Professor

江玉睦明

新潟医療福祉大学

リハビリテーション学部 理学療法学科 教授
機能解剖学/スポーツ理学療法学

女性アスリート特有の心身の課題を
スポーツ医科学の手法で解決する!

学内の女性アスリートを調査
特有のリスク群が明らかに

 ゴルフやテニスはもちろん、サッカー、バレーボール、バスケットボールなど幅広い競技でプロの女性アスリートが活躍している。ただ、彼女たちが抱える女性特有の心身の課題について、まだ知られていないことが多いという。

 そんななか、医科学的な視点から地域社会における女性アスリートが抱える心身的な課題に挑む研究者がいる。新潟医療福祉大学リハビリテーション学部理学療法学科の江玉睦明教授だ。

「もともと学内にケガに悩む女性アスリートが多く、スポーツ理学療法学の研究者として、その予防策に関心がありました。そこで学内で6競技125名の女性アスリートの学生を調査したところ、『無月経・骨粗鬆症・利用可能エネルギー不足』という女性アスリートの三主徴にあたるリスク群が全体の24%にものぼることがわかりました。実際、同年に膝前十字靱帯損傷が8件、大腿骨疲労骨折が2件発生するという事態も発生しており、この予防に取り組む意義は大きいと考えています」

 もともとスポーツと医療の融合領域の教育・研究に力を入れる新潟医療福祉大学では、2016年にアスリートサポート研究センターを設立。スポーツドクター、理学療法士、管理栄養士などが連携するマルチサポート体制を構築して女性アスリートを支援している。もちろん、江玉教授も主要メンバーのひとりだ。

 まず、学内の運動部に所属する女性アスリートの検診からスタートし、栄養、睡眠、貧血、骨密度、月経周期など、さまざまな項目を調査。問題を抱えるアスリートには、治療のアドバイスや栄養指導を行った。さらに調査で取得したデータを分析すると女性アスリートは月経周期によって、関節や認知機能のコンディションに変化が出ることがわかり、その周期に合わせたトレーニング手法なども見えてきた。

「現在は、事業創造大学院大学の杉本等教授と共同で、女性アスリートに特化した自己管理ツールを開発しています。スマホなどで、選手個人が自身のデータを管理でき、アラート機能やチャットツールによる相談機能なども活用できます。これにより、心身の問題を早期発見・早期治療することが可能になると期待しています」

新潟医療福祉大学における女子アスリート医科学支援体制

北信越エリア全体で女性アスリートを
支援する枠組みを構築したい!

アキレス腱の「ねじれ構造」に着目
スポーツ障害の予防策を考案する

 スポーツ理学療法学を専門とする江玉教授は、もともとアキレス腱炎に代表される「腱」に端を発する慢性スポーツ障害の発生要因について研究してきた。特に、アキレス腱の研究において、特有のねじれ構造を明らかにし、スポーツ障害の予防方法の開発などにつなげてきた。

「解剖実験などから得られた分析で、アキレス腱のねじれ構造には軽度・中等度・重度の3タイプがあることがわかりました。腱の硬さなど、さまざまな力学的特性を調べたところ、軽度・重度のねじれでは障害が発生しやすく、中等度のねじれでは、どの方向に動かしてもストレスがかかりにくい構造がわかりました」

 腱のタイプは、中等度が約7割、軽度が2割、重度が約1割。そこで、電気刺激やトレーニングによって、腱のねじれを中等度に近づける予防策が明らかになった。これはバイオメカニクス、発生学など幅広い知見を集約させた新潟医療福祉大学らしい研究だといえる。

データに基づく研究によって
本当の解決策が見つかる

 江玉教授は、学生時代、サッカー選手として県選抜選手に選出。そこで、競技経験をアスリートのサポートに活かせないかと考えた。

「プロアスリートでも、最高のパフォーマンスを出すためのコンディションづくりは、非常に難しいものです。天才はこれを勘でこなしてしまいますが、長続きはしません。そこで、データに基づくトレーニングやケガの予防策を考案することで、本当の解決策が見つかる。ここにスポーツ医科学研究の面白さを感じます」

 担当する「スポーツ医科学ラボ」には、現在約50名の学生が所属し、学内のアスリート支援を通じて、幅広い研究に取り組んでいる。2023年には、「産官学連携による女性アスリートの医科学支援拠点」の形成を目指す新たなプロジェクトもスタートした。

「目標は学内や新潟県の枠を超え、北信越エリア全体で女性アスリートを支援する体制づくりです。行政や医療機関とも連携して、スポーツ医科学の新たな可能性を追究していきます」

アスリートサポート研究センターの活動を通して、「メディカルサポート部」に所属する学生の指導も行っている

研究室には、超音波画像診断装置、バイオデックス(筋力測定器)、フットスキャン(足の3D形状を見る装置)など、さまざまな機器がそろっている

アキレス腱と膝蓋腱の比較。アキレス腱がねじれていることがわかる。人体でこうしたねじれ構造があるのは、アキレス腱だけである

新潟医療福祉大学

看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITの総合大学

新潟医療福祉大学は、全国でも数少ない看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部15学科を有する医療系総合大学です。そのメリットを最大限に活かし、学部・学科の枠を越えて学ぶ「連携教育」を導入。将来、「チーム医療」「チームケア」の一員として活躍できる人材を育成します。

優れたQOLサポーターを育成

本学では、「優れたQOLサポーターを育成する大学」を基本理念にしています。その実現のために、「科学的知識と技術を活用する力」「チームワークとリーダーシップ」「対象者を支援する力」「問題を解決する力」「自己実現意欲」の5つの資質を高める教育を展開しています。

学部学科

■リハビリテーション学部:理学療法学科/作業療法学科/言語聴覚学科/義肢装具自立支援学科/鍼灸健康学科 ■医療技術学部:臨床技術学科/視機能科学科/救急救命学科/診療放射線学科 ■健康科学部:健康栄養学科/健康スポーツ学科 ■看護学部:看護学科 ■心理・福祉学部:社会福祉学科/心理健康学科(仮称)[2024年4月、学科設置認可申請中] ■医療経営管理学部:医療情報管理学科
※既存の社会福祉学部内に心理健康学科の設置を認可申請したうえで、正式認可後、心理・福祉学部(仮称)への学部名称の変更を予定しています。

主な就職実績

国立がんセンター、東京大学医学部附属病院、横浜市立大学附属病院、北里大学病院、昭和大学病院、日本大学医学部附属板橋病院、順天堂医院、新潟大学医歯学総合病院、新潟県立中央病院、あおやまメディカル、日本赤十字社長岡赤十字病院、新潟市民病院、信楽園病院、新潟県厚生農業協同組合連合会、メディカルセンター悠遊健康村病院、東北大学病院、つくばセントラル病院、信州大学医学部附属病院、長野厚生連北信総合病院、金沢大学附属病院、日本大学医学部附属板橋病院 日清医療食品、サトウ食品工業、ブルボン、ヘルシーフード、クスリのアオキ、ウエルシア薬局、日本義手足製造、富山県義肢製作所、セントラルスポーツ、井上眼科病院、その他学校教員、各市・町職員、各県警察本部、各消防局・本部、陸・海・空自衛隊 ほか

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