Professor

大久保友雅

東京工科大学

工学部 機械工学科 准教授
レーザー工学/数値解析

レーザーを使った材料評価技術で
航空機エンジンの未来を変える!

「レーザーってかっこいい」
それが研究のきっかけ

「レーザー」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるだろうか? アニメのヒーローが放つレーザービームを使った必殺技か、それともアーティストのライブ映像か……。いずれにしても暗闇に真っ直ぐ延びるレーザー光線には、人をワクワクさせる魅力がある。

「レーザーって何かかっこいいじゃないですか。それが研究のきっかけです(笑)」

 ジョークか本音か……そんなことを言いながら笑顔を見せるのは、東京工科大学工学部機械工学科の大久保友雅准教授だ。専門は、光をさまざまなエネルギーに変換して、応用する研究。なかでも最近は、レーザーを使った先進的な研究に力を入れている。

「レーザーは、工学のさまざまな分野で応用されています。私が近ごろ取り組んでいるのは、レーザーを使った試験装置の開発です。対象は、CMCと呼ばれるセラミックス複合材料です。航空機開発などでの利用が期待されるこの次世代材料の耐熱性能を短時間で評価するための新たな手法を研究開発しています」

材料の開発や評価技術は
産業界の高いニーズがある

 持続可能な社会の実現に向けた世界的な流れを受け、航空業界では燃費向上のため、航空機に使用する素材の軽量化が求められている。同時に必要なのが耐熱性能の向上だ。例えば、次世代の航空機のエンジンに使う材料は、1400℃を超える高温に耐える必要がある。そこで、航空機のエンジン部品に用いる次世代材料として注目されているのがCMCだ。

 炭化ケイ素(SiC)とセラミックスを組み合わせたSiC/SiC CMCが正式名称で、日本の名だたる研究機関や重機メーカーが共同開発を行っているという。大久保准教授は、NEDOの「官民による若手研究者発掘支援事業」の採択を受け、この新材料の超高温環境での性能試験方法を開発している。

「従来の方法で、1400℃の耐熱試験をやろうとすると加熱にも冷却にも大変長い時間がかかってしまいます。これでは効率が悪い。そこで、材料に直接レーザーを照射して、加熱・冷却を短時間で繰り返すことができるのが、私たちが開発している試験装置の特長です。ここで用いるレーザー制御技術を『選択的レーザー温度制御法』と呼んでいます。材料自体をつくるのではなく、性能評価の仕組みづくりで、新材料開発に貢献しているわけです。機械工学には、材料開発や材料評価という研究分野があり、高い社会的ニーズがあることをぜひ知ってほしいですね」

※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

大久保准教授が研究を進める「選択的レーザー温度制御法」の概念図。1400℃の高温で材料の性能評価試験を行うことができる

〈レーザー×AI〉の新たな知見で
日本のものづくり技術を発展させる!

緻密な実験の背景に
「物理マインドがある」

 大久保准教授は、理学部応用物理学科から研究キャリアをスタートした。その後、大学院で機械物理工学をテーマにした研究に取り組み、現在に至る。そんなバックグラウンドもあり、「深い部分に物理マインドがある」と語る。例えば、材料の評価を行う際、「まずはやってみよう」と網羅的に実験をするのと並行して自分なりに数理モデルを立て、その計算結果を元に実験を組み立てていく。レーザーの制御には、熱力学、流体力学など、さまざまな力学の専門知識が求められる。機械工学のベースには、物理学があるということがよくわかるエピソードだ。

「現在は、『選択的レーザー温度制御法』に用いる数値計算コードとそれを可能にする設備を開発中で、ほぼ設計通りの加熱に成功しています。例えば、SiCの約4×14㎜の領域にレーザーを照射することで、実際に30秒程度で1500℃まで急速加熱が可能であることを確認しています。これに、AIの機械学習を組み合わせることで、レーザー照射によるさらに高度な温度制御が可能になるでしょう」

 日本発の画期的な新材料が航空機、宇宙機の未来を変えることになれば、世界的な注目を集めることは間違いない。大久保准教授は、この材料評価技術の分野で、NASA(アメリカ航空宇宙局)を超えるのが目標だ。

「私の根底には日本のものづくり技術を発展させたいという熱意があります。現在の研究で得た、レーザーをAI制御する知見を、将来的にはレーザー加工技術などにも応用していきたいですね」

「選択的レーザー温度制御法」の実験で用いる数値計算の計算結果イメージ

レーザーで新規材料を部分的に高温にして、引っ張り実験を行っている様子。高温部分は1400℃に達する

レーザー照射を用いたセラミックス複合材料の試験装置の全体像。上部のガルバノスキャナからレーザーが照射される

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