JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

全ての人々の幸福と未来のイノベーションの創出に科学技術で貢献します。

国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究プロジェクト推進部 部長 大濱隆司さん

学問の枠を超えた分野横断型の研究開発によるCOVID-19対策

 天然資源に乏しい日本が、科学技術で国を豊かにし、世界の持続的発展に貢献するために1995年に定められた「科学技術基本法」が今年、大きく変わりました。2つ特徴があり、ひとつは「科学技術イノベーション基本法」と名前が変わり、科学技術によって経済社会の新しい価値を創出する目的が明確になったこと。もうひとつは科学技術に「人文科学」を包含したことです。これは、コロナ禍が続く今だからこそ重要な変革となっています。

 例えば、感染症の伝搬予測や拡大防止策には、生物医学・数理科学などの自然科学からのアプローチに加えて、人の行動や社会の仕組みなど人文科学的な知見が必要となります。JSTでは学問の枠を超えた研究開発で社会の課題解決に取り組んでおり、「8割おじさん」として知られるようになった西浦博教授(京都大学)の、数理モデルをもとにした感染症対策研究も支援しました。他にもCOVID-19対策として分野横断的な研究開発を海外諸国とも協力しながら行っています。

イノベーション創出のための挑戦的な研究開発と人材育成

 未来のイノベーション創出のためにJSTでは新たな挑戦を続けています。1960年代の米国のアポロ計画になぞらえた「ムーンショット型研究開発事業」を昨年度にスタートしました。大胆な発想で、20~30年後に実現する社会のあり方、新しい産業や医療システムといった「ムーンショット目標」を設定し、挑戦的な研究開発を行っています。

 未来のイノベーションを担う若手研究者や学生を支援するプログラムも新たに開始しました。「創発的研究支援事業」では研究者として独立する時期の若手研究者が自由で既存の枠にとらわれない研究に長期的に取り組みます。また、近年、我が国で急務となっている博士後期課程学生の支援策のひとつとして「次世代研究者挑戦的研究プログラム」もスタートし、6千人規模の生活費や研究費を支援する予定です。さらに、10兆円規模の「大学ファンド」の運用をJSTが実施することになりました。JSTとしては新しい挑戦となりますが、大学の施設や若手人材を支援するために鋭意準備しています。

壁を飛び越えて積極的に異文化・異分野と関わっていく

 昨年から続くパンデミックにより、みなさんの学校でもデジタル技術を用いた新しいスタイルを採用していると思います。JSTでもこれまでは国内外の科学者が一か所に集まる機会を設けるなどしていましたが、現在はすっかりオンライン会議が標準となってしまいました。しかしこれは効率的な面もあり、コロナ終息後でも完全には元に戻らず、インターネットを介したバーチャルな対話が、少なくともビジネスにおいては、コミュニケーションの主なツールであり続けると思います。

 しかしながら、異文化のなかに自分の身を置き、マイノリティーとしての自分が周りと関わり刺激を受けるのは、特に若い世代のみなさんには貴重な経験となるはずです。残念ながらしばらくは海外渡航ができませんが、オンラインでさまざまな国の仲間を増やしながら、いずれはリアルな海外滞在もめざしてほしいと思います。大学での研究を志しているみなさんには、国境や分野といった壁を飛び越え、多様で優れた知見にアクセスしながら、新しい世界を拓いていってほしいと思います。

JST 国立研究開発法人 科学技術振興機構

イノベーションのナビゲーターとして、科学技術の発展を牽引し、広く世界を先導する組織。大学や企業などの組織の枠を超えた研究体制(ネットワーク型研究所)を構築し、世界に誇る日本の研究と実社会をつなぐサポートを行っている。産学官連携、国際共同研究や科学技術分野の人材育成にも力を入れている。

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サイエンスアゴラ2021のテーマは「Dialogue for Life」。2021年11月3日(水・祝)~7日(日)の本期間のほか、2021年10月10日(日)・11日(月)にはプレアゴラを開催。詳細は公式サイトをご覧ください。

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