土屋謙仕
長野保健医療大学
保健科学部 リハビリテーション学科 准教授
認知神経科学/リハビリテーション科学
長野保健医療大学
保健科学部 リハビリテーション学科 准教授
認知神経科学/リハビリテーション科学
長野保健医療大学保健科学部リハビリテーション学科の土屋謙仕准教授が取り組む作業療法学は、生命や健康に深く関わる学問分野の一つである。今後、AIが利用者の特性に応じたリハビリテーションプログラムを提案することも十分に想定されるが、その妥当性を判断し、実践に結び付ける責任を担うのは作業療法士である。こうした時代において、この判断力と責任感は作業療法士に求められる重要な資質となるだろう。
そのような背景のもと、土屋准教授は「論理的思考力や批判的思考を養う研究活動は、専門職としての判断力と責任感を育む最適な学習機会である」と考え、研究を通じた教育に力を注いでいる。作業療法士を目指す学生は、知識・技術の習得、国家試験対策にも取り組むため研究活動に十分な時間を確保することは容易ではない。しかし、長野保健医療大学が有する、学部から大学院まで継続して学べる環境を活かし、土屋准教授は学部生の段階から研究活動を重要な教育機会として位置付け、その取り組みを力強く支援している。
医療現場で小児のリハビリテーションを担当する大学院生が、自閉症児童の睡眠・覚醒リズムと感覚過敏の関係性を探求している
土屋准教授は、「教育×研究×地域貢献」を理念に掲げ、学生の成長と地域社会への貢献を両立する研究プロジェクトを実践している。研究テーマは、日常生活活動における脳活動の解明を目指す認知神経科学研究や、機械学習を活用した自治体との地域連携研究に積極的に取り組んでいる。
こうした取り組みの成果として、研究室では学生が主体的に参画した研究成果が数多く海外学術誌に掲載されている。2025年には、当時大学4年生であった学生2名の卒業研究の成果を含む論文「ビデオコミュニケーションは親しみやすさを低下させる:機能的近赤外分光法を用いた検討」が海外学術誌に掲載された。この研究はオンラインリハビリテーションの質向上に資する知見を提供し、学生は在学中に海外学術誌への論文掲載を達成した。
さらに2026年には、すでに3編の論文が海外学術誌に掲載されている。一つは、急性期脳卒中患者の退院先の予測モデル開発研究である。近年、医療費の増大に伴い入院期間の短縮が進むなか、作業療法士には限られた期間で退院先を予測し、適切なリハビリテーション計画を立案することが求められている。本研究では、神経学的所見や日常生活動作能力などのデータを機械学習で分析・モデル開発を行い、入院後3日での退院先予測を可能にした。
また、別の論文では、長野県飯山市と連携し、高齢者の介護リスクを6年先まで予測する機械学習モデルを構築した。この研究に中心的に取り組んだのは、学部生時代から研究室に所属し、卒業後は臨床業務に従事しながら大学院へ進学した学生である。学部から大学院と継続して研究活動に取り組んだ結果、甲信越地域の作業療法学分野では初となる、大学院修士課程在学中に筆頭著者として海外学術誌へ論文が掲載されるという成果を達成した。
「研究の目的は“正解を覚えること”ではなく、“新たな正解を創り出すこと”にある。目の前の課題に対して、“本当にそうなのか?”“その根拠は何か?”“別の解釈はないのか?”と問い続ける研究活動を通じて、論理的思考力や批判的思考力を養うだけでなく、複雑な事象を俯瞰的に捉えるシステム思考や、社会課題を発見し解決へと導くアントレプレナーシップの育成にも力を注いでいます。AIやデータサイエンスの発展により将来予測が困難な時代を迎えるなか、こうした能力は作業療法士として活躍するための重要な基盤になると考え、研究活動も教育の中心に据えた人材育成を実践しています」と土屋准教授は言う。
また、地域と連携した学びを通して地域社会の課題を実感し、その解決に向けた研究に取り組める長野保健医療大学の作業療法学専攻の環境も、こうした資質・能力の育成を支える重要な要素となっている。研究室では現在も多様な研究プロジェクトや学術論文の作成が進められており、今後も作業療法学の発展と地域医療・地域福祉の向上に貢献できる多くの人材が輩出されるだろう。
大学院修士課程在学中にimpact factorのある海外誌に筆頭著者として論文が掲載された学生。学部生時代から研究室に所属し、卒業後は臨床業務に従事しながら大学院へ進学し研究テーマに取り組んでいる
6年後の介護保健認定リスクを予測する機械学習モデルのディシジョンツリー(可能性を比較・検証するフレームワーク)
土屋准教授は研究に対するアドバイスに加えて英語論文の作成など、学生の研究活動を全面的にバックアップする

長野保健医療大学では専門的な知識・技術に加えて、医療従事者に求められる倫理観、社会人としての教養や責任感、医療現場で不可欠なコミュニケーション能力の育成を重視。実際の医療活動を体験する専門職連携教育と実習を通じて、地域医療に貢献できる医療人材となるための力を4年間で身につけます。学生サポート体制も充実しており、保健科学部では学年ごとのクラス担任を、看護学部では教員数名と学生10名程度をグループとするチューター制度を設置しています。
保健科学部リハビリテーション学科には理学療法学専攻と作業療法学専攻の2つの専攻を設置しています。理学療法学専攻では身体機能の回復・改善をめざした運動療法や物理療法を学び、臨床に強い理学療法士を育成します。作業療法学専攻では実社会への対応力を回復させるための多様な作業活動を学び、幅広い場所で活躍できる作業療法士を育成します。看護学部看護学科では「地域で学び、地域を学ぶ」ことを特色として、1年次から地域住民と関わりながら、看護の知識とスキル、人々の健康生活を支えるための人間力を培っていきます。
■保健科学部:リハビリテーション学科[理学療法学専攻/作業療法学専攻] ■看護学部:看護学科
相澤病院、安曇野赤十字病院、飯田市立病院、飯山赤十字病院、伊那中央病院、県立こども病院、国立信州上田医療センター、国立まつもと医療センター、佐久総合病院、篠ノ井総合病院、信州大学医学部附属病院、長野市民病院、長野赤十字病院、長野中央病院、大森赤十字病院、神奈川県立がんセンター、埼玉医科大学総合医療センター、埼玉県立病院機構、新百合ヶ丘総合病院、TMGあさか医療センター、東京科学大学病院、東京大学医学部附属病院、東邦大学医療センター大森病院、横浜市立市民病院、神戸市看護大学大学院(進学)、上越教育大学大学院(進学)、埼玉県庁(保健師) ほか
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