Professor

木森 義隆

福井工業大学

環境情報学部 経営情報学科 准教授
生物画像情報学

医療画像診断の世界に
イノベーションを起こす

新しい分野「バイオ・イメージ・
インフォマティックス」に挑む

 現代の医療において、レントゲン、CT、MRIなどの画像診断装置の活用は、病気の早期発見のために不可欠になっている。ただし、そこには課題もある。現状は、画像を見て判断を下すのは医師の目視に委ねられているが、人間の目は絶対ではなく、見落としてしまう可能性が皆無ではないからだ。この課題解決に取り組むのが木森義隆准教授である。

 木森准教授が研究者として最初に選んだテーマは、電子顕微鏡の画像解析。だが、研究を進めるなか、ある疑問を抱くようになる。

「画像解析の際には、どうしても観察者の主観が入ります。エキスパートが解析したのだから信頼できると思われるかもしれませんが、同じ画像を見ても、エキスパートによって解釈が異なるのです。それゆえに、もっと客観的な解析を目指すべきではないかという思いが強まっていきました」

 そこで木森准教授が着目したのが「バイオ・イメージ・インフォマティックス」。まだ比較的新しい研究分野で、「生物画像情報学」と訳される。機械学習などのAI技術と、画像処理技術を組み合わせ、生命現象の画像から特徴量を抽出、可視化して、客観的な解析につなげる研究分野だ。確かに、より客観的な画像解析ができれば、医療画像診断の世界にイノベーションを起こせるに違いない。

木森研究室の研究テーマ:形の情報処理による画像情報の定量化(上図では、画像情報の定量化の事例として、蛍光輝点(緑色の領域)を含む顕微鏡画像の解析過程を示している)

「病変領域」を自動的に強調する
画像処理技術を開発

数理形態学の理論を拡張し、
生物に対応した独自の理論を構築

 しかし、医学、生物学の画像解析には難しい課題もあったと、木森准教授は語る。

「画像処理の歴史は古く、工業製品の異物・傷・欠陥などの外観検査にも用いられてきました。しかし、工業製品は定形なので異常を抽出しやすいですが、生物は個体差が大きすぎるのです。また、細胞などを画像として取得する際、さまざまな実験の手順、手技があり、それによっても画像は異なります」

 この課題をクリアするため、木森准教授は画像解析の根本的な理論の再構築に挑んだ。

「ベースとして用いたのが、マセマティカル・モルフォロジー(数理形態学)です。もともとは、鉱物の顕微鏡写真で、どんな鉱物が何種類含まれているかを定量化する手法として使われました。鉱物よりも生物の方が形の情報が多様なので、数理形態学の理論を応用し、より拡張した理論を構築しました」

 そのオリジナルの理論に基づいて、木森准教授はさまざまな研究成果を上げている。

 生物学への応用では、以前勤務していた自然科学研究機構の基礎生物学研究所等との共同研究を実施している。

「シロイヌナズナ(代表的なモデル植物)の根毛細胞は、通常は細長い毛のような構造をとっていますが、ある遺伝子の突然変異体では、短く、波状に曲がるという表現型を示します。これは、細胞骨格であるアクチンフィラメントと呼ばれるタンパク質線維の異常であることが知られています。顕微鏡写真を比較することにより、正常なものと比べてどの程度形が異なっているのか、定量化する手法の確立に成功しています」

ガンが発生した部位を
検出する技術への進化を目指す

 医学への応用では、JSRT(日本放射線技術学会)が公開しているデータベースのレントゲン写真を用いて、肺の病変領域を、自動的にコントラストをつけて強調する画像診断技術を開発。これまでの技術は、病変だけでなく、肋骨などの周囲の組織まで強調されるのが一般的だったが、木森准教授の技術は、そこを抑えて病変領域だけが目立つようになっているところに特色がある。

「今後の目標は、どの部位にガンが発生しているのか、検出できる技術へと進化させることです。そのために、ディープラーニングなどのAIの専門家とのコラボレーションを進めていきたいと考えています」

 2019年4月、福井工業大学に誕生した「AI&IoTセンター」。AI、IoT、ビッグデータなどを活用した新たな価値の創造に取り組んでおり、木森准教授もメンバーの一人。今後、分野融合型の研究が進行していくはずだ。

シロイヌナズナの根毛細胞。上が正常な状態の細胞骨格で、下が遺伝子が変異した細胞骨格

マセマティカル・モルフォロジーに基づく画像処理手法による、病変領域の強調。上段:レントゲン写真の原画像。画像は、JSRT(日本放射線技術学会)のデータベースより取得した。病変領域の位置を矢印で示す。下段:病変領域の強調結果。本手法により、肋骨や心臓などの構造に重なりコントラストが低下している病変領域を強調し、視認性を高めることができた。

福井工業大学

「工科系総合大学」として広がる学びのフィールド

福井工業大学は、常に時代に合わせて、社会が求める大学像を追求し続けてきました。現在では「工業大学」の枠を超えて、3学部8学科を擁する「工科系総合大学」へと進化を遂げ、工学から環境情報、そしてスポーツ健康科学まで、学びのフィールドは多彩に広がっています。

福井工業大学、就職率99.8%のわけ(2020年3月卒業生実績)

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学部学科

■ 工学部:電気電子工学科/機械工学科/建築土木工学科/原子力技術応用工学科 ■ 環境情報学部:環境食品応用化学科/経営情報学科/デザイン学科 ■ スポーツ健康科学部:スポーツ健康科学科

主な就職実績

関西電力、中部電力、東京電力ホールディングス、北陸電力、きんでん、ピーエス三菱、竹中工務店、日本原子力発電、ドームユナイテッド、東日本旅客鉄道、ショーボンド建設、ダイダン、五洋建設、西松建設、鉄建建設、日成ビルド工業、飛島建設、北陸電話工事、大和ハウス工業、日本基礎技術、西日本旅客鉄道、NTT 西日本(西日本電信電話)、朝日印刷、インテック、前田工繊、富士古河E&C、大同工業、シャープ、三菱電機、東亞合成、日本製鉄、UACJ、太平洋工業、住友電装、日立造船、スズキ、サカイオーベックス、セーレン、アルビス、コメリ、ネクステージ、ゲンキー、愛媛銀行、福井銀行、大和冷機工業、クスリのアオキ、三谷産業、三協立山、三光合成 ほか

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