髙木直史
金沢学院大学
情報工学部 情報工学科 教授
コンピュータ工学
金沢学院大学
情報工学部 情報工学科 教授
コンピュータ工学
情報社会が今よりもさらに発達した、2050年の未来を想像してみよう。自動運転の空飛ぶクルマが移動手段となったり、脳波を読み取ってテレパシーのように会話ができたり、衣服のようにロボットを装着することで動きを補助してくれたり、そんな夢のような現実が訪れるかもしれない。その社会では果たして、いま話題の生成AIやデータサイエンスをそのまま駆使する技術者は活躍できるだろうか。答えはNOだろう。いつの世も、“最先端技術”は次々と更新されてきたからだ。
「ChatGPTが登場して注目を集めるようになったのは2022年11月。そう考えると、5年後10年後に我々が予想だにしない最先端技術がスタンダードになっている可能性は大いにあるでしょう。しかしそうした技術は、コンピューターや情報処理の基礎技術、元を正せば数学や物理、統計といった普遍的な学問によって支えられています。こうした情報工学の土台を身につければ、進化に置いていかれない技術者になれるのです」
そう語るのは、1980年代からコンピュータ工学分野で活躍している髙木直史教授だ。これまで名古屋大学や京都大学で革新的な研究を生み出してきた知見をもとに、現在は2024年4月に開設された金沢学院大学情報工学部情報工学科で教えている。髙木教授が情報工学分野にもたらした成果のひとつに、「ハードウェアアルゴリズム」という領域がある。
コンピュータとはいわば精密な高速計算機である。そこでは誰もが知っている「+・-・×」といった計算が繰り返されている。髙木教授が学生の 頃はひとつのLSI(大規模集積回路)で高速な計算を行うことは難しかったという。そこで開発したのが、冗長2進表現という数値表現法を用いた新しいアルゴリズムだった。それはハードウェアアルゴリズムと呼ばれ、現代の情報社会を支える大規模なデジタル集積回路をはじめとして、コンピュータの性能向上に大きく貢献してきた。
「私が開発したアルゴリズムを実装した機器が研究当時の世界最速を記録したこともあり、演算回路や暗号技術に関連する高速処理の成果は、携帯電話などの多くの製品に活用されてきました。最先端技術はアップデートされ続けていますが、実はそれを支えるコンピュータの仕組みは1970年代から大きくは変わっていない。私の研究もコンピュータ工学の基盤の上に成り立ち、人の暮らしや社会を豊かにすることに貢献することができました」
ソフトウェア上での集積回路の駆動シミュレーション
髙木教授が学部長を務める情報工学部では、“学びの土台”を重視する考えをもとに1年次の導入から数学や物理の徹底した基礎固めが行われている。文系からの入学者もいるというが、入学前教育によって苦手分野を取りこぼさないようにしている。さらに情報工学全般の導入とプログラミング学習もスタートし、2年次以降は「コンピュータ工学コース」と「データサイエンスコース」に分かれて専門的な学びへと進んでいく。髙木教授は「情報技術を“使える”だけでなく、“多くの人が使えるようにする”人材を育てたい」と強調した。
「生成AIにしても、多くの人はその使い方がわかるはずです。ただ、この高性能な技術を企業の情報システムにどのように導入し、業務効率化や生産性の向上をめざせばいいかわかっている人は非常に少ない。こうしたIT人材は、2030年に日本で約79万人も不足すると言われているほど多くの企業にとって重大な課題なのです。さらに危惧すべきなのは、最先端技術の使い方を教える学校が多く、時代を経て活躍し続けられる基礎技術を理解している人材が多くは育っていないこと。本学はその課題に向き合い、真に社会で活躍し、人々の生活を豊かにすることができるIT人材の育成を目標に掲げています。コンピュータの技術は、人類が前に進むために欠かせないもの。ぜひ一緒に学んでいきましょう」
回路設計用のソフトウェア上で、CPUを設計する際のダイアグラム図。各パーツの動作をプログラミングで記述していく
制作した回路が意図した通りに稼働するかをシミュレートした後、ハードウェア(FPGA:論理回路の書き換えが可能な集積回路)に組み込んで動作を検証する。これは授業で学生に教えている内容で、実際の組み込みまで行うことで、技術への理解度がさらに深まる
AIやデータサイエンスといった最新鋭の情報技術の進歩に注目が集まる中、金沢学院大学では、初の理系学部となる情報工学部情報工学科を開設しました。近年増加する文理融合型の情報系学部とは異なり、注目される最新技術だけでなく、その土台となるハードウェア・ソフトウェアの基礎を深く理解する学びが特徴で、情報処理学会が推奨するコンピュータ科学、コンピュータ工学、データサイエンスの3つのカリキュラム標準に準じて科目を構成しています。
1年次で数学や物理、コンピュータ科学の基礎を身につけた後、2年次のコース選択では「コンピュータ工学コース」と「データサイエンスコース」の2コースを設置。コンピュータ工学コースでは、組込み制御系や情報ネットワークの設計・開発、運用を担う人材を育成し、データサイエンスコースではビッグデータの収集・分析やAI技術を深く理解していきます。教員陣には、日本の情報分野の進化を支えてきた研究者である学部長の髙木直史教授をはじめ、最先端分野の研究と教育を行ってきた最高水準の教育者が集結。あらゆる業界・業種でニーズが高まるデジタル人材をめざすだけでなく、高校「情報」と中学・高校「数学」の教員免許の取得も可能です。
■情報工学部:情報工学科(コンピュータ工学コース、データサイエンスコース) ■経済学部:経済学科(理論・政策分析専攻、現代経済専攻、経済情報専攻)/経営学科(戦略・マーケティング専攻、アントレプレナーシップ専攻、簿記会計専攻) ■文学部:文学科(日本文学専攻、英米文学専攻、歴史学・考古学専攻、心理学専攻) ■教育学部:教育学科(小学校・中学校教諭専攻、幼稚園教諭・保育士専攻) ■芸術学部:芸術学科(絵画専攻、造形専攻、ビジュアルデザイン専攻、デザイン工学専攻、映像メディア専攻) ■栄養学部:栄養学科 ■スポーツ科学部:スポーツ科学科(アスリート・指導員養成専攻、体育教員養成専攻、公安・公務員養成専攻、スポーツビジネス専攻)
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