Professor

中西 昭仁

東京工科大学

応用生物学部 応用生物学科 助教
応用微生物学/遺伝子工学

次世代細胞プラスチックスの
循環型モデルを世界に発信する

緑藻の細胞壁を原料にして
プラスチックスを作製する

 2020年に入り、有名コーヒーチェーンなどが続々と紙ストローの使用を始めた。背景にあるのはもちろん環境問題だ。廃棄されたプラスチックスは海洋汚染を深刻化させている。さらに、これらのプラスチック製品が有限な資源である石油を原料としていること、製造・廃棄時に大量のCO2を排出することも問題視されている。私たちは地球のために何ができるのだろうか。そんな問いに正面から向き合っているのが、東京工科大学応用生物学部応用生物学科の中西昭仁助教だ。

「循環型の次世代細胞プラスチックスの研究・開発に取り組んでいます。これは微生物の細胞からつくられ、利用後は自然分解される環境にやさしいプラスチックスです。原料はクラミドモナスと呼ばれる緑藻。ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)と同様の強度を実現し、実用化に向けて試行錯誤を続けています」

 石油化学製品の代名詞であるプラスチックスを微生物からつくるというユニークな研究は以前からあった。しかし、中西先生の研究チームのアプローチは、既存の研究とは少々異なるという。従来は微生物の細胞内でつくられた物質を用いてプラスチックスをつくるのがメインだったが、中西先生が着目したのは緑藻の細胞壁の部分。細胞の内側ではなく、外側だったのだ。

「細胞の中身を利用しようとする研究者にとって、硬い細胞壁は悩みの種でした。それならば、発想を転換して、硬い細胞壁をそのまま活かせないかと考えました。緑藻は単細胞生物なので、プラスチックスとして加工するには、細胞同士の“つなぎ”が必要になります。そこで私たちは、はじめのステップとして、緑藻の細胞壁を基盤に細胞シートを作製、膜状の有機物質を補強材として重ね合わせた構造の細胞プラスチックスを作製しました。次のステップとして、重ね合わせの細胞プラスチックスよりも作製が簡便で強度も高い、生分解性の有機化合物を補強材とする細胞プラスチックスもすでに作製しています」

 この補強材は、同大学工学部応用化学科の入谷康平先生の研究室と共同開発したもの。このような学内での研究コラボレーションも盛んに行われているという。

 中西先生の研究は、生物由来のプラスチックス開発に留まらない。この次世代型材料を日本全国でつくり出せるようにするための生産システムの構想にも取り組んでいる。目指すは、細胞プラスチックスの“地産地消”だ。

「これからの研究者は、独自性の高い技術を開発するだけでなく、それを社会実装するところまで考えるべきだと思っています。私たちが開発する細胞プラスチックスの原料である緑藻の細胞はコンパクトな設備でも培養可能です。そこで、地域ごとに必要なだけ細胞プラスチックスを生産し、無駄なく利用していくサイクルをつくりたいのです。また、緑藻の細胞はプラスチックスとして加工する際、CO2を必要とするという特性もあります。各地域の化学プラントの隣に細胞プラスチックスの生産拠点をつくれば、CO2排出の削減に役立つ可能性もあります。私は細胞プラスチックスの環境循環型モデルを2050年までに確立したいと考えています」

 中西先生の熱意と確かなビジョンは学外でも高い評価を受け、この研究はNEDO※1の「未踏チャレンジ2050※2」に採択された。これは持続可能な社会の実現に貢献する取り組みとして、注目されている証拠だろう。

生成する際にCO2を消費し、材料として利用後に自然分解される循環型モデルの構築をめざす

バイオニクスと有機化学を融合させ
持続可能な社会の構築に貢献する

技術があれば世界中の研究者と
コラボレーションができる

 そんな中西先生にとっての研究のモチベーションは、自らの技術を通じて、学内や国内はもちろん、世界中の研究者とコラボレーションができること。日々の実験から新たな研究テーマが生まれ、協力者のネットワークがどんどん広がっていくのが大きなやりがいになっている。

「私の夢は細胞プラスチックスの環境循環型モデルを確立し、日本全国はもちろん海外の人々にも利用してもらうことです。世界を席巻するようなMade in Japanの新たな技術が、バイオニクスと有機化学の融合領域から生まれるかもしれません!」

※1 正式名称は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
※2 2050年を見据えたCO2の排出削減に貢献する優れた研究提案に対して研究委託や助成を行う事業

積層化して作製された細胞プラスチックスの断面を示す透過型電子顕微鏡(TEM)像。丸く見える構造体は緑藻細胞、濃く描画されている部分は二次元ポリマー。細胞をまとめシート状とした後に二次元ポリマーで補強していることがわかる

細胞プラスチックスの補強材の候補を検討する実験中。生物学研究では、さまざまな化合物を扱う

生物学研究で用いる本格的な分析機器の数々。左はHPLC(高速液体クロマトグラフ)、右はGC(ガスクロマトグラフ)と呼ばれる装置

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※ 2021年4月新設

主な就職実績

SUBARU、NTTドコモ、東日本電信電話、セガホールディングス、富士通、富士電機、資生堂、佐藤製薬、スリーボンド、太平洋セメント、東京地下鉄、リコージャパン、関電工、ヤマハ発動機、JVCケンウッド、アルビオン、キユーピー、紀文食品、ミルボン、住友ゴム工業、シーボン、東計電算、綜合警備保障、EP綜合、ビー・エム・エル、江東微生物研究所、明治安田生命保険、マイナビ、良品計画、コクヨ、あとらす二十一、タカラレーベン、日立ソリューションズ・クリエイト ほか(2020年3月卒業者実績)

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