RESEARCH×TEAM

Team

株式会社TBM 
 

LIMEX開発チーム

水とパルプを使わず、優れた耐水性と耐久性、高いリサイクル効率を実現した「LIMEXペーパー」。そして、従来のプラスチック製造に必要だった石油由来樹脂を60~80%カットした「LIMEXプラスチック」。どちらも「石灰石」由来の革命的新素材だ。2014年には国内で特許を取得、世界43か国での国際特許取得も順調に進む。開発チームの市原秀紀さんと新倉裕之さんに、やりがいや心構えを聞いた。

開発本部 マネージャー

市原 秀紀さん

東京大学大学院
新領域創成科学研究科
物質学専攻 修了

開発本部

新倉 裕之さん

立教大学大学院
理学研究科 修了

石灰石が主原料の革命的新素材「LIMEX」は、
優れたリサイクル効率で未来を救う「宝石」

─こういった新しいコンセプトの商品は、どのように開発をスタートするのでしょう?
新倉
新素材の可能性・将来性に魅力を感じています。以前は、スクリーン印刷という印刷手法で用いられるインクの開発に従事していて、当時の知識を活かせる場面もあるのですが、LIMEXの開発を通じて学べることも多く、自分を高めていける点も魅力です。
市原
私は「エコノミーとエコロジーの両立」というLIMEXのコンセプトに惹かれました。これまで、外資系を含めた数社で、さまざまな技術の開発に携わってきましたが、紙を扱った経験はありませんでした。ただ、「ユーザーが楽しめるものをつくりたい」という、開発に臨む際の根幹の思いは同じですね。
新倉
LIMEXは、2015年にイタリアで開催されたミラノ万博のポスターで採用されたほか、2016年から本格的に販売を開始した名刺は、数か月で数百社に導入されました。自分が手がけたものが、目に見えるカタチになって世に出る喜びを感じられることも、大きな魅力ですね。
市原
開発環境という点では、大きな組織の場合、徹底された分業化によって個々の役割は限定されてしまいます。しかし、TBMの開発スタッフは数名。ひとり何役もの役割をこなしながら、幅広いフィールドで実力を試し、成長していける実感があります。
─チームでの役割分担はどのようになっていますか?
市原
入社して最初に課されたミッションは、「生産に関わる“すべて”をブラッシュアップすること」。LIMEXをさらに普及させるためには、薄さと軽さ、品質の高さを両立させながら製造コストは抑え、早期に量産体制を確立することが課題だったんです。開発と量産設備の整備とを同時進行させるため、驚かれることも多いのですが、世界的に見ればごく当たり前。日本企業では珍しい開発スタイルですが、今後は主流になるかもしれません。
新倉
私はLIMEXに適した表面処理方法を探っています。LIMEXペーパーに文字を印刷する際に、インクがにじんだりしないように、表面に塗る処理剤のベストな配合を探っています。印刷会社にとっても、扱いやすい紙、印刷しやすい紙にしたいと思っています。
市原
品質面では、耐水性・耐久性を向上させる添加剤の最適な配合比率も追究しています。一方、量産体制の確立に向けては、複数の機械・設備が最適な状態で稼働するようプログラムされた生産ラインが不可欠ですので、メカニカルな調整も含めて担当しています。LIMEXはすでに世に出ていますが、ブラッシュアップをして製造方法を厳密化させていく余地があり、そこに取り組んでいるわけです。
新倉
市原さんを見ているとまず知識が豊富で、特に実験データを読み解くチカラ、分析力の高さに驚かされます。
市原
粘り強いコツコツタイプの新倉くんも頼りになっていますよ。開発はチームワークですが、個々のスキルがあってこそ。例えば、大学生がディスカッションをして何か結論を導き出そうとする場合でも、個々がある程度の知識をもってディスカッションに臨まなければ、実りある話し合いにはならないはずです。開発業務もそれと同じですね。

2015年に完成した宮城県白石市の自社工場

“石”が主原料なので簡単には切れず、水にも強い

─開発意欲を高める秘訣はありますか?
市原
開発では、「こうなるだろう」との仮説を立てて実証実験を行いますが、想定外の結果が出ることも珍しくありません。LIMEXプラスチックで家庭用の食器をつくろうとする場合、炭酸カルシウムという樹脂成分の配合比率に応じて、成型のしやすさが変化します。食器を形づくるための成分あくまでも樹脂です。樹脂が多ければ成型しやすくなるのですが、それでは石灰石を使うLIMEXらしさが薄れてしまいます。そこで挑んでいるのが、石灰石の配合比率を落とすことなく成型のしやすさを実現させることです。軌道修正の連続で、やればやるほど課題が出てくるのですが、それに立ち向かうチャレンジ精神が何よりのモチベーションになります。
新倉
私は「より広く、世界に向けてLIMEXを届けたい」という一心ですね。国内では、大手飲料メーカーが、屋外の自動販売機に取り付ける販売促進用ツール(POPサイン)へのLIMEXペーパーの採用を検討するなど、着実に社会への浸透が進んでいます。いつか海外旅行に出かけた際に、現地でLIMEXを使ったポスターに出合うような感動を夢見ています。
─理工系進学を志す高校生へのメッセージを!
市原
私は、幼い頃から天文学に興味があったのですが、学生時代はオゾン層の問題などがクローズアップされていた時期で、「宇宙よりも地球の問題を解決しなければ」という意識を強く持ちました。分析方法であれ新技術であれ、「これは自分の力で達成した!」と思える 成果をひとつでも残したいと思って過ごしましたね。
新倉
学生時代に身につけた知識や技術をそのまま社会に出て活かせているわけではありません。ただ、今でも業務に取り組む際、肝に銘じているのは、課題をどのように解決していくか、しっかりと「自分の頭」で考えてアプローチするプロセスが重要だという考え方です。平たく言えば、プラモデルでも手芸でも、試行錯誤しながら自分で考えて進めることと同じですね。
市原
そう、大学で身につけてほしいのは考え方です。LIMEXの場合、石灰石とにらめっこをしているばかりでは、なかなか課題解決方法にはたどり着けません。分野にとらわれることなく世の中とつながって、興味のおもむくままに見聞を広めてほしいですね。
新倉
その点、私は学生時代にもっと海外文化に触れる機会をつくっておきたかったですね。今後LIMEXが世界進出する際に、海外で何が求められているかという知識は力になります。学生にとっては、多くの世界・社会を見ることで、自分の将来像をイメージするための素材も増えると思います。
市原
私がおすすめしたいのは「アナロジー・類推」です。これは、何か物事に触れた際に、別の物事との「似てる感」をつかむこと。開発で行き詰った際、石灰石や紙の分野とは何の関係もないようなトピックがヒントになることがあるんです。ですから、自分にはなかった発想に気づくためにも、貪欲に多種多様な情報に触れてほしいですね。
LIMEXの
ココがスゴイ!
経済産業省のイノベーション拠点立地推進事業「先端技術実証・評価設備整備費等補助金」にも採択されたLIMEX。
従来の紙の場合、1トンの普通紙をつくるためには、20本の樹木と100トンの水が必要だが、LIMEXペーパーなら石灰石600~800キロとポリオレフィン樹脂200~400キロで製造可能。
世界中の紙の5%がLIMEXになれば、2億2000万人が年間に必要とする水を節約できるという「エコロジー」な試算もある。
また、紙の需要が高いながらも水不足に悩み、紙を輸入に頼る開発途上国にLIMEXの工場を建てれば、自国で紙を生産でき、現地での雇用創出にも直結。
「エコノミー」なメリットも兼ね備える。効率的な回収スキームが構築されれば、高度な循環型社会に貢献することは間違いない。