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神奈川大学

大学院 工学研究科
工学専攻 応用化学領域 博士課程3年

T.Hさん

ナノスケールの機能性高分子で
環境負荷の少ない新材料を開発する!

ウイルスと同じサイズの
微細な高分子を自由に設計

「高分子」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、いわゆるプラスチックだろう。PP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)などの高分子化合物は、私たちの生活を豊かにしてくれる半面、環境負荷の面でも世界的な関心を集めている。この高分子を使った先進的な材料の開発に取り組んでいる研究者がいる。神奈川大学大学院工学研究科工学専攻応用化学領域のナノ構造材料化学研究室に所属するT.Hさんだ。

「機能性高分子設計をベースに、新規のナノ構造材料を開発しています。設計した機能性高分子を使って100ナノメートル以下という新型コロナウイルスと同じくらいの微細なナノ構造体を自由に設計して、便利な機能を持たせる研究です。なかでも私の研究対象は、刺激応答性高分子です。例えば、UVランプを当てると流体が固体になったり、熱を加えると水に溶けにくくなったりする高分子などがこれにあたります。私の仕事は無数にある高分子を組み合わせて、より機能的な性質を引き出すことです。合成した高分子を幅広い分野で応用するのが目的です」

 Tさんが研究対象とする刺激応答性高分子のひとつに、PNIPAM=ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)がある。これは、熱に応答する高分子で、25度だと水に溶け、32度になると溶けなくなる。つまり、温度によって親水性から疎水性に性質が変わるのだ。この高分子が自ら組織構造・機能を構築する「自己組織化」という現象を用いて、ナノスケールでアレンジしている点に独自性がある。

「機能性高分子材料の応用先の一例として、ドラッグデリバリーシステムがあります。これは、薬剤を必要な場所に必要な量だけ狙い通りに届ける技術。ナノスケールの刺激応答性高分子を使えば、血管を通り抜けるサイズのナノカプセルに抗がん剤などを封入して、患部まで運ぶこともできるでしょう。何らかの刺激で患部でのみ薬剤が投与される仕組みがつくれれば、副作用を最小限にできます。高分子化学の高度な技術を用いれば、こんなSF映画のようなことも実現できるのです」

化学の専門知識を深めると
社会課題がもっと身近になる

 Tさんにとって、化学の面白さは、身近なものとのつながりを感じられることだという。テレビの液晶モニターや泡立つ石けんなど、身近な現象はすべて化学で説明できる。化学の知識を深めると、「世界がどう成り立っているのか」がクリアに見えてくるのだ。大学院の博士課程に進んだ今、自らの研究領域と社会の課題がますます近づいているのを感じるという。

「例えば、世界では海洋などに流出した微細なマイクロプラスチックによる汚染が問題となっています。こうした社会課題に対して、関心を持つだけでなく、解決策を自分なりに提案できるようになる。これも化学を専門的に学ぶ魅力だと思いますね」

 高校卒業後、神奈川大学の工学部物理生命化学科に進学し、有機化学、無機化学、物理化学などを幅広く学んだ。そのなかで、高分子化学という分野と出会い、将来につながる研究テーマを見つけた。大学院に進学し、高分子学会、日本化学会など有名な学会での発表も経験。ヨーロッパの国際学会で英語による発表に挑戦したこともある。指示された実験をこなすのではなく、自分のアイデアを自由に研究に落とし込めるようになった今、研究者として次のステージが見えてきた。

「将来の目標は、やはり研究者として高分子化学の知見を社会に還元することです。企業や研究機関に就職して、環境負荷の少ない新材料を開発したいという夢があります。一方で、化学の魅力をより多くの人に知ってもらいたいという希望もあります。研究は発見がゴールではなく、世の中に還元されるように伝える技術も不可欠です。化学と社会をつなぐ役割も担えたらいいなと思います」

神奈川大学

緑一面のグラウンドから望む工学部棟

進化を続ける学修環境

神奈川大学は、文系・理工系9学部を擁し、全都道府県から学生が集う総合大学です。キャンパス内には、最先端の装置をそろえた研究棟やハイテク・リサーチ・センター、個人利用ができるコンピュータ演習室、語学力を磨く「EnglishLounge」など、快適な学修環境が整います。2021年には新しい学び舎としてみなとみらいキャンパスが誕生。さらに整備を進め、2023年には理学部が横浜キャンパスに移転を予定しています。

充実の給費生・奨学金制度

2022年度試験においては12月19日(日)に全国22会場で試験を実施する「給費生制度」(採用者には4年間で最大880万円給付)をはじめ、入学前に経済的支援を約束する「神奈川大学予約型奨学金」などの大学独自の給付型奨学金制度が充実。さらに、少人数教育や入学直後から始まるキャリア教育などで、学生一人ひとりの成長を全力でサポート。詳細は大学公式サイトをご確認ください。

学部学科

■ 法学部:法律学科/自治行政学科 ■ 経済学部:経済学科/現代ビジネス学科 ■ 経営学部:国際経営学科 ■ 外国語学部:英語英文学科/スペイン語学科/中国語学科 ■ 国際日本学部:国際文化交流学科/日本文化学科/歴史民俗学科 ■ 人間科学部:人間科学科 ■ 理学部:総合理学プログラム/数理・物理学科/情報科学科/化学科/生物科学科 ■ 工学部:総合工学プログラム/機械工学科/電気電子情報工学科/物質生命化学科/情報システム創成学科/経営工学科 ■建築学部:建築学科(2022年4月開設)

主な就職実績(2019年度)

国土交通省、東京都庁、東日本旅客鉄道、富士通、資生堂ジャパン、関電工、日本発条、日本電産、ドコモ・テクノロジ、NTT東日本、日本通運、スズキ、SUBARU、日産自動車、三菱自動車工業、三菱電機エンジニアリング、京セラ、セイコーエプソン、リコージャパン、日本航空、東京ガス、積水ハウス、東急、鹿島建設、大林組 ほか

お問い合わせ先

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