Professor

井上博之

京都産業大学

情報理工学部 教授
組込みシステムセキュリティ/インターネットセキュリティ

ネットワークにつながった
未来の自動車の安全を守る

自動車や家電に組込まれた
ネットワークの脆弱性を研究

「これは私たちが開発した、ゲーム機のコントローラーで操縦ができる自動車です。市販の自動車に搭載されたコンピュータの通信データを解析し、独自に開発したコンピュータと接続することで、外部から操縦することを可能にしました」

 京都産業大学情報理工学部の井上博之教授は一台の自動車を指さし、そう説明した。運転席に座るドライバーはハンドルとアクセル・ブレーキの代わりに、家庭用ゲーム機のコントローラーを握っている。合図に合わせ、コントローラーのボタンを押すと、アクセルを踏んでもいないのに自動車は滑らかに加速し、またジョイスティックを動かすことで左右にハンドルが動いた。

「高度に電子化された現代の自動車は、このように外部から内蔵コンピュータを適切に制御することで自由に操縦できてしまいます」

 井上教授は、長年に渡り「ネットワーク」と「組込みシステム」の研究を続けてきた。組込みシステムとは、テレビや冷蔵庫といった家電や自動車などの機器のように特定の機能を実現するために開発されたコンピュータシステムのことを意味する。

「身の回りの多くの機器がネットワークに常時接続される時代となりました。離れた場所から機器が操作できるようになるなど、日常生活がより便利になる一方で、それらの情報セキュリティを安全に保つことが極めて重要になっています」

 なかでも研究テーマとして重要視するのが、自動運転技術が進む「近未来の自動車」のセキュリティだ。

「2015年、特別な装置を取り付けていない走行中の自動車が、外部から自由にコントロールされるという、自動車業界を震撼させる事例が国際会議で報告されました。その報告を受け、自動車のセキュリティ対策に注目が集まるようになったのです」

すべてがネットワークにつながるIoT時代
情報セキュリティは全産業の基本となる

これからの自動運転の
時代には必須となる技術

 搭載されたセンサで他の自動車や道路などの外部の情報を収集しながら走行する自動運転車は、人間の操縦に起因する渋滞や事故を激減させると期待されている。

「しかしその一方で、ネットワークにつながることは、外部から不正アクセスされるリスクも大きくなります。近未来の自動車には、ドライバーや搭乗者のプライバシーに関する情報なども蓄積されることが予想され、誰もが安心して利用するためには、情報セキュリティの対策が待ったなしの状況になっているのです」

 パソコンやスマートフォンなどと違い、自動車や家電に組込まれたコンピュータは、普段は使用者から意識されることが少ない。だが、その多くが通信で外部とつながるようになりつつある現在、「デバイスの使いやすさと安全性を両立させることができるエンジニアの養成が急務となっています」と井上教授は語る。

情報セキュリティに関する
多くの知識を4年間で身につける

 井上教授は大阪大学で電子工学を学んだ後、産業用総合電機・電子メーカーに就職。その後、スタートアップ企業などでキャリアを積みながら、30年以上にわたってネットワーク技術に関する開発と研究を続けてきた。冒頭に紹介したゲーム機コントローラーで操作できる自動車も、その研究の一環だ。

「ネットワークと組込みシステム、そして情報セキュリティに関する技術は、IoT時代の今、あらゆる産業にとって必須のものとなっています。しかし、実際にその技術を実現するとなると、非常に広範な知識が求められます。通信やネットワークに関する知識、コンピュータのハードウェアやOSの知識、プログラミングの知識、クラウドやスマートフォンについての知識といった広範囲に渡る知見を、実機を用いて体系的に身につけることを目指しています」

 現在では、パソコンはもちろん、家庭のリビングにあるテレビやゲーム機もネットワークに接続されることが当たり前となっている。自動車や身の回りのさまざまな機器が「コネクト」される近未来、それらが真の意味で使いやすく、より安全なものとなるためには、その「作り手」と「運用」ができる人材が必ず必要となる。

「情報セキュリティに関する知見の応用先は無限にあります。学んだ知識と技術を活かして、実世界に貢献できることがこの分野を学ぶ最大の面白さであり、やりがいです。コンピュータや通信に幅広い関心を持ち、社会に役立ちたいと考える人は、ぜひ私の研究室を訪ねてきてください」

自動車の組込みシステムのシミュレータ。キーボードで走行データを入力すると、そのとおりにハンドルやスピードメーターなどが動く

自動車のセキュリティ演習に使用する「ラズベリーパイ」と呼ばれる小型コンピュータ。学生に1台ずつ割り当てられ、プログラムをこのコンピュータに入力してシミュレーションを行う

京都産業大学の14号館1Fに設置されたサーバ群。大規模データを処理する際などに利用されている

京都産業大学

文理10学部18学科が集う日本最大規模の一拠点総合大学

京都産業大学は、文系・理系合わせて10学部18学科、約15,000人がひとつのキャンパスで学ぶ総合大学です。この利点を活かし、実社会で活きる高度な専門知識とスキルを養うとともに、学部を超えた知の交流により総合的かつ柔軟な学びを展開しています。

社会を生き抜く力を身に付ける

京都産業大学のキャリア形成支援プログラムは、全学部・全年次の学生を対象に多彩な科目を開講。「大学での学び」と「社会での実践」を段階的に積み重ねていくことで、個性や自主性を養い、自ら考え行動する「社会で活躍できる人材」を育成しています。
企業や自治体と提携して進める「O/OCF-PBL(On/Off Campus Fusion-Project Based Learning)」や「インターンシップ」など、段階的にキャリアを形成していくカリキュラムにより、社会で活躍する素養を身に付けます。

学部学科

■ 理学部:数理科学科/物理科学科/宇宙物理・気象学科 ■ 情報理工学部:情報理工学科 ■ 生命科学部:先端生命科学科/産業生命科学科 ■ 経済学部:経済学科 ■ 経営学部:マネジメント学科 ■ 法学部:法律学科/法政策学科 ■ 現代社会学部:現代社会学科/健康スポーツ社会学科 ■ 国際関係学部:国際関係学科 ■ 外国語学部:英語学科/ヨーロッパ言語学科/アジア言語学科 ■ 文化学部:京都文化学科/国際文化学科

主な就職実績(2021年度卒業生)

伊藤園、キユーピー、シャープ、大阪ガス、関西電力、島津製作所、京セラ、サイバーエージェント、任天堂、東海旅客鉄道(JR 東海)、星野リゾート、和研薬、日本電気航空宇宙システム(NEC 航空宇宙システム)、パナソニックシステムデザイン、富士通エフサス、ヤフー、ニトリ、京都銀行、京都中央信用金庫、日本郵便、京都市教育委員会、大阪府教育委員会、国家公務員一般職(厚生労働省・財務省税関)、国税専門官、京都府警察本部、京都府庁、広島県庁、京都市役所 ほか

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