Future Laboratory

マーケティング×AIの未来

株式会社博報堂コマースデザイン事業ユニット CXクリエイティブ局
クリエイティブディレクター/クリエイティブテクノロジスト

栗田昌平さん

トップランナーに聞く!
マーケティング×AIの未来

「バーチャル生活者」の仕組み

自社の消費者調査データベースと生成AI技術をかけ合わせて、7000タイプのバーチャル生活者を生成。特定のペルソナ(顧客像)を対象にしたグループインタビューなどをデジタル空間でリアルに再現できる。

生成AIを活用した
「バーチャル生活者」との対話から
新たな商品・サービスの可能性を探る!

AIで限りなくリアルに近い
“バーチャル人間”をつくる

 ChatGPTをはじめとする生成AIを高校生も当たり前に使う現代、デジタルマーケティングの世界でも生成AIが活躍しているという。そもそもマーケティングとは、「顧客が求める価値を見つけ、そこに商品やサービスを届ける仕組み」のこと。ここに「デジタル」が加わると一般的にはWebやSNS、スマホアプリなどを使って、マーケティングを行うことを指す。

 大手広告会社・博報堂のCXクリエイティブ局に所属する栗田昌平さんは、マーケティングに用いる生成AIソリューション「バーチャル生活者」の開発を担当している。

「端的に言うと、AIで限りなくリアルな人間に近い“バーチャル人間”をつくり、その人たちに何度でも、いろんな角度から、無限にインタビューできるサービスです。目的はマーケティング。例えば、『この広告はどちらがいいか?』をバーチャル生活者に聞くといった使い方ができます。博報堂が持っている消費者調査データベースと生成AI技術をかけ合わせて、数百、数千タイプのバーチャル生活者を生成し、社内のさまざまなプロジェクトで活用しています」

 人と人の対話では、立場や関係性によって、気を遣ったり、ホンネを引き出しにくかったりすることがある。しかし、生成AIを活用すれば、適切なプロンプト(命令)を設計することで、忖度のないフラットな視点から生活者のホンネを引き出すことができる。

 バーチャル生活者は、見た目だけでなく、内面までリアリティを追求し、さまざまな個性や価値観を持たせている。多様なバーチャル生活者を数多く生成することで、顧客となる企業のブランドや商品に関する調査やインタビューをさまざまな角度から実施できるという。

「例えば、コンビニコスメの商品開発担当者が、普段あまり接点のない20代の若者向けコスメをプロデュースしたいと考えた場合、グループインタビューの対象となる20代女性社会人のペルソナ(顧客像)をAIが生成します。身長、体重、居住地、出身地、職種、ファッションの傾向、休日の過ごし方まで、消費者調査データベースをもとにリアルに再現してくれます。開発担当者は、そのバーチャル生活者に質問を繰り返しながら、商品やサービスのアイデアを練ることができるわけです」

 サービス開発者の栗田さんは、もともとメーカーのシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、博報堂に転職してから、購買データ分析やWebサイトのUX(ユーザーエキスペリエンス)デザインなどを担当するようになった。そして、現在は顧客企業のマーケティング支援やAI・データ活用のサポートなどを行っている。

「『バーチャル生活者』の開発においては、自身で生成AI向けのプロンプトを作成し、アルゴリズムの核になる部分の設計も担当する。アルゴリズムとは、システム開発の『手順』のようなもので、エンジニアとして積み上げた経験がここでも活かされている」

広告クリエイティブの領域で、
まだ誰も知らない体験を創造する

 広告・マーケティング業界でもAI活用はますます進んでいくだろう。こうしたクリエイティブ系の仕事におけるAI活用の未来を栗田さんはどのように見ているのだろうか。

「ChatGPTなどの生成AIの技術は日々進化していますが、私たちは技術そのものを開発すること以上に、そのAIを使って、皆さんがワクワクするような新しい体験をどうつくり出せるかを大切にしています。AIは業務効率化が得意ですが、そこは多くの企業が目指す領域です。むしろ広告会社は、クリエイティブの領域で、まだ誰も知らない体験をつくり出し、提供するべきではないかと考えています」

 博報堂には人を単なる消費者ではなく「生活者」として理解する「生活者発想」というフィロソフィーがある。そして、未来を構想し、生活者の新しいしあわせをデザインすることを目指しているという。

 栗田さんの今後の目標は、世界で通用するAIサービスやプロダクトをつくること。すでにアジア地域における「バーチャル生活者」の展開にも取り組んでいる。AIサービスは言語の壁を超え、世界中に広がる可能性を秘めている。

「『バーチャル生活者』が国境を越えて、さまざまな国々で活躍するようになれば、さらに多くの生活者データが集まり、グローバルな商品開発やマーケティングのチャンスも広がるだろう。これまでのAI活用やデータ分析の経験から、私はデータの面白さを常に感じています。データの中に、今まで気づかなかったインサイト(洞察)や人間の習性みたいなものが見えることがあります」

 そこから仮説を立てて、未来や社会がどうなるかを予測する。気候変動や紛争などが世界を覆い、先が読めない時代において、「未来を見立てること」は非常に重要だという。

「そのときに最も役立つのがデータです。ぜひ『データを見る目』を養ってほしいと思います」

‍株式会社博報堂とは?
‍広告・マーケティングからAI導入支援まで行う

日本を代表する総合広告会社。テレビCMやWebサイトの広告制作、マーケティング支援、イベント開催支援、コンテンツビジネス、ブランディングなど、業務は多岐にわたる。最近は、生成AIなど最新テクノロジーを用いて、クライアント企業の経営やサービス開発を支援する事業も行っている。

https://www.hakuhodo.co.jp/

栗田昌平さん
株式会社博報堂

コマースデザイン事業ユニット CXクリエイティブ局
クリエイティブディレクター/クリエイティブテクノロジスト