Professor

西原 康行

新潟医療福祉大学

健康科学部 健康スポーツ学科 教授
VR/アイトラッキング

VR・アイトラッカー

熟達者の「暗黙知」をVRで
顕在化してノービスの学びを促す

あうんの呼吸、勘、経験則などは
言葉ではなかなか伝えにくい

「人は語ること以上に多くの力を備えている」。ハンガリーの科学哲学者「M・ポランニー」の言葉である。その「多くの力」を研究ターゲットにしているのが西原康行教授だ。

「知は、言葉や本などから得られる『形式知』と、あうんの呼吸、勘、経験則などの『暗黙知』に分かれます。特にスポーツの世界では、読売ジャイアンツの長嶋茂雄元監督のように、言葉では伝えにくい暗黙知を有する熟達者がたくさんいます。私がそこに着目したのは、著書『野球職人の魂』執筆に際して、イチロー選手、松井秀喜選手らのバットづくりを手がけた久保田五十一氏のもとで修行した経験からです。プロ野球選手との交流を通して、バットの持ち方などは、言葉にできない、きわめて感覚的なものだと感じたのです。そうした暗黙知を顕在化することによって、ノービス(初心者、学生)の学びを促そうというのが、私の研究です」

 暗黙知を顕在化するために、西原教授が取り入れたのが、VR(バーチャル・リアリティー)のアイトラッキング機能の活用である。

「サッカーの中田英寿選手は、後ろに目があるといわれていました。実際には、瞬時に後ろを見ているのですが、彼がいつ、どこを見たのか、VRで視覚映像として捉えることで、暗黙知の一端に触れられると考えました」

「SHAINプロジェクト」の全体構成図

リハビリテーション科学と
スポーツ科学の融合を図る

「コーチデベロッパー」として
研究成果をコーチ育成に活用

 西原教授は、日本スポーツ協会から「コーチデベロッパー」に任命されており、研究成果を新人コーチの育成にも活用している。

「VRのアイトラッキング機能では目線を追うことが可能です。ベテラン監督と新人コーチの目線を比較すると、大幅に異なることに驚かされます。新人コーチはボールを持っている選手を追いかけますが、ベテラン監督は全体を俯瞰しており、ボールが動いていないところにも目を向けています。後で映像を確認することで、新人コーチの視野を広げる教育プログラムとして使えると考えています」

 また、同大学の野球部の選手を対象にした研究も進行中だ。これまでBチームの選手がAチームに昇格しても、成績を残せないケースが見られた。そこで西原教授は、普段から監督と接する機会が少ないため、あうんの呼吸のような暗黙知を理解できないことが一因であると仮定して研究。改善策として、昇格直前の選手にAチームの試合時のベンチ映像をVRで見せた。その結果、監督の声や試合会場の雰囲気をリアルに体験できることが功を奏し、スムーズに実力を発揮できるようになっているという。

県民の健康寿命の延伸に
貢献する「SHAINプロジェクト」

 2017年度から新潟医療福祉大学は、文部科学省「私立大学研究ブランディング事業」の「タイプA(社会展開型)」に採択された「SHAIN(Sports & Health for All in Niigata)プロジェクト」に取り組んでいる。これは、地域住民からアスリートまですべての人が安全にスポーツを楽しみ、幸せな生涯を過ごす新潟県の創出を目指すプロジェクトで、西原教授は研究推進統括委員長を務めている。

「リハビリテーション科学とスポーツ科学の融合による先端的研究拠点の構築を目指しています。6学部13学科を擁する保健・医療・福祉・スポーツの総合大学の強みを生かして、学科の枠を越えた多彩なコラボレーションが展開されています。新潟県民の健康寿命の延伸に貢献することが目標ですから、研究成果は地域社会に還元することが重要です。すでに自治体などと連携して、地域のスポーツ選手のサポート、高齢者対象の転倒予防・栄養指導、言語障害者のコミュニケーション指導などを実施しています」

 学外に開かれた研究体制によって、地域社会の実態を踏まえた新たな課題が見つかることも多く、それを大学に持ち帰って研究を進め、エビデンス(根拠)を明確にして、再び地域社会に還元するという「問題提起と成果還元」の研究サイクルが構築されている。

バスケットボールの試合の目線。赤い点が目を向けられた場所。熟達者ほど全体を見通す力に優れていることが分かる

熟達者の視点(ブルー)と、初心者の視点(オレンジ)を比較した図。横軸は時間。かなり大きな違いがあることが見てとれる

大学野球監督の試合時の仮想空間映像の再現認知

新潟医療福祉大学

看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITの総合大学

新潟医療福祉大学は、全国でも数少ない看護・医療・リハビリ・栄養・スポーツ・福祉・医療ITを学ぶ6学部13学科を有する総合大学です。そのメリットを最大限に活かし、学部・学科の枠を越えて学ぶ「連携教育」を導入。将来、「チーム医療」「チームケア」の一員として活躍できる人材を育成します。

優れたQOLサポーターを育成

本学では、「優れたQOLサポーターを育成する大学」を基本理念にしています。その実現のために、「科学的知識と技術を活用する力」「チームワークとリーダーシップ」「対象者を支援する力」「問題を解決する力」「自己実現意欲」の5つの資質を高める教育を展開しています。

学部学科

■ リハビリテーション学部:理学療法学科/作業療法学科/言語聴覚学科/義肢装具自立支援学科 ■ 医療技術学部:臨床技術学科/視機能科学科/救急救命学科/診療放射線学科 ■ 健康科学部:健康栄養学科/健康スポーツ学科 ■ 看護学部:看護学科 ■ 社会福祉学部:社会福祉学科 ■ 医療経営管理学部:医療情報管理学科

主な就職実績

国立がんセンター、北里大学病院、昭和大学病院、日本大学医学部附属板橋病院、順天堂医院、新潟大学医歯学総合病院、新潟県立中央病院、あおやまメディカル、ケアベアーズ、さくらメディカル、日本赤十字社長岡赤十字病院、新潟市民病院、信楽園病院、新潟県厚生農業協同組合連合会、メディカルセンター悠遊健康村病院、東北大学病院、つくばセントラル病院、信州大学医学部附属病院、長野厚生連北信総合病院、金沢大学附属病院、日本大学医学部附属板橋病院 日清医療食品、サトウ食品工業、ブルボン、ヘルシーフード、クスリのアオキ、ウエルシア薬局、日本義手足製造、富山県義肢製作所、セントラルスポーツ、井上眼科病院、その他学校教員、各市・町職員、各県警察本部、各消防局・本部、陸・海・空自衛隊 ほか

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