強会「わかべんクリニック」を、オフライン版として会場で開催。
6名の登壇者が、探究学習を生かした受験対策から小論文・総合型選抜まで、あらゆる角度から学習のヒントを提供しました。

入試に直結する文系探究(犬丸征一郎氏)──暗記型ではなく双方向型の日本史論述指導。「筋道を立てて考える力」が論述試験に直結し、大学進学後の学問につながる
難関大学の総合型選抜攻略法(玉村ナオ氏)──志望理由書は「限界を迎えたから教えてください申請書」。核心は仮説検証であり、大学は研究人材の卵を求めている
高校生向け探究プログラム「ディスカバ!」ミニ体験(今村亮氏/桜美林大学)──FIFAワールドカップ2026も題材に、探究(正解が出ない問い)・検証・関心の3条件を満たす問いづくりを体験
「プレゼン」「レポート」「ディスカッション」指導のポイント(田本正子氏)──大学が求める「本気で学ぶ力」=理解→論点整理→表現の3段構造。特に論点整理の重要性
ゼロからはじめる小論文(広川徹氏)──「読んで考えて書く」4要素と、採点・添削を約30分で自動化するAI活用による教員の負担軽減
総合型選抜で役立つ新聞・資料の読み方(石渡嶺司氏)──図書館の「レファレンスサービス」活用と、800〜1000字の社説を小論文対策として読む有効性

▽ 結びに

東京、大阪、福岡。今年も皆さまのお力添えで3つの接続総会を終えることができました。
コロナ禍以降、世界は姿を変え、求められる教育も一変しています。これからなにが起きるのか、どう乗り越えるのか──その答えは、ひととひとがつながり、語り合うことからしか生まれません。
高大接続総会を、その機会のひとつに。来年も、また皆さまとお会いできることを楽しみにしています。

アロー教育総合研究所 所長 田嶋 裕

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