Professor

冨永 祥子

工学院大学

建築学部 建築デザイン学科 教授
日本の伝統建築/リノベーション

日本の伝統建築の魅力は
変化を許容する“余分”の美学

弓道場、ボクシング場が
2015年日本建築学会賞を受賞

 静謐~せいひつ~。思い浮かんだのは、そんな言葉だ。水平垂直に細い木材が張りめぐらされた天井。音のないその空間には、どこか神秘的な時間が流れている。ここは神社?それとも由緒あるお屋敷?驚くなかれ、ここは工学院大学八王子キャンパスの弓道場である。設計を担当したのは、同大学の建築学部建築デザイン学科で教鞭を執る冨永祥子教授だ。
 「日本の伝統建築の美しさや独特の構造を現代の技術と組み合わせて、表現したいと考えました。モデルとなったのは、国内の伝統的な民家です。日常のすぐ上に、圧倒的な存在感の使わない空間がある……。そんな日常と非日常が同居する伝統建築特有の緊張感に刺激を受け、この作品を着想しました。また、日本の伝統建築の構造は必ずしも合理的と言い切れないところも魅力で……。木は変化するものなので、設計段階である程度の“余分”が必要になります。つまり、“実用”と変化を許容する“余分”がせめぎ合っている面白さがあるのです」
 この完成された空間のどこに“余分”があるのか見当もつかないが、コンクリート製の現代建築から抜け落ちた何かがあるのだろう。この弓道場は同キャンパスのボクシング場とともに「2015年日本建築学会賞」「THE INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARD 2014」など、建築界の権威ある賞を受賞している。

“変わるもの”と“変わらないもの“が
すんなり同居する空間が私の理想…

フィールドワークで
日本の有名な伝統建築を実測調査

 冨永教授は、研究室で2つのモットーを掲げて指導にあたっている。それは、「原寸大で考える」と「現在と歴史をつなぐ」。これらを実行するために、研究室の学生と優れた伝統建築の実物を調査分析するフィールドワークを行っている。2011年には、秋田県増田町で木造の伝統家屋を4日間かけて実測し、図面化。現状の設計につながる空間の要素を考察した。さらに現在は、学内外の4研究室合同で、1.山形県新庄市旧蚕糸試験場利活用プロジェクトを進行中。登録有形文化財である旧蚕糸試験場をリノベーションで蘇らせ、活用するプランを市に提案し、実現に向けた準備を進めている。研究室の活動は、「建築の歴史から学ぶ」を経て、「歴史的建築を再活用する」という段階に入った。
 「伝統建築は、古いままでは老朽化が避けられないし、現代のライフスタイルにも合わないところが出てしまう。でも、全部変えてしまっては、その魅力を語り継げません。理想は“変わるもの”と“変わらないもの”が同居する空間。それは、現代の優れた住宅にも当てはまります」

山形県新庄市での旧蚕糸試験場利活用プロジェクトの様子。リノベーションの提案は実行段階に入ろうとしている

建築家・阿部勤氏の私邸「中心のある家」を研究室で訪問した際の様子。コンセプトなどを本人から直接聞くことができる

現代の「名作」と呼ばれる
有名建築家の私邸を訪問

 冨永研究室では、「名作」と呼ばれる現代の住宅を訪問するフィールドワークも毎年行っている。訪ねるのは、冨永教授が個人的につながりのある建築家の私邸。学生たちは、有名建築家から直接、設計の背景を聞き、最終的にその住宅の20分の1模型を製作する。
 「私が考えるいい住まいの条件は、1つの家に多様な場所があること。広々とした明るい部屋、鳥の巣のような狭い空間などがコンセプトを持って同じ場所にある。そして、それらの用途が、家族や社会の変化に合わせてだんだん変わっていく……。そんな住宅に魅力を感じます。研究室で訪れるのは、1950年代から80年代に建てられた住宅が中心ですが、どのお宅も改築などの変化を遂げながら、変わらない“何か”をしっかり持っています。それは、日本の伝統建築が持つ変化を許容する“余分”にも通じるものがあるのかもしれません」
 原寸大の世界には、図面からは見えない普遍的な“何か”がある。建築は机上だけの学問ではない。実物の建物には重さもあれば、厚みもある。そして、そこには人間の暮らしがある。
 「私は、さまざまな流行のデザインに触れ、最終的に日本の伝統建築にたどり着きました。ここには“美しい”だけでは説明できない合理があります。日本人にとって馴染みの深い“木”という素材を現代の技術で再構成する空間づくりに、まだまだ未知の可能性を感じています」

冨永教授が弓道場と同時に設計したボクシング場。こちらは、120ミリ角のヒノキ材を組み合わせてつくった。弓道場が「静」なのに対し、こちらは「動」の雰囲気だ

冨永教授は、雑誌『建築ジャーナル』で伝統建築の探訪記を毎月連載。自らイラストマンガも描いている。実は、有名なマンガ賞を受賞した経験もある腕前なのだとか

日本古来の木造様式を模して、三角形の屋根の内側に水平垂直に細い柱を張りめぐらせたデザインが印象的な弓道場。木材は、国産のヒノキ材を使用している

工学院大学

時代のニーズに合わせて進化する工学院大学

工学院大学は2017年に創立130周年を迎える伝統ある大学です。常に実践を重視した教育を行い、科学技術に貢献できる人材を輩出してきました。そして、現在も常に時代に即した改革を続けています。2011年、日本初の「建築学部」開設を皮切りに、2015年には「先進工学部」が誕生、2016年にも「情報学部」が既存の2学科体制から4学科体制に生まれ変わりました。さらに、2017年4月には、工学部に「電気電子工学科」が誕生します。

キャンパスの施設も続々リニューアル!

八王子キャンパスには、2016年春に先進工学部の研究・実習施設を備えた「新4号館」が完成。2017年春には図書館や情報教育の機能を有した「新2号館」も完成予定。新宿キャンパスも地下1階学生ラウンジがリニューアル。工学院大学は、学習面、環境面ともこれからもますます進化します!

学部学科

■先進工学部:生命化学科/応用化学科/環境化学科/応用物理学科/機械理工学科 ■工学部:機械工学科/機械システム工学科/電気電子工学科※ ■建築学部:まちづくり学科/建築学科/建築デザイン学科 ■情報学部:システム数理学科/情報通信工学科/コンピュータ科学科/情報デザイン学科
※2017年4月電気システム工学科から名称変更

主な就職実績(2016年3月卒業生)

アステラス製薬、安藤・間、いすゞ自動車、大林組、鹿島建設、関電工、熊谷組、KDDI、淸水建設、スズキ、積水ハウス、大成建設、大和ハウス工業、東海旅客鉄道、東急建設、東京ガス、東京地下鉄、東芝、戸田建設、トヨタ自動車、凸版印刷、日産自動車、東日本旅客鉄道、日立製作所、日野自動車、フジタ、富士通ゼネラル、マツダ、三井ホーム、国家公務員、東京都市区町村役場 ほか

お問い合わせ先

〒163-8677 東京都新宿区西新宿1-24-2
TEL:03-3340-0130(新宿キャンパス アドミッションセンター)