Professor

清水雄輝

神奈川大学

工学部 応用物理学科 教授
宇宙・素粒子実験

高エネルギーの粒子が衝突すると発光する素材

「暗黒物質」の探索という
宇宙物理最大の課題に挑む

宇宙のルーツを知る鍵になる
「暗黒物質」の正体とは──

 この世には、人類がまだ発見できていない物質が大量に存在している。その正体を掴むことができれば、はるか138億年前の宇宙の成り立ちを知ることができるかもしれない。宇宙の真理に迫る手がかりとなるこの正体不明の物質を科学者は「暗黒物質(ダークマター)」と呼んだ。

「皆さんがよく知る原子や分子といった目に見える(観測できる)物質は、宇宙全体の成分の約5%に過ぎません。そして、その約5倍もの質量の暗黒物質が宇宙を占めているとわかっています。そのため、この暗黒物質の性質を明らかにすることができれば、宇宙の成り立ちや進化の歴史を紐解く鍵になる。私はこの暗黒物質の観測に挑む研究者のひとりです」

 そう微笑みながら語るのは、神奈川大学工学部応用物理学科の清水雄輝教授だ。神奈川大学着任前はJAXA(宇宙航空研究開発機構)に所属し、研究員として暗黒物質を観測する装置の開発に携わってきた。その観測技術を紹介する前に、まずは暗黒物質についての知識をもう少し深めたい。そもそも、見えないのに「存在している」と言い切れるのはなぜなのか?

「銀河の形成や宇宙全体の構造は、ニュートンが提唱した万有引力が重要な役割を果たしています。元来、宇宙が誕生した直後にはガスのようなものしか存在しませんでしたが、それらの物質が互いに引き合うことで星を形成し、星が引き合うことで銀河を形成しました。そしてこの引力は、物質の質量によって決まります。しかし、目に見える物質の質量を調べても、宇宙全体として必要な質量には及ばない。この宇宙空間には、宇宙を成り立たせる目に見えない物質(=暗黒物質)が存在していないとおかしいのです」

宇宙ステーションや成層圏気球による
国際共同実験に参加し、粒子・反粒子を観測

国際宇宙ステーションに搭載した
観測装置で暗黒物質発見に迫る

 さまざまな証拠から宇宙創成のメカニズムを辿る重要な存在であることは明らかだが、質量を持っていること以外はほとんどわからない。それが暗黒物質だ。宇宙の観測に利用されることが多い光やX線といった電磁波では観測できないため“暗黒”という呼称がついているが、清水教授はその未知の存在を観測するために素粒子の性質に狙いを定めている。

「粒子には質量などの性質は同じで電荷が正反対である“反粒子”が存在します。粒子と反粒子は衝突すると対消滅し、すべての質量はエネルギーに変換される。これが通常なのですが、暗黒物質は少し特殊な素粒子で、一個体のなかで粒子と反粒子の両方の側面を持つ可能性があります。そして、暗黒物質同士が衝突すると、対消滅して別の粒子や反粒子が生み出されることが考えられています。暗黒物質自体の観測は困難ですが、対消滅したあとに生み出された粒子や反粒子であれば観測できるのではないか、というのが観測装置開発の出発点です」

 国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟には、清水教授が開発に携わった観測装置「CALET」が設置されている。仕組みとしては、高い運動エネルギーを持つ粒子が衝突すると発光する素材を用い、宇宙から飛んできた粒子の特性を捉える。エネルギーを精密に測定することで、もともとの暗黒物質の質量を解明する手がかりになる。

一から観測装置をつくり
実験やデータ解析に取り組む

「現在は、また別の観測方法として『GAPS計画』にも参加しています。これは、JAXAなど日米伊の研究者が協力し宇宙空間を飛び交う粒子の中にわずかに含まれている反粒子を探索することをめざした、南極成層圏気球による国際共同実験です。暗黒物質同士の対消滅によって生まれた反粒子に焦点を当て、その特性を見極めることで暗黒物質発見に迫ります」

 幼少期から宇宙や人間が誕生した過程に興味を持ち、それらを構成する最も根本的な要素である素粒子を深く学びたいと思い物理の道へ進んだ清水教授。そして大学で、暗黒物質という、研究人生を賭ける課題に出会った。

「暗黒物質の痕跡を辿る研究は、どこか謎解きのような面白さがあるんです。さらにこの研究室が特殊なのは、実験やデータ解析だけでなく、観測装置をつくるところから始めること。学生たちも積極的にものづくりからコンピュータシミュレーションまで幅広い研究に挑戦しています。自分たちで一から新しい装置をつくって観測を行い機械学習などを使ったデータ解析にも取り組みながら、暗黒物質の発見に近づけたらと思います」

国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟に設置された観測装置「CALET」。JAXA有人宇宙ミッション本部(現・有人宇宙技術部門)在籍時に開発に携わったもの

暗黒物質は宇宙全体の成分の27%を占める

NASA(アメリカ航空宇宙局)の南極成層圏気球に観測装置を搭載し、反粒子を探索することをめざした「GAPS計画」

神奈川大学

文系3学部と理工系5学部が集結する横浜キャンパス

文理11学部が横浜エリアに集結。進化を続ける学修環境

神奈川大学は、文系・理工系11学部を擁し、全国から学生が集う横浜の総合大学です。2021年4月、みなとみらいキャンパスを開設。2023年4月には、理学部と工学部を改編し、横浜キャンパスに化学生命学部と情報学部を新設しました。これにより、文・理11学部すべてが横浜エリアに集結。最先端の装置が揃う研究棟やコンピュータ演習室、蔵書数150万冊以上の図書館をはじめ、快適な学修環境が整っています。

充実の給費生・奨学金制度

2024年度試験においては12月17日(日)に全国22会場で試験を実施する「給費生制度」(採用者には4年間で最大880万円給付)をはじめ、入学前に経済的支援を約束する「神奈川大学予約型奨学金」などの大学独自の給付型奨学金制度が充実。さらに、少人数教育や入学直後から始まるキャリア教育などで、一人ひとりの成長を全力でサポート。詳細は大学公式サイトをご確認ください。

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※2023年4月開設

主な就職実績(2022年3月卒業生実績)

厚生労働省、東京国税局、国土交通省、独立行政法人国立印刷局、神奈川県庁、神奈川県教育委員会、横浜市役所、横浜市教育委員会、特別区人事委員会、警視庁、東京消防庁、神奈川県警察本部、東日本旅客鉄道、京浜急行電鉄、みずほ証券、横浜銀行、清水建設、竹中工務店、大和ハウス工業、パナソニック、キヤノン、マツダ、スズキ、SUBARU ほか

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