Professor

岩野優樹

福井工業大学

工学部 機械工学科 教授
ロボット工学

高専5年次のNHK高専ロボコン全国大会の様子。
2勝し、ベスト8まで勝ち進んだ

ロボット技術には人々の悩みを
解決する無限大の可能性がある

「NHK高専ロボコン」が
ロボットに興味を持つきっかけに

 全国の高専生が、与えられた課題を解決するロボットを製作し、アイデアとチームワークを駆使して競う「NHK高専ロボコン」。テレビでも放映され、子どもたちに感動と驚きを与えている。岩野優樹教授のロボットとの出合いも、このロボコンだった。

「中学生のとき、テレビでロボコンを見て、自分もこんなロボットをつくりたいと思い、高専に進学しました。しかし、全国大会出場どころか初勝利までの道のりも決して平坦なものではありませんでした。地区大会敗退が続き、結局、初勝利&全国大会出場を果たせたのは、最終学年の5年生になってから。挫折の連続だっただけに感激は大きく、もっと専門的にロボットを学びたいという思いが強まり、大学3年次に編入学しました」

 大学・大学院時代も、岩野教授のロボコンとの関わりは続き、福祉ロボットの研究の傍ら「レスキューロボットコンテスト」にも参加。その経験を契機として、災害現場で人を救助するロボットシステムの開発を研究テーマに選んだという。

「レスキューロボットというと、自分の判断で動いて、人を救助する『無人ロボット』をイメージされるかもしれませんが、そうした高度なロボットを開発するのは困難です。大災害が続発するなか、できるだけ早く現場に投入できるようにするには消防隊員などがコントローラーで動かす形で使えるロボットが現実的だと考え、取り組んだのが『救助支援型担架ロボット』です。上下にクローラー(キャタピラー)を取り付けてあり、両方を回しながら倒れている人の体の下に潜り込んで、体を持ち上げずに担架に乗せることができます。運ぶ際には下のクローラーだけを作動させれば、階段も上れるようになっています」

救助支援型担架ロボット。災害現場で、要救助者を持ち上げずに担架に乗せることができ、消防隊員の負担軽減が可能

福井工業大学で進行する宇宙研究の
プロジェクトと連動したロボットも開発

「バリカン型」「フレイル型」
草刈ロボットの研究に取り組む

 レスキューロボットをはじめとして、困っている人々の役に立つロボットをつくることが、岩野教授の研究のポリシーだ。

「ロボット技術には、人々の悩みや、社会の課題を解決できる可能性が無限にあります。身近な人が困っていることに耳を傾けることによって、それが研究のヒントになることも少なくありません」

 例えば、テニス部の学生から「コートの周囲に生える草に困っている」という話を聞き、スタートしたのが草刈ロボットの開発だ。

 既存の草刈機は、高速回転するカッターが壁を傷つけたり、年間数例ではあるが死亡事故も発生している。そこで、岩野教授が開発したのが「バリカン型」の草刈ロボット。下の刃が長めで動かない形状になっており、ぶつかった場所を傷つけることがない安全性が特色だ。同時に進めているのが「フレイル型」。既存のフレイル型製品がすべてエンジンで動くのに対して、モーターを用いている点が岩野教授のオリジナルであり、回転数の調整がスムーズにできるメリットがある。

「課題はエンジンと比べて稼働時間が短いことです。そこで、AI技術を使って、カメラで前方の草の様子を判断して、密集していれば高速で回転させ、逆に少なければ回転数を落として消費電力を下げるようにする研究に取り組んでいます」

蟻地獄のような宇宙の地盤でも
掘り進められる仕組みを考案

 福井工業大学では2020年度、「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」がスタート。北陸最大規模のパラボナアンテナを整備し、JAXAとの共同で地球近接から月軌道までの人工衛星運用を支援する取り組みが進められている。将来的には小型人工衛星を打ち上げる計画だ。岩野教授は、このビッグプロジェクトとの連携を視野に入れて、月面を掘削するロボットの開発に着手している。

「宇宙の地面はレゴリスというサラサラとした砂地であり、蟻地獄のようなもので、堀り進むとロボットが埋まって動けなくなってしまいます。そこで、ロボットの周囲にベルトを装着し、同じ方向で回転させることによって、回りの圧を利用してさらに奥に進入できる仕組みを考案しました。もちろん、このロボットは、宇宙だけでなく、地球の軟弱地盤の掘削にも役立つと考えています」

バリカン型草刈ロボット。小型軽量で安全性が高い。課題は草が密集している場所では刃の周囲に草が溜まり、動けなくなること。現在、その改善策を模索中だ

フレイル型草刈ロボット。フレイルとはもともと中世の武器で、柄の先に鎖や鉄球などが接合されているもの。既存の製品もあるが、モーターを用いたフレイル型の研究を行っているのは、全国でも岩野研究室だけである

月面掘削ロボット。砂地でも相応のスピードで堀り進むことができるところに特色がある

福井工業大学

2023年度、新・経営情報学部がスタート

福井工業大学は、常に時代に合わせて、社会が求める大学像を追求し続けてきました。2023年度には新・経営情報学部がスタート。「工業大学」の枠を超えて、4学部8学科を擁する「工科系総合大学」へと進化を遂げ、工学から環境、スポーツ健康科学、そして経営情報まで、学びのフィールドが広がっています。

JAXAとの共同研究「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」

2020年度、福井工業大学で始動したのが「ふくいPHOENIXハイパープロジェクト」。JAXAとの共同研究を立ち上げ画期的な活動が展開されています。月周回軌道衛星との通信を可能とする高性能な口径13.5mのパラボナアンテナ、地球周回衛星との通信を可能とする口径3.9mのパラボナアンテナを新たに整備し、月探査用衛星地上局の開発と性能実証の共同研究が進められています。このような規模と性能を有する衛星地上局は大学・民間では国内唯一であり、この地上局を世界の宇宙開発および宇宙産業に貢献する人材育成の拠点とすることをめざします。

学部学科

■ 工学部:電気電子情報工学科/機械工学科/建築土木工学科/原子力技術応用工学科 ■ 環境学部:環境食品応用化学科/デザイン学科 ■ 経営情報学部:経営情報学科 ■ スポーツ健康科学部:スポーツ健康科学科

主な就職実績

東京電力ホールディングス、関西電力、日産自動車、大和ハウス工業、熊谷組、北陸電気工事、大同工業、UACJ 福井製造所、セーレン、クスリのアオキ、福井鋲螺、井上金庫製作所、日本電産テクノモータ、日本基礎技術、京セラ、太平電業、日本航空電子工業、古河AS、クリハラント、福井県自動車整備振興会、福井県庁、福井県教育委員会、岐阜県教育員会、滋賀県教育委員会、法務省(刑務官)、厚生労働省(食品衛生監視員)、福井県警察本部、神奈川県警察、能美市役所、黒部市役所、自衛隊 ほか

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