JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

全ての人々の幸福と未来のイノベーションの創出に科学技術で貢献します。

国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 部長 大濱隆司さん

課題の解決、新しい価値の創造、人々の幸福のための科学技術

 2年以上続くパンデミック、国際情勢の変化とロシアによるウクライナ侵攻、それらによる経済社会への影響など、歴史の教科書に残るようないくつもの大きな問題が短期間に起こっています。また、依然として、地球温暖化が引き起こす異常気象や地震などの自然災害も人々の生活に脅威をもたらしています。このような中、科学技術には、人々に安心安全な暮らしをもたらすことや、地域や地球規模の課題を解決することが、社会から強く求められています。

 例えば、感染症の伝播予測や拡大防止策、自然災害の予測や人々の避難計画には、行動学など人文社会科学も含め分野横断的な科学技術が重要な役割を担います。急速な少子高齢化などの社会的な問題に対応しながら、新しい価値・新しい産業を創出し、人々の暮らしを豊かにするには科学技術の進展が不可欠です。他方、最先端の科学技術が残念ながら人々の争いにも使われていることも事実です。科学技術はすべての人類の幸福のためにあることを改めて認識しなければなりません。

「経済安全保障」と並行して国際頭脳循環を支援

 「経済安全保障」という言葉をみなさんもインターネットニュースなどで見たことがあると思います。国際情勢の変化があっても日本が自立した経済産業活動を維持できることや日本発の先端的な技術を守るために法律が制定され、さまざまな取り組みが行われます。そのなかで、人工知能や量子などの先端的な重要技術の研究開発を加速させて日本社会に役立てることも大きな柱となっており、JSTにおいてもその一端を担うことになりました。研究開発分野の特定や具体的なプログラムの設計を開始しています。

 こういった動きから、重要な技術の海外流出といったことをこれまで以上に気にしなければならなくなりました。しかしながら、科学技術というのはそもそも国境のないオープンなシステムです。優れた「知」や貴重な研究資源は日本に留まらず世界中に存在し、国境を越えて協力して相乗的に強い領域をつくることはこれからも重要です。JSTでは全事業を通して、みなさんのような次世代の研究者を含め日本の研究者が世界トップレベルの国際頭脳循環に参画することを引き続き支援してまいります。

壁を飛び越えて積極的に異文化・異分野と関わっていく

 パンデミックにより、みなさんの学校でもデジタル技術を用いた新しいスタイルが導入されてきたと思いますが、対面式の授業も再開されたと思います。JSTでもオンライン会議がすっかり標準となりました。しかしこれは効率的な面もあり、コロナ終息後でも元に戻らず、インターネットを介した対話が、少なくともビジネスにおいては、コミュニケーションの主なツールであり続けるでしょう。今後は海外に旅行して人と直接対面して仕事の話をするということは、コストに対する効果が重視されることになるでしょう。

 しかしながら、海外の異文化のなかに自分の身を置き、マイノリティーとしての自分が周りと関わり刺激を受けるのは、特に若い世代のみなさんには貴重な経験となるはずです。これまでオンラインで色々な国の仲間とつながりを増やしてきた方も、ぜひリアルな海外滞在を目指してほしいと思います。大学での研究を志しているみなさんには、国境や分野といった壁を飛び越え、多様で優れた知見にアクセスしながら、新しい世界を拓いていってほしいと思っています。

JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

イノベーションのナビゲーターとして、科学技術の発展を牽引し、広く世界を先導する組織。大学や企業などの組織の枠を超えた研究体制(ネットワーク型研究所)を構築し、世界に誇る日本の研究と実社会をつなぐサポートを行っている。産学官連携、国際共同研究や科学技術分野の人材育成にも力を入れている。

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JSTでは「科学」と「社会」の関係を深める目的で、さまざまな立場の人たち(市民、科学者・専門家、メディア、産業界、行政関係者など)が参加し対話するオープンフォーラム「サイエンスアゴラ」を2006年度より開催しています。
サイエンスアゴラ2022は「まぜて、こえて、つくりだそう」をテーマに、オンライン(10月20日~22日)と実地開催(11月4日~6日 会場:テレコムセンタービル他)で実施します。詳細は公式サイトをご覧ください。

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