Professor

砂見雄太

東海大学

工学部 機械システム工学科 准教授
トライボロジー/設計工学

※2022年設置計画中

「薄膜」を使ったイノベーションを
ウェブハンドリング技術が加速する

プラスチックフィルムなどの
薄膜を大量生産する技術

 未来のリビングルームを想像してみよう。壁一面にはポスターのようにペラペラの薄型テレビが貼り付けてあり、見ないときはクルクルと丸めて収納できる。同様に、自動車にはレジャーシートのような薄膜太陽電池が載せてあり、晴れた日はボンネットの上に広げて発電ができる。こんなSFのような世界を実現するために不可欠な技術がある。薄膜を大量生産するウェブハンドリング技術だ。

「私たちの身の回りには、薄くてやわらかい膜のような材料がたくさんあります。新聞紙、トイレットペーパー、商品ラベルに使うプラスチックフィルム、マスクに使う不織布……これらを総称して、『ウェブ』と呼びます。例えば、プラスチックフィルムは、溶かした樹脂をフィルム状に製膜し、いくつものローラを使いながら、延ばします。さらに模様を印刷したり、粘着剤を塗ったりして、最後に乾燥させて、巻き取れば完成です。この一連の工程を実現するのが、ウェブハンドリング技術、通称ロール・ツー・ロール技術です」

 そう語るのは、東海大学工学部機械工学科の砂見雄太准教授だ。この若き研究者は、ウェブハンドリング技術の革命児として、産業界から注目を集めている。

東海大学の研究室で出合った
ウェブハンドリング技術

 ウェブハンドリング技術の起源は、1800年代初頭のイギリスに遡る。その後、現場の技術者の経験と勘によって、数々のウェブ製品が開発されてきたが、不思議なことに、ウェブハンドリング技術の学術的な研究はほとんどなされてこなかった。そこで、1986年に米国オクラホマ州立大学に、産学連携の研究拠点が設立され、新たな学術研究が始まる。その流れを受け、日本国内においても1990年代から研究が本格化。その学術的な基盤づくりに貢献したのが、東海大学元副学長の橋本巨名誉教授だ。

「私は橋本先生の下で博士課程まで進み、ウェブハンドリング技術の基本から応用まで、すべてを叩き込まれました。ウェブハンドリング技術を学術的に扱う上では、材料力学、機械力学、流体力学、トライボロジー(摩擦学)など機械工学の幅広い知識が求められます。さらに、微分方程式、積分方程式など、数学の高度な知識も不可欠です。メーカーの工場では、100個レベルのローラを組み合わせた工程を設計することもあります。実は、見えないところに緻密なノウハウがあり、この部分で、日本が世界をリードしていく可能性は十分にあると考えています」

ウェブハンドリング技術の最先端研究を
東海大学から世界に発信する!

研究成果が生産現場で
すぐに役立つから面白い

 近年、「薄膜」は非常にホットな研究分野で、先進的なコーディング技術やプリンティング技術が日々開発されている。こうした技術の進歩と融合していく先に、ウェブハンドリング技術のブレークスルーがあると砂見准教授は考えている。そこで、現在は、国内外の研究機関や主要メーカー、他大学と産学連携の共同研究を積極的に進めている。

「この研究の面白さは、なんといっても産業界に近いことです。研究成果がすぐに生産現場で役立つというのは、研究の大きなモチベーションになります。実際、私の修士論文、博士論文はすでに技術の実用化に活用されています。この先、大きなテーマになるのは、工程の『無人化』です。それには、不具合を低減するさまざまなノウハウが必要です。こうした高度な制御モデルを実現できれば、リチウムイオン二次電池や半導体など、さらに先進的な製造工程を担えると考えています」

 未来を見据え、砂見准教授が期待を寄せるのは、リチウムイオン二次電池や有機薄膜太陽電池などのデバイス製作とウェブハンドリング技術の有機的な融合だ。今後、スマートフォン、電気自動車、空飛ぶクルマなどにはウェブハンドリング技術が多く用いられる。ウェブハンドリング技術によってそれらの製品の大量生産が可能になれば、日本のものづくりに大きなインパクトを与えることになるだろう。

「私の夢は、東海大学にウェブハンドリング技術の世界的研究拠点をつくることです。ここから最先端技術を世界に発信しながら、若手技術者を育成していきたいですね」

薄膜の接触面を測定する「真実接触面可視化装置」など、研究室には、最先端の実験機器が並ぶ

専門メーカー康井精機製のコーディング装置。数ミクロンから数十ミクロンの薄膜をコーティングできる

2016年度に日本機械学会奨励賞を受賞したときの様子。2020年度には、日本設計工学会のThe Most Interesting Reading賞も受賞するなど受賞多数。現在は、株式会社SUNAMI代表取締役も務める

東海大学

理工系学部・学科が豊富な総合大学

東海大学は、理工系だけでも情報通信学部、理学部、情報理工学部、建築都市学部、工学部、海洋学部、文理融合学部の7学部に23学科・専攻がある総合大学です。学部・学科の選択に迷うほどですが、入学後は、自分が学びたい科目を学部・学科の枠にとらわれず選択できる、自由度の高いカリキュラムで学ぶことができます。

時代を見据えた「文理融合」教育

多様で複雑な現代社会に対応するため、東海大学では「文理融合」の精神を重視した教育を実施しています。2001年度に「東海大学型リベラルアーツ教育」として、いち早く「教養教育」や「リベラルアーツ」を導入。ほかにも文系・理系両方の思考を兼ね備え、総合的な思考力と多角的な視点からの洞察力を身に付けた人材が育つ、理想的な環境を整備しています。

学部学科

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※1 2022年4月設置計画中
※2 2022年4月リニューアル予定
※3 2022年4月設置認可申請中

主な就職実績

いすゞ自動車、ケーヒン、スズキエンジニアリング、日野自動車、SUBARU、本田技研工業、三菱自動車工業、日立オートモティブシステムズ、東海旅客鉄道、小松製作所、小田急電鉄、横浜ゴム、プレス工業、オーテックジャパン、三ツ矢、日産車体、ヤマハ発動機、トヨタ自動車東日本、テルモ、エージーピー、戸田建設、東芝エレベータ、日本製粉、日立建機、日産自動車、タカラトミー、東京電力ホールディングス、東日本旅客鉄道、三菱電機照明、三菱電機エンジニアリング、ANAベースメンテナンステクニクス、神奈川県警察本部 ほか

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