Professor

木村 康男

東京工科大学

工学部 電気電子工学科 教授
複合ナノデバイス

「においセンサ」が病気を発見!
スマホの「犬」が飼い主を救う!?

ヒトの1億倍優れているという
犬の嗅覚をスマホに組み込む

 皆さんが持っているスマホには、実に多彩な機能が付いている。電話、メール、カメラ、ゲームはもちろん、電子決済機能なども。次はどのような機能が登場するのか? 東京工科大学工学部電気電子工学科の木村康男教授は、ここに「犬」を入れたいと考えている。
 「スマホに犬を入れるといってもペット育成ゲームのことではありません。私がめざすのはヒトの1億倍優れているという犬の嗅覚をスマホに組み込むこと。具体的には、超小型のにおいセンサを開発しています」
 犬の嗅覚について、こんな話がある。とある飼い犬が飼い主の体臭がいつもと違うことを感じ、その異常を伝えようと吠え続けた。不審に思った飼い主が病院へ検査に行くと、なんと病気が見つかったという。病気には特有のにおいがあるといわれており、犬がヒトの病気を嗅ぎ分けるというエピソードは多数報告されている。科学的根拠は完全ではないが、犬の嗅覚レベルのにおいセンサが実現すれば、病気の早期発見が可能になるかもしれない。まして、スマホに組み込まれれば、画期的な発明となるだろう。木村教授に詳しく話を聞いた。

先端材料を
半導体プロセスに適合させる

 「私の研究テーマは、半導体微細加工技術を基盤とした複合ナノデバイスの開発です。なかでも今回のにおいセンサの心臓部として用いたのは、酸化物半導体。においの正体となるガス分子がセンサ部分に触れた際の電気抵抗の変化を測定し、その分子を検知する仕組みです。酸化物半導体は、近年ようやく液晶ディスプレイに使われ始めた半導体であり、新しい形成手法を編み出したり、構造を制御したりすることによって、新たな発明が期待できるフロンティアなのです」
 センサ部分に用いられているのは、「酸化チタンナノチューブ」と呼ばれる最先端材料で、酸化チタンにナノサイズの穴がたくさん空いたもの。この穴の径と密度を制御することで、においの正体となるガスを検知する性能が上がる。実は材料があってもすぐに利用できるとは限らず、このような最先端材料を集積化するには特殊な手法が必要。このセンサでは、陽極酸化という手法と、半導体プロセスとを融合させた局所陽極酸化という手法を独自に開発し、微小なガスセンサを実現している。
 センサの大きさは、約2ミクロン(1000分の1ミリ)。対象となるガスの種類が違う、複数のガスセンサを並べてワンチップ化できることも特長だ。こうした半導体デバイスは、ナノレベルの薄膜を幾層も集積させてつくるのが一般的。これに適合する新規プロセスの開発は、最先端材料を世の中に出すために重要であり、かなり“熱い”研究分野である。

スマホに搭載することを想定した「においセンサ」の概念図。電気電子工学と情報工学の融合領域の研究だ

工学は、「人を幸せにするもの」
心を豊かにする役割も大きくなる

ナノの世界には
「発明の種」がたくさんある

 「説明だけ聞くと難しそうですが、実際にやっていることは、削ったり、くっつけたり、重ねたり……というものづくりの基本そのもの。それをナノの世界で行っていると思ってもらえればいいでしょう。複合ナノデバイス開発には、化学、物理学、数学を基本に、表面科学、電磁気学など、さまざまな学門分野が関わっています。でも、新しいものを生み出すのに最も重要なのは、成果が出るまで諦めない粘り強さだったりしますが(笑)」
 さらに、前例のない先端研究においては、既存の概念や理論にとらわれない発想力も重要だ。原理をしっかり押さえながら、そこを軽々と超えていくのが工学の面白さ。また、研究成果がスマホやパソコンなど、身近なデバイスに反映される点もこの研究の魅力だろう。
 「工学は、何よりも人を幸せにするものです。これからの社会においては、物質的な生活を支えるだけでなく、心を豊かにしていくような役割も大きくなるでしょう。“においセンサ”も人々の健康のために役立てるのが目的です。みんなの未来を豊かにする発明の種が、こうした目に見えないナノの世界にもたくさんあることをぜひ知ってもらいたいですね」

酸化チタンを用いたセンサ部分の拡大イメージ。ナノサイズの穴がパイプ状になって並んでいる

木村教授による「においセンサ」の図解。物質表面の原子・分子を扱う「表面科学」を用いる研究であることが述べられているのがわかる

電界放出形電子銃を用いた走査型電子顕微鏡(通称 FE-SEM)。東京工科大学には、ほかにもナノレベルの本格的な実験が可能な装置が揃っている

東京工科大学

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