Professor

吉田準史

大阪工業大学

工学部 機械工学科 教授
振動工学/機械力学/音響工学/感性工学

人間の鼓膜に到達する音の信号を忠実に録音できるダミーヘッドマイクロホンで、人がどのように音を感じているのかを研究する

不要な音を低減し、価値ある音を活かす
音を操る技術開発で暮らしを豊かに!

車や家電の騒音原因を突き止め
「賢く」低減する手法を生み出す

 自動車や飛行機、冷蔵庫や洗濯機、パソコンやプリンターなど私たちの身の回りの製品が動く際に発生する振動や音。使用者や周囲に不快な影響を与える場合は騒音と呼ばれ、製品そのものの寿命を縮めるケースも少なくない。そんな振動・騒音の改善に取り組んでいるのが大阪工業大学の吉田準史教授だ。

 吉田教授は、振動・騒音を改善するための技術を「①騒音の評価技術」「②騒音発生のメカニズムの分析・診断技術」「③騒音を低減する対策技術」という3つのフェーズに分類し、研究・開発を進めている。

「大きい音だから騒音とは一概に言えず、小さい音でも不快に感じる場合もあるので、まずはユーザーがどの音を不快に感じているかという評価からスタートします。このように音響心理学や感性工学的なアプローチを行うのは、私の研究手法の大きな特徴です。そこから信号処理などを用いて、多くの人が不快と感じる周波数やレベルを特定。ターゲットとなる音の発生メカニズムなどを分析し、低減するための方法を考案していくのが基本の流れです」

 音の低減手法を考える際のキーワードは「賢く」だという。どういう意味なのだろう。 「理論的に音を下げるだけならば簡単で、例えば1トンの車を10トンにすれば静音性は格段に向上します。しかし、それでは燃費が悪くなり現実的な対策にはなりません。そこでシミュレーションなどを駆使し、変化を最小限に抑えつつ、狙いの音を低減できる構造を考える。これが『賢い』低減手法です」

ユーザーがどの音を不快に感じているか評価を行い、人が不快に感じる周波数やレベルを特定。ターゲットとなる音の発生メカニズムなどを分析し、その音を低減するための構造を考案する

大学発ベンチャー企業で
技術や理論を社会に普及させる

製品が発する「価値」ある音を活かし
最適な音環境の構築をめざす

 自動車や電化製品において振動・騒音は永遠の課題であり、吉田教授は企業と共同研究を行うことが多い。実際、自動車や冷蔵庫の騒音低減、洗濯機や農機の振動緩和を実現するなど、吉田教授の技術や理論は多数の製品に応用され価値向上に寄与している。

「私の研究は、100年先を見据えたものというよりは、今、目の前にある課題を解決し世の中をよくするためのものです。そのため、研究の成果が、製品や特許など目に見える形となってすぐに表れるという点も特色です」

 さらに近年、吉田教授は、製品や構造から発生する音の「価値」に着目。騒音を低減するために培ってきた分析手法を用いて、音を効果的に活かす研究も行っている。

「例えば、電気自動車ではエンジン音が無いために速度を出し過ぎてしまう場合があります。エンジン音はドライバーにとって速度をとらえる大切な情報だったわけです。そこでドライビング・シミュレーターを用いて、快適性を損なわずにドライバーに情報として適切な音や振動を与える技術開発を行っています」

 そのほかにも、VRを用いて自動車の車内音と内装デザインの相互関係を調べて、居心地のいい車内空間を創りあげる研究や、構造物の欠陥を音で自動判断できる技術の開発など、音の価値に着目した研究を続々と進めている。

社会貢献と新たな技術応用のために
騒音の計測・解析を行う会社を設立

 大学で研究を始める以前は、自動車メーカーでエンジンや自動車の振動・騒音対策の研究に長年携わってきた。培ってきた知見や技術を世の中により役立てるため、2020年、株式会社東陽テクニカと共同で「株式会社Bettervibes Eng.(ベターバイブスエンジニアリング)」を設立した。

「振動や騒音の悩みを抱える企業は非常に多くあります。ただ、共同研究を行うには予算も必要ですし、新規性も求められるため、相談を受けても応えられないケースが多かった。その状況を変えるための方法が起業でした」

 すでにさまざまな依頼が寄せられており、その中から、今までのアプローチでは発想さえできなかった新たな研究テーマや、技術応用のタネも生まれはじめているという。

「開発した技術や理論で世の中に貢献できるのはうれしいですし、さまざまな制約にとらわれず、これまで以上に多くの企業と関わる機会が増え、新たな研究につながると思うとわくわくしますね。また、ベンチャー企業での活動を通じて、学生にも起業家精神を身に付けるきっかけになってもらえたらうれしいですね」

製品騒音の音源を可視化して表示させる分析手法の適用例

多彩な振動解析や音響解析を用いて客観的な指標をつくり、それをもとに音質改善に最適な対策案の検討を行う

研究で生み出した技術をより広く活用すべく、株式会社東陽テクニカとのジョイントベンチャーとして株式会社Bettervibes Eng.を設立

大阪工業大学

関西の中心地で最先端工学技術とDesignを学ぶ。
大阪・梅田キャンパス ロボティクス&デザイン工学部

2022年に創立100周年を迎える大学伝統の実践教育

大阪工業大学は4学部17学科を擁する理工系総合大学で、実就職率が全国第2位、関西の私立大学では11年連続第1位、文系の知的財産学部でも学部系統別〈法学系〉で全国第2位の高い就職力を誇ります。この背景には、建学の精神に基づく教育、先端分野を切り拓く研究力があり、理論と実践を兼ね備えた人材を育成し、多くの専門職業人を世に輩出しています。

工学部機械工学科に「研究推進クラス」、建築学科に「先鋭活動推進コース」を開設!

2022年4月から機械工学科では、学部+大学院6年間一貫の研究推進クラスを、建築学科では、大学院との連携強化による、学生の能動的な学びを育む先鋭活動推進コースを開設します。マンツーマン指導、ハイレベル少人数授業、先取り大学院授業等により早期に研究活動を開始し、グローバルに活躍する研究開発者、建築技術者を養成します。

学部学科

【大宮キャンパス】 ■ 工学部:都市デザイン工学科/建築学科/機械工学科/電気電子システム工学科/電子情報システム工学科/応用化学科/環境工学科/生命工学科 【梅田キャンパス】 ■ ロボティクス&デザイン工学部:ロボット工学科/システムデザイン工学科/空間デザイン学科 【枚方キャンパス】 ■ 情報科学部:データサイエンス学科(2021年4月開設)/情報知能学科/情報システム学科/情報メディア学科/ネットワークデザイン学科 【大宮キャンパス】 ■ 知的財産学部(文系):知的財産学科

主な就職実績(2021年3月卒業生実績)

富士通、シャープ、大林組、鹿島建設、住友林業、清水建設、積水ハウス、大成建設、大和ハウス工業、関西電力、大阪ガス、きんでん、西日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、日本郵便、スズキ、ダイハツ工業、本田技研工業、日立造船、資生堂、グンゼ、ユニ・チャーム、大阪府庁、大阪市役所、兵庫県庁 ほか

お問い合わせ先

〒535-8585 大阪市旭区大宮5丁目16-1
入試部 TEL:06-6954-4086