Professor

中井 直正

関西学院大学

理学部 物理・宇宙学科 教授
南極天文学

※2021年4月開設

南極にテラヘルツ望遠鏡を設置し
130億年以上前の銀河を観測する

「見えない銀河」を観測する
最適な場所が南極だった

「見えない銀河」を南極から観測する。その壮大な研究に取り組むのが、関西学院大学理学部物理・宇宙学科の中井直正教授だ。夜空に輝く美しい星々は、銀河の中でガスやチリが重力により凝集することで生まれる。つまり銀河は星の母体だ。私たちが暮らす地球は「天の川銀河」に属しており、宇宙全体では2兆個もの銀河が存在すると予測されている。

「しかしそのほとんどが地球からは見えません。普通の可視光で観測する望遠鏡では、理論的に見つかるはずの10分の1程しか見つかっていないのです」

 その「見えない銀河」を観測するのに最適な場所が、南極であると中井教授は言う。

「それは南極の大気に含まれる水蒸気の量が、地球上で最も少ないからです。南極に設置する予定の望遠鏡は、可視光ではなく宇宙から来る高い周波数の電波(テラヘルツ波)をアンテナで捉えることで銀河を観測します。水蒸気が多い場所では電波が吸収されてしまうため、極めて水蒸気量が少なく晴れの日が多い南極は、このテラヘルツ望遠鏡の設置場所として最も適しているのです」

星・惑星の母体である銀河の誕生を観測するのが、中井教授の目指す研究

「当たり前」を疑うところから
サイエンスの新しい発見が生まれる!

宇宙誕生後4〜8億年後に
何が起こったか明らかにする

 そもそもなぜ、遠い銀河を観測する必要があるのか。それは宇宙の誕生後およそ4~8億年後の間に何が起こったかを明らかにするためである。可視光では遠いところにある銀河ほど暗くなって見えなくなるが、電波(テラヘルツ波)ではあまり暗くならないという特殊な効果によって、非常に遠くにある銀河でも発見が容易なのだという。そして観測範囲が遠くなればなるほど「過去」の銀河の姿を観察できるようになる。

「テラヘルツ望遠鏡は、可視光の7~8倍の銀河を観測することができます。地球から130億年以上前の若い銀河を観測できるようになれば、銀河がいつ、どうやって生まれたかのヒントが得られ、ビッグバンから間もない宇宙の姿の解明にもつながるはずです」

かつての「常識」が
研究によってひっくり返る瞬間

 中井教授は15年以上前から南極天文台設置のために動いてきた。国立極地研究所が南極内陸部に設置を予定する「新ドームふじ」。そこにテラヘルツ望遠鏡を設置するための技術的な研究も進めている。

「雪と氷でできた南極大陸に天文台を設置するにはさまざまなハードルがあります。望遠鏡の重量は100トンにもなりますが、それを柔らかい雪原の上に固定しなければいけない。また天文台に設置する直径10mのアンテナが温度変化や重力によってわずかでも歪んでしまったら精度が出ないので、髪の毛の4分の1以下に歪みを抑える必要があります」

 それらの困難な技術的ハードルも10年以上に及ぶ研究で、乗り越えられる目処が立ったと中井教授は言う。研究室には南極天文台に設置するアンテナと同タイプの受信機があるが、それも学生たちと苦心しながら設計・組み立てを行ったものだ。

「南極天文学の実現のためには、宇宙や天体観測の知識はもちろんですが、南極に関する地学的な知識や望遠鏡設計のための工学知識など、多くの分野にまたがる幅広い学問が必要となります。学ぶのは大変ですが、その求められる知見の広さが面白さでもあります」

 「学問の世界で常識とされていることを鵜呑みにせずに、疑いなさい」と中井教授は学生たちに常日頃から指導している。それはこれまでも度々、かつての「常識」が新しい発見によってひっくり返されることが、サイエンスの世界では起こってきたからだ。

 例えば、中井教授はある学生とともに「万有引力を“変形して”計算すれば、存在すると考えられる星の量で銀河の回転が説明できる(暗黒物質は不要)」ことを示した。

「ニュートンに逆らうなんてありえない、と思う人もいるでしょうが、『当たり前』を疑うところから、新しい発見が生まれます。観測した事実を説明する仮説を、先入観を持たずに自由な発想で考えることが大切なんです」

南極10m級テラヘルツ望遠鏡の完成予想図。地図上(左下)の「新ドームふじ」に建設予定

中井教授が1995年に世界で初めて巨大ブラックホールの確証を得た銀河メシエ106(M106)。可視光の望遠鏡では観測できないこうしたブラックホールの解明にも取り組んでいる

2016年に、調査のため南極大陸のドームCというところにあるフランス・イタリアの共同観測基地・コンコルディア基地へ

関西学院大学

2021年4月、理系4学部を新設

緑豊かなKSC(神戸三田キャンパス)では理工学部と総合政策学部の学生が学びを深めてきました。2021年4月からはこの2学部を改組・発展させ、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の4学部を新設するとともに、総合政策学部は学術的、国際的な学びを拡充。これによりKSCは文・理5学部を擁する文理横断型のキャンパスに生まれ変わります。質の高い充実した教育・研究を実現し、社会にイノベーションを起こす拠点を目指します。

新しい学びの時間と空間を提供する“Camping Campus”

アウトドア総合メーカー「Snow Peak」と包括連携協定を締結。豊かな自然に恵まれたKSCに学生同士がテントを張って勉強やディスカッションを繰り広げたり、夜には焚火を囲みながら教職員も一緒になって語り合える新しい学びの場「Camping Campus」が誕生します。教室や施設利用時間といった既存の空間や時間の概念も、学生と教職員との垣根なども飛び越え、地域社会や企業を巻き込みながら、学生自身が率先して学びたくなる、固定概念にとらわれない新たな教育の場を創造します。

学部学科

■ 神学部 ■ 文学部:文化歴史学科/総合心理科学科/文学言語学科 ■ 社会学部:社会学科 ■ 法学部:法律学科/政治学科 ■ 経済学部 ■ 商学部 ■ 人間福祉学部:社会福祉学科/社会起業学科/人間科学科 ■ 国際学部:国際学科 ■ 教育学部:教育学科 ■ 総合政策学部:総合政策学科/メディア情報学科/都市政策学科/国際政策学科 ■ 理学部:数理科学科/物理・宇宙学科/化学科 ■ 工学部:物質工学課程/電気電子応用工学課程/情報工学課程/知能・機械工学課程 ■ 生命環境学部:生物科学科/生命医科学科/環境応用化学科 ■ 建築学部:建築学科
※ 2021年4月開設

主な就職実績(2019年3月卒業生実績)

トヨタ自動車、川崎重工業、ダイキン工業、富士通、日立製作所、日本電産、キヤノン、パナソニック、三菱電機、旭化成グループ、京セラ、伊藤忠商事、住友商事、三井物産、西日本電信電話、KDDI、楽天、サイバーエージェント、鹿島建設、大和ハウス工業、積水ハウス、全日本空輸、日本航空、ANA関西空港、東海旅客鉄道、日本通運、高島屋、良品計画、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、住友生命保険、日本生命保険、野村證券、大和証券グループ など

お問い合わせ先

〒662-8501 兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
広報室 TEL:0798-54-6017