Know-how ノウハウ系コラム

「網羅的カタログ」から「志望理由の教科書」へ。年内入試時代に選ばれる大学案内の新たな役割

2026.10.02

#総合型選抜 #大学広報 #大学経営 #ブランド戦略

全国の大学で広報戦略や入試業務、経営企画を担う皆様。日々激変する教育環境の中で、自学の魅力をいかに社会や受験生へ正確に届け、志願者とのより良いマッチングを生み出すか、絶え間ない工夫と努力を重ねられていることと存じます。

私たちアローコーポレーションは、長年にわたり多くの大学の広報戦略立案や各種ツールの制作に伴走してまいりました。
その中で、大学広報の現場において常に議論の的となるのが「デジタル全盛の現代において、紙の大学案内(パンフレット)はどのような役割を持つべきなのか」というテーマです。

すべての情報がスマートフォンで手軽に検索できるようになった今、これまでのように「すべての学部学科の情報を網羅した分厚いカタログ」を作ることは、現場の業務負担の観点からも、情報伝達の効率の観点からも、見直しが求められる時期に来ています。

本記事では、弊社が教育の最前線で蓄積してきた知見をもとに、激変する入試戦線において「大学案内」が新たに担うべき本質的な価値と、その進化の方向性についてお伝えいたします。

「一般選抜」から「年内入試」へ。激変した入試ルールの前提

現在の大学案内が置かれている状況を紐解くためには、まず入試構造の歴史的な変化を正しく捉える必要があります。
18歳人口がピークを迎えた1992年(平成4年)頃の大学案内といえば、白黒やB5サイズの簡素な冊子であり、出願書類とともに取り寄せられるような位置づけのものが主流でした。
それが時代とともに進化し、カラー化や大型化が進み、全学部のシラバスや入試データを詰め込んだ「総合的な情報カタログ」へと変貌を遂げてきました。

しかし現在、入試の仕組みそのものが大きく変わっています。
1990年(平成2年)に慶應義塾大学SFCが日本の大学で初めてAO入試を導入して以来、私立大学を中心にその流れは拡大し続けました。
現在では国公立大学を含めても、年内入試(総合型選抜・学校推薦型選抜)による入学者が全体の半数を超える状況となっており、かつて主流であった一般選抜は、もはや唯一の主役ではなくなっています。

年内入試における最大の壁「志望理由書」

この「年内入試の主流化」こそが、大学広報ツール、特に大学案内の役割を根本から変える最大の要因です。
一般選抜であれば、極端に言えば偏差値という明確な指標があり、願書さえ提出すれば受験が可能な仕組みでした。
しかし、年内入試においては、出願の絶対的な前提条件として「志望理由書」の提出が求められます。志望理由書がしっかりと書けなければ、受験生は出願することすらできず、入試のスタートラインに立つことができません。

そして、日々高校生と接する教育現場のリアルな実態として、現代の高校生は、上位校を狙うような優秀な生徒であっても、自分自身の力だけでは魅力的な志望理由書を書き上げることは非常に困難であるという現実があります。

志望理由書は大学への「ラブレター」。スペックだけでは語れない

アローコーポレーションでは、志望理由書を大学への「ラブレター」に例えてお伝えしています。
ラブレターである以上、「実家がお金持ちだから好きになりました」「家が近所だから選びました」「お父さんとお母さんが付き合いなさいと言ったから」といった理由は、決して相手の心を打つものではありません。

同様に、大学に対する志望理由においても「家から近いから」「就職率が高いから」「オープンキャンパスの雰囲気が良かったから」「キャンパスが緑豊かだから」といった理由は、入試の評価対象としてふさわしくありません。

大学側が求めているのは、「数ある大学の中で、なぜ他でもないうちの大学が、あなたにとっての『1番(ナンバーワン)』なのか」という、熱意を伴った明確な動機です。
受験生は、この「1番である理由」を具体的な学びの内容や研究テーマと紐づけて書き上げなければならないのです。

「システムによる差別化」や「オンリーワン」が陥る罠

こうした状況下で、大学の広報ご担当者様からは「とにかく他大学と差別化を図りたい」という強いご要望を頻繁にいただきます。
そして、多くの場合は「主専攻・副専攻制度を導入している」「独自の英語教育プログラムがある」といった『システムや制度』の違いを前面に押し出そうとされます。

しかし、システムの違いをいくらアピールしても、高校生にとっては「自分がこの大学を選ぶ決定的な理由(=自分自身のストーリー)」として文章に落とし込むことが難しく、結果として志望理由書には書けないという課題が生じがちです。

また、他大学に存在しない「オンリーワンの学部」を設置することも、一見すると強力な武器に思えますが、実は情報発信の難易度を上げる側面を持っています。
例えば「マネジメント学部」のように、競合校に同じ名称の学部がない場合、「他大学の〇〇学部と比べて、なぜここが1番なのか」という比較構造を作ることができず、そもそもその学問が何であるかというゼロからの説明が必要になってしまいます。

実際の受験生は、必ず複数の大学を併願校として検討し、天秤にかけています。
そのため大学案内では、「他大学と同じように標準的で質の高い学びの環境が整っている」という安心感(スタンダード)をしっかりと提示した上で、「それでも、この教授がいるから、この研究ができるから、私にとってはここが1番なのだ」という判断材料を提供し、受験生を導く必要があるのです。

なぜWEBだけでは足りないのか。進路指導の現場で活きる「紙」の力

「細かな学部の情報を提供するだけなら、WEBサイトに集約すれば良いのではないか」というご意見もあるかと思います。
確かに、情報の検索性や速報性においてはWEBに分があります。
しかし、年内入試の志望理由書作成という観点で見ると、WEBサイトだけでは不十分なケースが多々生じています。

現代の大学WEBサイトは情報量が膨大であり、階層も複雑化しているため、高校生が「志望理由の軸となるストーリー」を俯瞰して探し出すのには適していません。

さらに重要なのが、高校生が志望理由書を仕上げるためには、高校の先生や塾の講師といった「大人の指導」が不可欠であるという点です。
先生方が進路指導の面談を行う際、複雑なWEBサイトの画面を一緒にスクロールしながら教えることは非常に困難です。
机の上に一冊の大学案内を広げ、ページをめくりながら「この先生の研究、君のやりたいことに合っているね」「このカリキュラムなら、こういう志望理由が書けるんじゃないか」と直接指し示し、対話を通じて言語化していく。
この指導プロセスにおいて、一覧性に優れ、大学の世界観を直感的に共有できる「紙のツール」の存在は極めて有効なのです。

これからの大学案内は「志望理由の教科書」へ進化する

これからの大学案内に求められるのは、全学部のシラバスや細かなデータをただ詰め込んだ「網羅的カタログ」ではありません。
そうしたデータ集の役割はWEBへと段階的に移行し、紙の大学案内は、高校生が「なぜこの大学が自分にとって1番なのか」を言語化し、志望理由書を書き上げるための『最良の教科書(ストーリーブック)』へと進化していくべきです。

「高校生が志望理由を書きやすく、高校教員が指導しやすい設計」がなされていること。
これからの広報ツールは、この視点が欠けていれば、いくら見栄えを良くしても最終的な出願やマッチングには結びつきにくくなります。

大学の理念や学びの魅力を深く掘り下げ、高校生が誇りを持って志望理由を書き上げられるような「明確な根拠(ストーリー)」を構築することは、高度な専門性が求められる領域です。

私たちアローコーポレーションは、表面的なデザイン制作にとどまらず、この「選ばれるためのストーリー構築」という戦略の上流から伴走いたします。
複雑化する広報戦略の最適化を私たちプロフェッショナルにお任せいただくことで、大学の皆様には「自学の本当の強みは何か」「どうすればさらに魅力的な教育環境を創れるか」という、大学の未来を創るための「考える時間」に注力していただける環境をご提供したいと願っております。

共に、受験生の未来を拓く力強い大学づくりを実現してまいりましょう。


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創業30年、顧客のほぼ100%が私立教育機関という専門性で、大学案内をはじめとする教育機関の企画・制作を手がけています。
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