Professor

三枝 亮

神奈川工科大学

創造工学部 ロボット・メカトロニクス学科 准教授
人間機械共生工学/認知発達システム

量産型モデルくるみ

人間とロボットの共生関係から
この世界の次のステージを読み解く

介護医療支援ロボット
くるみの製品化が決定

「人間は道具をつくり出すことで、知的に進化してきました。そして今、人間がつくった道具に知能が載る時代が到来しました。意思を持った道具を生活に取り込むことで、人間は次のステージに進めるでしょう」

 そう語るのは、神奈川工科大学創造工学部ロボット・メカトロニクス学科の三枝亮准教授だ。研究テーマは「人間と機械の共生」。人間の生活の中にロボットや人工知能が急速に入り込んできた現在、こうした人工的な道具と人間のよりよい共生関係のあり方を追究する取り組みは不可欠のものだろう。

 具体的な研究テーマとしては、①介護医療支援ロボティクス、②身体拡張インターフェースなどが挙げられる。①で取り組んでいるのが、介護医療コンシェルジュロボットLucia(ルチア)の開発だ。研究室にある試作モデルでは、「人応対機能」「見回り機能」「遠隔操作機能」「バイタル運動計測機能」といった介護、医療の現場で働く人たちの負担を軽減するための多彩な機能を搭載している。

「Luciaには、実にさまざまなバイタル計測装置が搭載されています。内蔵アームにはセンサーが搭載されていて、障がい者や高齢者の方がアームの部分を握るだけで、脈拍や血圧といったバイタル情報を測定できます。ほかにもカメラを使った画像認識機能があり、介護施設内を自動巡回しながら、機械学習で顔認識した患者の体温をサーモカメラで測定し、異常があれば、データを職員に送信したりすることもできます」

 Luciaの重要な機能のひとつに「リハビリ支援機能」がある。これは視覚的・聴覚的な刺激で歩行をアシストするもので、高齢者やパーキンソン病患者の利用が期待されている。こうした多彩な機能は、医療現場からの評価も高く、Luciaの巡回見守り機能のみを搭載した量産型モデルくるみは、近々製品化される見通しだという。

 ②の身体拡張インターフェースの研究もリハビリの現場で応用されている。一例として紹介してくれた手指インターフェースMano(マーノ)は、手指の曲げ伸ばしができない人のためのリハビリ装置だという。

「例えば、右手の指が動かない人のリハビリをする場合、右手の動きを人工知能に学習させ、そのデータを左手に装着したManoに送ります。これは鏡像的な運動再現によるリハビリ支援の手法で、患者さんは右手の動きを見ることで脳の運動野の特定分野が活性化され、さらにManoの物理的な刺激によって、指の動きを知覚することができるのです」

右手の指の動きを模倣したデータを、左手のインターフェースに転送する鏡像的な手指リハビリシステム。「運動転写」と呼ばれる手法で、少ない駆動源ながら多様な手指パターンを再現している

人間がつくり出した知性体は
人類を新たな地平に導くのか!?

物理学から機械学習へ
最終的にロボット開発に至る

 もともとの専門は物理学だった。ここでこの世界の現象や法則を数式で表す「モデリング」という手法を身につけ、これを情報工学の分野で応用できないかと考え、大学時代は機械学習の研究室に所属した。そこで、機械学習の技術を用いて、人工知能をつくろうと考えたのだが、人間特有の知能は身体がないとつくれないという壁にぶつかる。人工知能に身体性を与えるにはどうすればいいか—。そう考え、最終的に現在のロボットの研究にたどり着いた。

「機械学習を用いて、人間の動作を模倣できるロボットを開発し、身体性を用いた模倣によって、ロボット自体の知能も発達することが証明できました。そして今、私は次のステップとして、ロボットの支援によって、人間が学ぶ仕組みづくりに取り組んでいます。その格好のテーマがリハビリだったのです」

 最近、人間が担う半数以上の仕事が、人工知能やロボットに代替されるといった話をよく耳にする。しかし、三枝准教授がこだわるのは、あくまでも「人間と機械の共生」だ。

「私の興味はロボットがいることで、人間がどう変わるかという点にあります。この人間から派生した知性体と人間が調和できるとサルからヒトに進化したように、知的ステージは次の段階へ進む可能性があります。そのヒントをこの共生関係の実験の中から読み解きたいと思っています」

介護医療コンシェルジュロボットLuciaを囲みながら学生たちとディスカッション。研究室は女性メンバーも多い

口腔インターフェースOrale(オラーレ/左)と手指インターフェースMano(マーノ/右)。口腔インターフェースはALS(筋萎縮性側索硬化症)患者などの利用が期待される

研究室には介助ベッドや車イスがあり、介護医療現場を想定したデモンストレーションが可能だ

神奈川工科大学

社会で必要な力を効率よく養うPBL教育

神奈川工科大学の教育の特徴は、さまざまな能力の育成に力を入れ実践していることです。具体的には、PBL(Project-Based Learning)教育を早くから取り入れ、社会で活躍する上で必要となる能力をより効果的に身につけることができる「ユニットプログラム」を実施。従来の1科目の時間の2~4倍を充てています。

自信をつける教育で「考え、行動する人材」を育成

開学以来重視している卒業研究によって、身につけてきた能力に磨きをかけることで、「このように考えることができるようになった」、あるいは「このように対応することができるようになった」と皆さんも実感できることでしょう。神奈川工科大学は、学生が社会で活躍する人材に成長していくことをめざします。

学部学科

■ 工学部:機械工学科(機械工学コース/航空宇宙学コース)/電気電子情報工学科/応用化学科  ■ 創造工学部:自動車システム開発工学科/ロボット・メカトロニクス学科/ホームエレクトロニクス開発学科  ■ 応用バイオ科学部:応用バイオ科学科(応用バイオコース/生命科学コース) ■ 情報学部:情報工学科/情報ネットワーク・コミュニケーション学科/情報メディア学科 ■ 健康医療科学部:看護学科/管理栄養学科/臨床工学科

主な就職実績(過去5年間)

厚木市立病院、アルファシステムズ、NSD、海老名総合病院、小田急電鉄、鹿島建設、カプコン、関電工、協和エクシオ、シャープ、ソフトバンク、中外製薬、東海旅客鉄道、東芝、東芝プラント、東プレ、日産自動車、日本製粉、バンダイナムコスタジオ、東日本旅客鉄道、ファンケルグループ、富士通、ホーチキ、本田技研工業、マツダ、森永乳業、ヤフー ほか(2020年3月卒)

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