Company

株式会社ジーンクエスト
代表取締役

高橋 祥子

新たなビジネスモデルで
遺伝子解析の未知の領域へ!

20代で大きなチャレンジをするにはどうすればいいかロジカルに考え、
大学院在籍中に、起業の道を選んだ

遺伝子解析キットでその人の未来がわかる!?に

 遺伝子解析によって、その人がこれから生きていく未来がわかる̶。どんな病気になりやすいのか? そもそも何歳ぐらいまで生きられるのか? SF小説のような話が、少しずつ現実になろうとしている。

 そんな遺伝子解析サービスを個人向けに行っているベンチャー企業がある。それが株式会社ジーンクエスト。代表取締役の高橋祥子さんは、理工系出身の若き起業家だ。

「ジーンクエストの遺伝子解析サービスは、インターネットで申し込むと届く専用キットに自分の唾液を入れて返送すると、疾病リスクなどに関わる約300項目以上の遺伝子情報を解析することができます。こうした網羅型のデータ解析サービスは、日本ではまだ普及していないため新しいビジネスモデルとして成立すれば、幅広い分野で役立つものになると考えています」

 遺伝子情報は膨大だが、その99.9%は、人類共通なのはよく知られている。つまり、1000分の1にあたる個人ごとに違う部分を調べるのが、このサービスのミッションとなる。

リスクを前に思考停止したら新しいものは生み出せない

 このキットは、なんと約70万か所の遺伝子を解析対象としている。がんや糖尿病などの疾病リスクに関わるものだけでなく、アルコール耐性やアレルギーの有無、記憶力のレベルといった遺伝的体質についても知ることができるという。しかし、冷静に考えると自分の将来の病気リスクを知るのは少し怖い気も……。

「遺伝子解析の倫理面に関する議論は大いに必要だと考えます。しかし、怖いと思っているのは、遺伝子解析のことをまだよく知らない人たちです。遺伝子解析でわかる疾病の発症リスクは、100%ではありません。遺伝情報だけでなく、生活してきた環境からも大きな影響を受けます。そう考えると、リスクを知ることをメリットと捉えるかどうかは、その人次第ですよね。そこで思考停止していては、新しいものを生み出すことはできないと思うのです」

取得した大量のデータを分析し研究に役立てる

 ジーンクエストには、もう1つ大きなミッションがある。それは、遺伝子解析サービスで取得した大量のデータを匿名化したうえで、さらに細かく分析し、さまざまな基礎・応用研究に役立てること。現在、6名の研究者が在籍し、20以上の研究機関や企業と協力して、研究を進めている。研究テーマは、遺伝子と疾病の関係解明だけでなく、疾患のメカニズム解明、創薬の基礎研究など実に多彩だ。さらに、ここで得た研究成果を論文としてや、国際学会などで発表も行っている。つまり、ジーンクエストは、遺伝子解析サービスを提供する企業であり、研究機関でもあるのだ。

 高橋さんがジーンクエストを立ち上げたのは、東京大学の大学院在学中のこと。当時の研究室の教授や仲間もその道を後押ししてくれた。

「私は学部時代に農学を専攻し、分子生物学の研究に取り組んできました。詳しく言うと、遺伝子やタンパク質のビッグデータを解析するバイオインフォマティクスと呼ばれる分野です。データを駆使して、新しい価値を生み出すこの研究に大きな可能性を感じた私は、大学院のときに個人向け遺伝子解析サービスのアイデアを思いつきました。ただ、遺伝子検査は病院内の領域だ、ネットで遺伝子情報を扱うのは危険すぎる……といった意見も多く、なかなか思うように進まない現実がありました。20代の自分が大きなチャレンジをするにはどうすればいいか。冷静に考えた私は、大学院在籍中に、起業する道を選びました。ロジカルに考えれば、答えは明確でした」

将来的には化粧品会社や食品会社、フィットネスジムとコラボも

 ジーンクエストは現在、医療機関や製薬会社だけでなく、化粧品会社や食品会社、フィットネスジムなど、新たな分野のパートナーとのコラボレーションを将来的に見据えている。どの化粧品が自分の肌に合うのか、自分の筋肉を効率よく鍛えるにはどういうトレーニングがいいのか……遺伝子解析によって、こうしたサービスのカスタマイズも可能になろうとしている。

「学術研究の世界では、遺伝子研究のテーマは、研究費が確保できる医療や創薬分野がメインでした。しかし、ジーンクエストのビジネスモデルを駆使すれば、遺伝子解析の成果をこれまで十分な研究費がつかなかったより日常生活に近い領域に広げることができます。つまり、人類がまだ到達していない場所にスポットライトを当てることができるのです。私は遺伝子解析の新たなフロンティアを探りあて、人類の未来をより豊かなものにしたいと考えています」

遺伝子解析キットの商品名は、「ユーグレナ・マイヘルス」。東大発ベンチャーとして有名な株式会社ユーグレナとの共同事業として展開している。高橋さんは株式会社ユーグレナの役員でもある。

Profile

高橋 祥子

東京大学 大学院
農学生命科学研究科博士課程修了

京都大学農学部卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了。同研究科博士課程在籍中の2013年に株式会社ジーンクエストを起業。2015年3月、博士課程を修了。2018年4月より株式会社ユーグレナの執行役員に就任。東京大学大学院農学生命科学研究科長賞、経済産業省「第2回日本ベンチャー大賞」経済産業大臣賞(女性起業家賞)、第10回「日本バイオベンチャー大賞」日本ベンチャー学会賞など受賞多数。

株式会社ジーンクエスト/Genequest

代表取締役の高橋祥子さんが、東京大学大学院博士課程在学中の2013年に起業。個人向けに、生活習慣病などの疾患リスクや体質の傾向を調べられるゲノ(遺伝子)解析サービスを提供している。また、そこで蓄積されたゲノムデータをカスタマーの同意を得た上で匿名化し分析することで研究に役立てるという形をとっており、個人向けの解析サービス提供と法人向けのゲノムデータ分析サービスの二軸で展開している。