Know-how ノウハウ系コラム
「選ばれる」私立高校案内パンフレットの作り方
2026.06.17
第一志望校になるための広報戦略
高校無償化が全国に広がり、私立高校をとりまく競争環境は大きく変わりました。これからの時代に「選ばれ続ける学校」になるために、経営層が押さえておくべき広報戦略と、その中核を担う学校案内パンフレットのつくり方を解説します。
高校無償化が変えた、私立高校の競争ルール
2026年4月から、国の高等学校等就学支援金制度は所得制限なしで全世帯に拡大されました。私立高校では年45万7,200円を上限に授業料相当の支援が行われ、東京都・大阪府などの自治体独自の上乗せ支援とあわせて、「私立=家計負担が重い」という従来の常識が大きく揺らいでいます。
この変化は、私立高校にとって追い風であると同時に、これまでにない厳しい競争の始まりでもあります。授業料という参入障壁が下がったことで、ご家庭は「学費の安さ」ではなく、「この学校で何が得られるか」という中身そのもので進学先を選ぶようになりました。
経営層がいま直視すべき問いは、ひとつです。
「学費の差がなくなったとき、自校はなぜ選ばれるのか?」
その答えを明確に言語化し、伝え切ることこそが、これからの私立高校経営の生命線になります。
ライバルは「公立」ではなく「私立」になる
無償化以前、多くの私立高校にとっての比較対象は公立高校でした。「公立に届かなかった生徒の受け皿」という位置づけも、現実には少なくありませんでした。
しかし無償化が進んだ今、構図は変わります。学費負担が同程度になった以上、ご家庭は複数の私立高校を並べて比較検討します。すでに中学受験が過熱する都市部や、私立人気の高い地域では、その傾向が顕著です。
つまり、これからの競争相手は公立ではなく、同じ土俵に立つほかの私立高校です。施設・実績・サポート・歴史・ブランドといった項目で、ご家庭は冷静に各校を見比べます。横並びの中で埋もれてしまえば、たとえ良い教育を提供していても選ばれません。
「併願校」から「本命校」へ — 広報がめざすべきゴール
私立高校を受験する生徒の多くは、複数の「本命校(第一志望校)」を設定します。ここで重要なのは、自校がその「本命校」の一角に入れるかどうかです。
「とりあえず受けておく併願校」のままでは、入学者の質も歩留まりも安定しません。逆に「ここに通いたい」と強く思われる本命校になれば、自校の教育方針に共感した生徒が集まり、入学後の満足度も、卒業後の実績も、好循環で積み上がっていきます。
併願校から本命校へ。この転換を実現する手段が、ブランドの確立です。
– 学校の指針(どんな生徒を育てたいか)を明らかにする
– その特色・魅力を、ターゲットに届く形で発信する
– 方針に共感する生徒を集め、ブランドを揺るぎないものにする
この一連の流れを設計し、媒体に落とし込むのが、広報戦略の役割です。
ブランド確立には「紙のパンフレット」が最適な理由
「これからはWebの時代では?」という声もあります。確かにWebサイトやSNS、動画は強力な情報発信ツールです。ただし、紙とWebには明確な役割の違いがあります。
Web媒体は「検索ツール」です。すでに興味を持った特定のターゲットが、ピンポイントで情報を取りに行き、気になる内容を深掘りするのに向いています。速報性が高く、動画で雰囲気を伝えられる一方、「能動的に取りに来た人」にしか届きません。
これに対して、紙のパンフレットは「発見ツール」です。
– 受験生・保護者という幅広い層に、こちらから情報を届けられる
– ページをめくる中で、思いがけない魅力に「出会って」もらえる
– 手元に残り、繰り返し読み返してもらいやすい
– 写真・コピー・デザインなど、多彩な表現で世界観を伝えられる
ブランドとは、断片的な情報ではなく「学校の世界観」そのものです。一冊を通して一貫したメッセージを体験してもらえる紙媒体は、ブランディングにもっとも適した媒体だと言えます。WebとSNSで「検索」され、パンフレットで「世界観に惹き込む」。この役割分担が、これからの広報の基本設計です。
ターゲットが本当に知りたいことを、設計の起点にする
良いパンフレットは、学校が「言いたいこと」ではなく、ターゲットが「知りたいこと」から逆算してつくられます。メインターゲットである中学3年生と保護者は、それぞれ異なる不安を抱えています。
中学生本人が気にすること
・楽しい高校生活が送れるか/すぐに友達ができるか
・どんな先輩がいるのか
・良い大学へ行けるか、部活も頑張れるか
・施設・設備はどうか
中学生は、つくり込まれた完璧な広告よりも「リアリティ」に反応します。周囲の影響を受けやすく、視認性の高いデザインに慣れている世代です。
保護者が気にすること
・3年間、わが子が楽しく通えそうか
・どんな先生がいて、どう勉強するのか
・塾は必要か、進路や生活のサポートは十分か
保護者が私立に求めるのは、何より「安心感」です。大学受験制度への不安を抱えながら、わが子を任せられる学校かどうかを見極めています。
この両者の不安に「伴走」する一冊を設計できれば、パンフレットは単なる紹介資料を超え、信頼を獲得するコミュニケーションツールになります。
「選ばれる」パンフレットをつくる3つのポイント
ブランドを貫くコンセプトとタグラインを設計する
最初に決めるべきは、デザインではなくコンセプトです。「自校は、どんな生徒に、何を約束する学校なのか」を一言で表すタグラインを定め、それを表紙から裏表紙まで一貫して貫きます。
コンセプトが定まっていない冊子は、どれだけ写真が美しくても印象に残りません。
自校の強みを「ターゲットの言葉」に翻訳する
多彩なコース制、充実した施設、面倒見の良いサポート体制 — どの学校にも強みはあります。重要なのは、それを学校側の専門用語ではなく、中学生と保護者が直感的に理解できる言葉とビジュアルに翻訳することです。
「自分にも居場所がありそう」「ここなら成長できそう」と感じてもらえる見せ方を設計します。
リアリティで「自分ごと化」を促す
実際に通う生徒・卒業した先輩の声や、入学から進路までの成長ストーリーは、読み手の「自分ごと化」を強力に後押しします。
在校生の素の表情をとらえた写真、先生と生徒の関係性が伝わるシーン、年々伸びる進学実績の見える化 — これらが「ここでなら、自分も変われるかもしれない」という期待を生みます。
これからの私立高校経営に求められる視点
無償化によって、生徒・保護者が学校を選ぶ基準は「価格」から「価値」へと完全に移行しました。これは私立高校にとって、自校の教育の本質的な価値を、正面から問われる時代の到来を意味します。
これからの経営方針として重要なのは、次の3点です。
1.ブランドの言語化 — 「選ばれる理由」を曖昧にせず、明確な指針として定義する
2.媒体の役割分担 — 紙で世界観を伝え、Web・SNSで深掘りと速報性を担保する
3.一貫した発信 — パンフレット、Web、説明会、すべてで同じメッセージを届ける
学校案内パンフレットは、単年度の募集ツールではありません。5年後、10年後の自校ブランドを形づくる、長期的な経営投資です。価値ある教育には、その価値を正しく伝える広報が不可欠です。
「選ばれる学校」になるための一歩を、いま、ここから始めてみてはいかがでしょうか。
アローコーポレーションでは大学だけでなく、高校や中学校のパンフレット、Webサイトの構築も手掛けています。
「教育に強い」という強みを最大限に活かし、大学に限らず、教育にまつわる多様な企業・団体様とのお仕事を積極的に増やしていきたいと考えております。
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