Professor

長田典子

関西学院大学

工学部(2021年4月誕生) 情報工学課程 教授
感性工学/感性情報学

人の感性を分析・数値化し
製品やサービスづくりに役立てる

研究対象は五感すべて
人の感性を製品開発に応用

「感性工学は、『面白い』『わくわくする』といった人の感性を分析により数値化・定量化して、人が快適に暮らすためのプロダクトやサービスづくりに役立てる日本発祥の学問です。人を感動させる映像や音楽のメカニズムを解明し、より人の心を動かすメディアづくりに応用する研究も行っています」

 そう語るのは、感性工学の第一人者である長田典子教授だ。研究対象は五感すべて。アニメ『のだめカンタービレ フィナーレ』でも使用されたピアノ演奏CG生成技術や、飲料を「もう一度飲みたい」と感じるか否かを脳波から推定する技術の開発など、その研究領域は多岐にわたる。コード(和音)の周波数特性などの要素が、音楽に対する人の印象喚起にどう作用するかを分析してモデル化する研究は、車のエンジン音の開発や音楽スピーカー制御技術に応用されている。

 また、モノに触れた際の感覚を数値化する「触感計測装置」の開発も成果のひとつだ。自動車メーカーをはじめ、モノづくりの現場で活用され、最近では化粧品メーカーとの製品開発にもつながったという。

「触感計測装置を使い、ふきとり化粧水の『ふき取れた実感』という効能的な部分と、『明日も続けて使おうと感じるふき取り意欲』という感性価値の双方を高める成分を特定し、使用者の感性に強く訴える製品を開発しました」

「感性のものさし」づくりで
豊かで持続可能な社会の実現に貢献する

AIやビッグデータを活用し
感性価値メトリックをつくる

 長田教授は、文部科学省のCOI(センター・オブ・イノベーション)プログラムで、「ヒューマン&デザイングループ」のリーダーとして、人間の感性と創造性の解明に向けての研究を進めている。

「豊かで持続可能な社会の実現には、大量生産・大量消費から脱却する必要があります。そこで、感性価値と3Dプリンタを中心としたデジタル製造を直結し、創造性を拡張することをテーマに、一人ひとりがほしいものを、ほしいように、ほしい分だけつくる個別生産の仕組みを構築する研究を進めています」

 その実現に向け、AIやビッグデータを活用した研究にもいち早く取り組み、すでに成果として世の中に出ているものも少なくない。その一例が、個々人の好みに合わせてデザインを検索・推薦する感性AIエンジン。自分でデザインした服をつくれる「クチュール」というアプリや髙島屋の紳士服オーダーサロンの「感性AIパターンソムリエ」で実際に利用されている。

 脳波や血流の測定、心理学的実験、そしてAIやビッグデータまでも活用した「感性のものさし(感性価値メトリック)」づくりが、新たな産業革命を起こす日も遠くないだろう。

 感性工学の研究はさまざまな学問や分野との連携によって進められる。それこそがこの研究の醍醐味だと長田教授は微笑む。

「心理学者や経済学者、脳科学者、ピアニストや芸術家、デザイナーなど多彩な方々と研究を進めます。各分野のプロフェッショナルの知見や考え方から得られるものは大きく、思ってもみない発想や成果が生まれるので楽しいです。最近はポストコロナに向け、観光業を盛り上げるべく、建築学部の先生と一緒に感性価値を観光資源に応用する研究も始めました」

感性価値の測定サービス開始により
さらなる技術開発が期待される

 2020年には関西学院大学が設立した「感性価値創造インスティテュート」の所長に就任。産業や生活環境における新たな感性価値を創出するため、科学・技術・芸術を融合した新しい方法論の研究も加速させる。

 また、物理分析や化学分析を行う企業との共同研究で生み出した「感性価値の測定サービス」も、本格的なビジネスとしてスタートした。測定サービスの利用者のビッグデータがフィードバックされることで、さらなる技術開発に向けた研究が可能となるだろう。

「Society 5.0やサイバーフィジカルシステムなど、リアルとバーチャルの融合が課題となるなかで、感性価値の研究は今まで以上に重要になっています。だからこそ、今後もしっかりと研究を進め、その成果を人の幸せにつなげていきたいと思っています」

脳波や血流、筋肉の動きなど多彩な面から、目に見えない「感性」を探っていく

指先が触れる表面性状と指先の接触時に生じる相互作用力を周波数空間において特徴量化し、特徴量と触覚的質感の関係性を高精度に表現する予測モデルを構築。触感の定量的利用が可能となった

感性AIエンジンをもとに開発され、髙島屋の紳士服オーダーサロンにも導入された「感性AIソムリエ」。感性のものさしと関連付けた印象推定モデルが組み込まれ、自分が求めるイメージに最適な生地がレコメンドされる

関西学院大学

文理5学部を擁する分野横断型キャンパス始動

2021年4月、本学は神戸三田キャンパス(KSC)に理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の理系4学部を新設しました。これによりKSCは、総合政策学部を含めた文理5学部を擁する、分野横断型キャンパスになりました。5学部の学問分野を横断して学べる文理融合・分野横断型教育システムを新たに整備するなど、学部間の連携を積極的に推進することで、世界の課題を解決する「境界を越える革新者(Borderless Innovator)を輩出します。

理系学生のビジネスマインド醸成の場「BiZCAFE」オープン

KSC内アカデミックコモンズにBiZCAFEが2021年4月にオープン。国内外の大学近辺で「知るカフェ」を運営する株式会社エンリッションが、国内の大学で初めて導入する取り組みで、株式会社スノーピークと本学が共同開発した「KSCオリジナルマイボトル」を持参した学生に対し、コーヒーや紅茶等の飲料を無料で提供します。また、BiZCAFE内では、学生が企業や団体と協働しながら、社会や事業の課題解決に役立つ研究を実践する機会を提供するプログラム「BiZCLASS」も展開。理系学生のビジネスマインド醸成を後押ししていきます。

学部学科

■ 神学部 ■ 文学部:文化歴史学科/総合心理科学科/文学言語学科 ■ 社会学部:社会学科 ■ 法学部:法律学科/政治学科 ■ 経済学部 ■ 商学部 ■ 人間福祉学部:社会福祉学科/社会起業学科/人間科学科 ■ 国際学部:国際学科 ■ 教育学部:教育学科 ■ 総合政策学部:総合政策学科/メディア情報学科/都市政策学科/国際政策学科 ■ 理学部:数理科学科/物理・宇宙学科/化学科 ■ 工学部:物質工学課程/電気電子応用工学課程/情報工学課程/知能・機械工学課程 ■ 生命環境学部:生物科学科/生命医科学科/環境応用化学科 ■ 建築学部:建築学科
※ 2021年4月開設

主な就職実績(2020年3月卒業生実績)

パナソニック、ダイハツ工業、オムロン、桐灰小林製薬、富士薬品、コカ・コーラボトラーズジャパン、西日本電信電話、西日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、三菱電機、グローリー、五洋建設、富士電機、富士通、NECソリューションイノベータ、日立ソリューションズ・クリエイト、三菱電機エンジニアリング、みずほ証券、日本政策金融公庫、住友不動産販売、兵庫県教育委員会京都府教育委員会 ほか

お問い合わせ先

〒662-8501 兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
広報室 TEL:0798-54-6017