Professor

村田泰宏

福井工業大学

工学部 電気電子情報工学科 教授
あわら宇宙センター センター長
電波天文学/電波干渉計/パラボラアンテナ

電波でとらえる宇宙の姿
観測の醍醐味は予想外の発見にある

電波干渉計やスペースVLBI
巨大な電波望遠鏡をつくる方法

 宇宙の姿を知るために欠かせないのが望遠鏡だ。一般的な望遠鏡は天体から届く光(可視光)を観測するが、宇宙からは電波や赤外線、X線など、さまざまな波長の情報も届いている。これらを観測することで、可視光だけでは見えない宇宙の姿を探ることができる。なかでも福井工業大学の村田泰宏教授が専門としてきたのが、電波を利用した観測だ。

「宇宙から届く微弱な電波を観測するために使うのが電波望遠鏡です。私は研究者としてのキャリアの初期から、複数のアンテナを組み合わせて高い解像度を実現する『電波干渉計』を用いた観測やその装置の開発に取り組んできました」

 電波干渉計とは、複数の電波望遠鏡を連携させ、一つの巨大な望遠鏡として機能させる技術である。さらに、地上のアンテナと宇宙空間のアンテナを組み合わせる「スペースVLBI」では、地球の直径を超える規模の観測網の構築が可能になる。電波望遠鏡はサイズが大きいほど細かな構造を見分けられるため、こうした技術によって天体をより高精度に観測できるのだ。これにより、遠方銀河の中心部や星形成領域など、従来は観測が難しかった領域の解明が大きく進んだ。

 なかでも村田教授は、宇宙科学研究所(現JAXA)にて、世界で初めてのスペースVLBI用衛星「はるか」のプロジェクトに参加していた。「はるか」は1997年に打ち上げられ、世界14カ国の電波望遠鏡と連携して地球規模の電波干渉計を構築し、多くの銀河でみられる宇宙ジェットの観測を行った。宇宙ジェットとは、ブラックホールや原始星などの天体の周辺から、ガス(プラズマ)が細く絞られて高速で噴出する現象である。

「もともとは、星が生まれる現場を見たいと思っていました。宇宙空間でガスや塵が集まり、やがて星へと成長していく。その過程に強い興味があったのです。理論から予測された現象を確かめるのも大切ですが、観測の醍醐味は予想外の発見にあります。理論研究者も想定していなかったものを見つけられるかもしれない。『こんなものが宇宙にあったのか』という瞬間に立ち会えることを期待して研究に取り組んできました」

学生とともに宇宙を追う
福井工業大学あわら宇宙センターの挑戦

深宇宙探査を支える
新たな54mアンテナの開発

 小惑星探査機や惑星探査機は、地球周辺ではなく太陽の周りを回りながら航行するため、地球との距離は人工衛星などとは比較にならないほど遠くなる。こうした地球から200万km以上離れた領域は「深宇宙」と呼ばれ、探査機との通信には、微弱な電波を受信する大型アンテナと、高出力の送信設備が欠かせない。日本では1984年、長野県の臼田宇宙空間観測所に直径64mのパラボラアンテナが建設され、小惑星探査機「はやぶさ」などの深宇宙探査を支えてきた。しかし、建設から約40年が経過したことから、新たな深宇宙地上局の整備が進められることになった。村田教授は2015年頃から、この新アンテナの設計プロジェクトに参画した。

「実際に設計や製造を行うのはメーカーの技術者ですが、私は要求性能を満たしているかを確認する役割を担っていました。たとえば『はやぶさ2』と通信するために必要な性能を設計段階から検証し、完成後には測定や評価も行いました」

 こうして2021年に完成したのが、直径54mの新しいパラボラアンテナだ。従来の64mアンテナより小型ながら、性能は大幅に向上している。

「アンテナの光学系の設計の進化と、鏡面の精度向上によって、より効率よく電波を集められるようになりました。また、低雑音増幅器の性能も進歩し、雑音を抑えながら微弱な信号を捉えられるようになり、長く使用してきた64mアンテナに比べ、54mと口径が小さいにもかかわらず64mを上回る性能を実現できました」

有人月探査ミッション「アルテミスII」
日本の大学で唯一参加

 現在、村田教授は福井工業大学あわら宇宙センターのセンター長を務めている。同センターには、地球周回衛星の運用に活用される3.9mパラボラアンテナや、大学・民間施設としては国内唯一となる月軌道までの衛星運用をカバーする13.5mパラボラアンテナなど、計5基のアンテナが設置されている。

 そうした設備と技術力が評価され、福井工業大学はNASAが進める有人月探査ミッション「アルテミスⅡ」において、宇宙船「オリオン」から送られる電波を受信・追跡する公式トラッキング協力局に選定された。日本の大学として唯一参加しており、2026年4月には電波受信にも成功している。

「アルテミスⅡの打ち上げが満月の時期に設定されていたために、オリオン宇宙船は満月と同様夕方に昇り、朝に沈みます。そのため、学生たちと一緒にあわらキャンパスで夜通し追跡運用を行いました。また、福井キャンパスからも状況を確認できるよう、学生主体でネットワーク環境を構築し、遠隔で運用を共有できる仕組みも整えました」

 さらに、大学内の2.5mパラボラアンテナは、電波天文学の教育・研究に活用されており、学生が自ら装置に触れ、改良や修理にも挑戦できる環境が整えられている。村田教授は、こうした実践の中で失敗を経験することが、研究者や技術者として成長するために欠かせないと考えている。

「私自身、これまでアンテナや衛星、望遠鏡など数多くのプロジェクトに携わってきましたが、すべてが成功したわけではありません。しかし、失敗を乗り越えながら次につなげていくところに、この仕事の面白さがあります。大きな成果は、一つひとつの挑戦と試行錯誤の積み重ねの先に生まれるものです。だからこそ学生たちにも、失敗を恐れず挑戦し、その経験を次の成功につなげてほしいと思っています」

宇宙船「オリオン」から送られる電波を受信・追跡している様子

高校生対象アンテナ見学・体験イベントの様子

口径13.5メートルのパラボラアンテナ

福井工業大学

その「夢中」が未来を創る

福井工業大学は、4学部8学科で編成され、「次世代型工科系総合大学」として、文理融合の学びを展開しています。これからの国際化社会や情報化社会に相応しい人材の育成に取り組み、“将来”を見据えた社会、そして“未来”を創っています。

「NASAアルテミス計画」
オリオン宇宙船追跡と月・深宇宙探査への挑戦

2026年4月、NASA(米国航空宇宙局)は有人月周回ミッション「アルテミスII」を実施し、宇宙船オリオンは約9日間に及ぶ飛行を終えて地球へ無事帰還しました。アルテミス計画は、人類が再び月を目指し、その先の火星探査へとつなげていく壮大な国際プロジェクトです。FUTあわら宇宙センターは、このアルテミスIIミッションにおいて、宇宙船オリオンからの電波を受信・追跡するNASA公式のトラッキング協力局に、日本の大学として唯一選定されました。実際の運用には学生も参加。有人宇宙探査という世界最先端の現場を体験しました。こうした国際的な取り組みを支えているのが、本学が誇る口径13.5mの大型パラボラアンテナです。国内の大学では唯一、月軌道までの衛星運用が可能な地上局として高い性能を備えており、この設備を活かして、世界が必要とする宇宙開発・宇宙産業を支える人材の育成を進めています。

学部学科

■工学部:電気電子情報工学科/機械工学科/建築土木工学科/原子力技術応用工学科 ■環境学部:環境食品応用化学科/デザイン学科 ■経営情報学部:経営情報学科 ■スポーツ健康科学部:スポーツ健康科学科

主な就職実績

今村証券、エイチアンドエフ、オーディオテクニカフクイ、警視庁、京セラ、熊谷組、KOBELCO神戸製鋼、五洋建設、自衛隊、信越化学工業、セイコーエプソン、竹中工務店、東海旅客鉄道(JR東海)、東京電力ホールディングス、西日本旅客鉄道(JR西日本)、日産自動車、東日本旅客鉄道(JR東日本)、福井県警察本部、福井信用金庫、福井鋲螺、福井村田製作所、フクビ化学工業、法務省(刑務官)、北陸電気工事、本田技研工業、三谷セキサン ほか

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