Professor

竹本雅憲

成蹊大学

理工学部 システムデザイン学科 准教授
ヒューマンファクターズ/人間工学

人間の知覚・判断・行動を可視化し、
「交通事故ゼロ社会」を実現する

人間の行動特性や行動メカニズムを
分析する「ヒューマンファクターズ」

 自動車は現代の生活において、欠かせないツールだ。しかし、利便性を享受するためには、交通事故の危険がつきまとう。2018年の交通事故死者数は3,532人(警察庁調べ)。年々減少しているものの、まだまだ交通事故ゼロ社会の実現には多くのハードルがある。そんななか、交通事故ゼロをめざしてユニークなアプローチの研究に取り組む研究者がいる。成蹊大学理工学部システムデザイン学科の竹本雅憲准教授だ。専門は、「ヒューマンファクターズ」。人間の行動特性や行動メカニズムを調べて、モノやシステムのデザイン・設計に役立てるための研究を行っている。

「自動運転車が最近何かと話題ですが、私の研究対象は、こうした機械システム自体ではありません。むしろ興味があるのは、機械ではなく人間のほう。人間の認知や行動のしくみを詳しく調べて、安全運転をサポートするシステムの開発に役立てるためのデータを取得するのが目的です。ますます高度化する自動運転システムと機械としての自動車を『人間との親和性』という観点でつなぐ役割を担うものと言えるかもしれません」

自動車の運転を対象とした「ヒューマンファクターズ」の研究の全体像。知覚・判断・行動のサイクルをデータで可視化し、運転行動の質を高めるための機械設計を考える

身近な日常をデータとして可視化し、
問題解決の新たな方法を提示する!

模範となる運転行動との差異を
データで可視化して分析する

 竹本准教授の研究室に足を踏み入れると巨大モニターが連なるドライビングシミュレーターが出迎えてくれる。こうした実験装置を用いて、さまざまな運転状況をつくり出し、ドライバーの運転行動を数値化していく。

 現在行っている実験では、まず自動車教習所の指導員の協力を得て、模範となる運転行動のデータを取得。そのうえで、一般的なドライバー、事故を起こしたドライバーなどの行動データと比較して、そこにどのような差異があるのかを詳しく分析していく。

「自動車の運転は、目で見て、次に考えて、最後に操作するという流れで実行されます。そこで実験では、視線計測装置、ビデオカメラなどのセンサーを用いて、指導員が『何を見ているのか』『どう操作したのか』を調べ、実験後に『何を考えて操作したのか』をヒアリングします。これらを統合すると理想の運転行動が見えてきます。ポイントとなるのは、『何を考えて…』の部分。知覚・判断・行動のサイクルをデータで可視化することで、人間の行動特性とその要因をより明確にできるのです」

 現在のセンシング技術を用いれば、この実験における「知覚」と「行動」の部分を数値化することはできる。しかし、現象の「入力」と「出力」だけ可視化されてもその理由がわからなければ課題解決にはつながらない。そこで、「判断」の部分を分析し、人間の苦手な部分を明らかにして、そこを補うためにどのような設計が可能かを考えるところに竹本准教授の研究の独自性がある。

スポーツのトレーニングなど
幅広い分野での応用に期待

 竹本准教授は、トヨタグループが出資する豊田中央研究所で、「ヒューマンインタフェース」の研究に従事していた過去を持つ。これは、ますます先鋭化する自動車の制御システムを人間にとって使いやすい形にするための機能やデザインを考える研究分野。ここで培ったノウハウが、実社会での応用を強く意識した今の研究テーマにつながっている。

 人間工学、認知工学などの知見を用いたヒューマンファクターズの研究成果は、自動車の安全性向上以外の分野にも広く応用できる。例えば、スポーツのトレーニング。一流アスリートの知覚・判断・行動のサイクルを可視化できれば、練習メニューや戦略の立案に役立てられるのは間違いない。実際、サッカーやバレーボールの分野で選手から実験データの提供を受けた研究もスタートしている。

「身近な日常をデータとして可視化し、そこにはどのような問題があり、どうすれば改善できるかを新たな視点で提案できるのが、この研究の面白さだと思います。まずは、自動車の安全運転支援システムにおける研究成果を応用し、交通事故ゼロ社会の実現に貢献したい。そして将来的には、人々の生活を豊かにするために、ヒューマンファクターズの知見をさらに幅広く活用する方法を模索していきたいと思っています」

ドライバーの視線の動きを検知するグラス型のセンサーを装着する竹本准教授

自動車運転シミュレーションシステムの概要。左上:前方の運転状況、視覚情報の提示状況、右上:ドライバ視線の状況、左下:アクセル・ブレーキペダルの操作状況、右下:ステアリング・ウィンカの操作状況、顔向きの状況

VRを用いた自転車運転シミュレーションシステムも開発中

ヒューマンファクターズの知見を応用したサッカーでのデータ取得実験の様子

成蹊大学

地域共生社会研究所を開設

地域共生社会の実現を志す成蹊大学は、「地域共生社会研究所」を開設しました。福祉政策のデザイン、地域の福祉事業における政策の実装・評価、それを支える科学技術の構築といった、3つの学融合的なアプローチによって地域共生社会実現の新しいスキームを確立し、社会実践により有効性を検証します。これにより成蹊大学の将来ビジョンである、異分野間の協働、持続可能社会構築への貢献、少子高齢化問題への貢献に寄与し、ブランディングの原動力とします。

2020年4月、成蹊大学に3つの新学科が誕生

成蹊大学は、複雑化と多様化が進む社会に対応した人材の育成に向け、2020年4月に既存の経済学部を発展的に改組し、経済学部の改編と経営学部の新設を予定しています。新しく誕生する学科は「経済学部 経済数理学科」「経済学部 現代経済学科」「経営学部 総合経営学科」の3つ。それぞれの専門性をより高め、これからの社会や企業のニーズに応える人材を育成していきます。

学部学科

■ 理工学部:物質生命理工学科/情報科学科/システムデザイン学科
■ 経済学部:経済経営学科
■ 法学部:法律学科/政治学科
■ 文学部:英語英米文学科/日本文学科/国際文化学科/現代社会学科

主な就職実績

鹿島建設、大日本印刷、凸版印刷、I HI 、三菱重工業、京セラ、日立製作所、三菱電機、横河電機、ヤクルト本社、資生堂、SUBARU、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業、東海旅客鉄道、東日本旅客鉄道、東日本電信電話、日立システムズ、三菱総研DCS ほか

お問い合わせ先

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