瑞慶覧章朝
神奈川工科大学
工学部 電気電子情報工学科 教授
高電圧工学/放電工学/静電気工学
神奈川工科大学
工学部 電気電子情報工学科 教授
高電圧工学/放電工学/静電気工学
地球温暖化や大気汚染が深刻化するなか、CO₂排出の削減は世界共通の課題となっている。そこで、自動車はEV(電気自動車)化が進んでいるが、航空機や大型船舶は従来のエンジンを使った運用が続いている。そこで注目を集めるのが、排ガスを浄化する技術だ。神奈川工科大学工学部電気電子情報工学科電気応用研究室の瑞慶覧章朝教授は30年以上ディーゼル排ガス微粒子を浄化する集塵技術を研究している。
「東京の大気汚染の10~20%は、沿岸を行き交う船舶の排ガスが原因とされています。船は石油精製の最後に残る『残渣油』を燃やして走るため、黒い粒子(ブラックカーボン)を多く出します。これが太陽光を吸収しながら大気を漂い、北極の氷に付着し、融解を早めることもわかっています」
一方で、言わば“残りカス”である残渣油を使って走る船舶には、“原油を無駄なく使い切る”という一定の役割がある。船舶に使うディーゼルエンジンは熱効率が高く、同じ化石燃料からより多くのエネルギーを取り出せる。つまり、船舶運用に関しては、ディーゼル燃料を“規制”するよりも“浄化”する技術開発のほうが環境負荷低減につながるのだ。
瑞慶覧教授の排ガス浄化装置の技術核心は、従来の常識をくつがえす発想にある。これまでの集塵装置は、外から電気エネルギーを注入して排ガス中の粒子状物質を強制的に帯電させ、静電気の力で集めていた。ところが瑞慶覧教授は、この粒子の9割が自然に帯電していることを突き止めた。
「すでに帯電しているなら、わざわざ電気エネルギーを注入する必要はありません。静電気の力だけで集めれば、エネルギーをほとんど使わない浄化装置が実現できます」
カギを握るのは浄化装置内の電極の構造だ。微弱にしか帯電していない排ガス粒子を捕えるため、特殊な形状の電極で従来の約3倍という強い電界をつくる必要がある。これによって、静電気の力だけで、ブラックカーボン、可溶性有機成分、多環芳香族炭化水素までまとめて除去できる。世界的にも独自のこの手法は、エネルギー消費を大幅に抑えるだけでなく、多様な粒子を同じ仕組みでまとめて捕まえられる点も大きな強みとなっている。
ディーゼル排ガス浄化装置の内部。メカ好きにはたまらない重量感がある
この研究の原点は、小学生の頃の体験にある。飼い犬が道端の何かを食べて命を落とすという忘れられない出来事があった。ここで瑞慶覧少年は、あることに気づく。
「犬と違い、人間は安全な食べ物や水を選ぶことができる。しかし、空気だけは選べない。そこで、きれいな空気をつくる仕事がしたいと考えるようになりました」
大学に進学した瑞慶覧教授は、大気の浄化につながる基礎研究として、高電圧工学や放電工学を学んでいく。そのまま博士課程まで研究を続け、修了後はメーカーで電気集塵機の開発を経験した後、「もっと夢のある研究をしたい」と大学教員に転身した。
瑞慶覧教授は現在、ディーゼル排ガス用に培った技術を家庭用の空気清浄機へ応用する共同研究も進めている。狙うのは、ウイルス、花粉、PM2.5、黄砂などだ。花粉や黄砂などは比較的簡単に集められるが、0.1ミクロンほどしかないウイルスを捕まえるのは難しい。ここで目をつけたのが、室内においても浮遊する粒子の8割が自然に帯電していること。この性質を利用すれば、ディーゼル排ガス用と同様にエネルギー効率のいい空気清浄機が実現可能だ。
「世の中はすべて物理現象で動いています。静電気の力も粒子が自然に帯電することもずっと昔から知られていた現象です。それを組み合わせるだけで、エネルギーをほぼ使わない空気清浄機のアイデアになるのです」
環境問題に関心を持つ若者は多いが、興味だけでは世界は変わらない。確かな知識に裏打ちされた技術こそが現実を動かす。瑞慶覧教授の研究は、そのことを静かに教えてくれる。電気電子工学の知識は、地球規模の課題に立ち向かうための確かな武器になるのだ。
電気集塵装置。静電界力で微粒子を捕集する空気浄化装置。目に見えない微小粒子も高効率で除去できる
学内にある実験施設の様子
電気応用研究室の学生たちが実験を通して物理現象を体感している様子

学校推薦型選抜の理工系女子対象公募生入試が、2025年度より「総合型選抜」として実施されます。試験では、学科ごとのテーマに応じた講義を受講してレポートを作成し、その内容に関する質疑応答を含む面接を実施します。この変更により、女子のみなさんの持つ多様な可能性がより豊かに評価されます。
神奈川工科大学では、2026年度入学者選抜の併願制入試から、「入学金返還制度」を導入しました。これは、本学が進めている受験生の経済的支援の一環であり、 安心して進路選択ができるように受験生を支援するものです。 *詳細は大学ホームページをご確認ください。
■工学部:機械工学科/電気電子情報工学科/応用化学生物学科 ■情報学部: 情報工学科/情報ネットワーク・コミュニケーション学科/情報メディア学科/情報システム学科 ■健康医療科学部:看護学科(看護師・保健師養成課程)/管理栄養学科(管理栄養士養成課程)
アキレス、厚木市立病院、アマダ、岩手医科大学附属病院、エームサービス、SMC、NSW、オカムラ、鹿島建設、神奈川中央交通、きんでん、グリーンハウス、国立国際医療研究センター病院、JVCケンウッド、シャープ、スタンレー電気、ソフトバンク、高砂熱学工業、TDCソフト、東亞合成、東名厚木病院、日産自動車、日清医療食品、日本医科大学付属病院、東日本電信電話、東日本旅客鉄道、富士通ゼネラル、本田技研工業、ミネベアミツミ、ヤクルト本社、ルネサスエレクトロニクス ほか
〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
入試課 TEL:046-291-3000