Professor

脇田敏裕

神奈川工科大学

創造工学部 自動車システム開発工学科 教授
人工知能/自動運転システム

「見守り・サイネージ」ロボット

AIを搭載した移動ロボットで
自動運転社会の可能性を追究する

自動運転社会の最終形は
エチオピアの交差点

 研究室のモニターには、自動車やバイクが頻繁に行き交う交差点の画像が映し出されている。信号も横断歩道もなく、人々はギリギリのタイミングで自動車の間をすり抜けていく。どこか開発途上国の映像だろうか。日本人の感覚では、この交差点は渡れそうにない……。

「これはエチオピアにある都市の交差点の動画です。私の究極の目標は、この風景を自動運転技術で実現することです」

 そう語るのは、神奈川工科大学創造工学部自動車システム開発工学科知能モビリティ研究室の脇田敏裕教授だ。専門分野は人工知能(AI)や自動運転システム。教員になる前は、トヨタグループ企業の研究者として、自動運転技術などの開発に従事していた経験を持つ。

 そんな脇田教授が現在取り組んでいるのが、「KAITモビリティリサーチキャンパス」の構築だ。自ら考え行動するモビリティたちが、キャンパス内を動きまわり、生活や学びを豊かで楽しいものにする――。そんな未来に向けた神奈川工科大学の壮大な実験だ。

「清掃、運搬、見守り・サイネージという3つの課題を設定し、これを自律的にこなす移動ロボットを開発しました。ロボットのハードウェアは市販のパーツを組み合わせて製作し、ソフトウェアの多くは独自開発しています。まずは、AIを搭載した移動ロボットを自走させて、キャンパス全体の環境を認識させます。ここに落ち葉がある、ここに段差がある……といった情報をWi-Fiや5Gネットワークでつながったサーバで共有し、複数のロボットを連携させます。AI技術、センサ・認識技術、通信技術など、さまざまな技術を統合した高度なシステムをキャンパス内に構築しています」

ネットワークでつながった「スマートキャンパス」の概念図。「見守り・サイネージ」ロボットが落ち葉を発見した情報を受け、「清掃」ロボットが出動する

「KAITモビリティリサーチキャンパス」の
研究成果で地域社会の課題解決に挑む!

深層学習の技術を活用して
キャンパスを認識させる

 脇田教授は学生時代、ニューラルネットワークと呼ばれる現在、話題の深層学習(ディープラーニング)につながる研究に取り組んできた。今回の「KAITモビリティリサーチキャンパス」でも深層学習の技術が大いに活用されている。

 具体的には、移動ロボットの目の役割を果たすカメラやLiDAR(ライダー)と呼ばれる測距センサのデータをAIに自動で学習させ、キャンパスを認識させている。「落ち葉レイヤー」、「不審者レイヤー」、「モビリティレイヤー」、「無線ネットワークレイヤー」、「地図レイヤー」という5つのレイヤーの取得データを統合した基盤をつくり、移動ロボットたちに最適な行動を考えさせるのだという。

「移動には、さまざまな計算が必要です。走る、よける、ゆずり合う、伴走する……など、人間が何気なくこなしていることは実はすごく難しい。例えば、前方から“スマホ歩き”をしている人が来たら、ちょっと大回りしてよけますよね? これを移動ロボットにやらせようとするとまず、下向きという状態を深層学習で学ばせて、“スマホ歩き”の人を認識させたら、さらに経路計算をして、移動ルートを割り出すわけです。人間が無意識にできることを実現するのに、これだけの作業が必要になる。エチオピアの交差点の状況を自動運転技術で実現するのは、まだまだ先になりそうです(笑)」

オープンキャンパスで
移動ロボットが案内役に

 移動ロボットは、すでに学内では実用化されており、「見守り・サイネージ」ロボットは、2021年のオープンキャンパスで、案内役として活躍したという。「よくここまで多くのロボットを学内で走らせられるな」と他大学の教員によく言われるという脇田教授。これは理工系総合大学である神奈川工科大学だからこそ実現できたプロジェクトなのだろう。

 脇田教授の目線は、現在、キャンパスの外に向いている。キャンパス内に構築した移動ロボットのシステムを地域社会で実証するため、近隣の自治体と連携した新たなプロジェクトが動き始めているという。

「この研究の面白さは、自分が空想したアイデアで、リアルな世界を動かせることです。シミュレーションで終わらせず、実社会で役立ててこそ研究の意義があります。AIや自動運転技術を駆使して、人々の生活を豊かにする社会インフラをつくり出したいと思っています」

学生・教員・キャンパスがともに成長するプラットフォームになることが「KAITモビリティリサーチキャンパス」の狙いだ

オープンキャンパスの案内役として活躍する移動ロボット。「自身でプログラミングを行う楽しさを再発見している」と脇田教授

自動運転技術を応用したラジコンの自動走行のデモンストレーション。オープンキャンパスなどで見ることができる

神奈川工科大学

社会で必要な力を効率よく養うPBL教育

神奈川工科大学の教育の特徴は、さまざまな能力の育成に力を入れ実践していることです。具体的には、PBL(Project-Based Learning)教育を早くから取り入れ、社会で活躍する上で必要となる能力をより効果的に身につけることができる「ユニットプログラム」を実施。従来の1科目の時間の2~4倍を充てています。

自信をつける教育で「考え、行動する人材」を育成

開学以来重視している卒業研究によって、身につけてきた能力に磨きをかけることで、「このように考えることができるようになった」、あるいは「このように対応することができるようになった」と皆さんも実感できることでしょう。神奈川工科大学は、学生が社会で活躍する人材に成長していくことをめざします。

学部学科

■ 工学部:機械工学科(機械工学コース/航空宇宙学コース)/電気電子情報工学科/応用化学科  ■ 創造工学部:自動車システム開発工学科/ロボット・メカトロニクス学科/ホームエレクトロニクス開発学科  ■ 応用バイオ科学部:応用バイオ科学科(応用バイオコース/生命科学コース) ■ 情報学部:情報工学科/情報ネットワーク・コミュニケーション学科/情報メディア学科  ■ 健康医療科学部:看護学科/管理栄養学科/臨床工学科

主な就職実績(過去5年間)

厚木市立病院、アルファシステムズ、小田急電鉄、鹿島建設、神奈川県庁、関電工、紀文食品、シャープ、セガ、ソフトバンク、DTS、東芝キヤリア、日産自動車、日本アイ・ビー・エム、日本栄養給食協会、日本ケミコン、日本コムシス、バンダイナムコスタジオ、平塚市民病院、東日本旅客鉄道(JR 東日本)、富士ソフト、富士通、ホーチキ、本田技研工業、森永乳業、ヤマザキ ほか

(※2022年3月卒)

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