RESEARCH×COLLABORATION
いま注目の企業研究開発コラボ

AuB株式会社

代表・鈴木啓太 × 研究統括・冨士川凛太郎

サッカー元日本代表の鈴木啓太さんが社長を務める、アスリートの腸内細菌を研究する「AuB株式会社」。2006年~2007年のオシムジャパンでは唯一全試合スタメン出場を果たすなど、長年サッカー選手として活躍してきた一流のアスリートがなぜセカンドキャリアとしてこの道を選んだのか。研究統括責任者である冨士川凛太郎とのクロストークから、アスリートの腸内環境を研究することの未知なる可能性について話を伺った。

代表取締役

鈴木啓太

2000年に浦和レッドダイヤモンズに加入。Jリーグではベストイレブンに2度輝くなど、16年間浦和レッズ一筋でプレー。日本代表には2006年に初選出後、28キャップを獲得。2015年、AuB株式会社を設立。

取締役兼研究統括責任者

冨士川凛太郎

2008年、豊橋技術科学大学大学院工学研究科博士後期課程修了。電気機器メーカーや経営コンサルティング会社起業などを経て、2016年6月、AuBの立ち上げに外部人材として参画。2017年4月、AuB株式会社取締役に就任。

“レベルが高い”アスリートの腸内細菌を研究し、
すべての人をベストコンディションに!

サッカー元日本代表の実体験と研究者の知恵が
融合して生まれた人々の健康を促進するサプリ

──サッカー日本代表としてもご活躍された鈴木さんがなぜ腸内細菌の研究を……?
鈴木
端的に言えば、僕が「現役時代に何度も“腸内細菌”に助けられてきたから」ということになると思います。調理師の母から「人間は腸が一番大事」「便を見なさい」と言われていたのが幼少期のころ。「健康のために腸を意識する」ということを常日頃からやっていて、プロになってからもいつもお腹でコンディショニングをしていました。腸内環境の重要性が確信に変わったのは、アテネ五輪のアジア最終予選のときです。日本代表の選手が集団で下痢を訴えるなか、僕は下痢にならなかった。そんなふうに、腸の動きをしっかり管理することがいいパフォーマンスにつながると、現役時代の体験から印象づいていたんです。この話をある研究者の方に話したらおもしろがってもらって、じゃあちゃんとアスリートの腸内環境について研究してみたいなと。自分自身の腸内環境に対する信頼が科学的に証明されることにもワクワクしていましたし、その研究結果をなにかしらの形で一般の人やアスリートにも還元できたら意義があるんじゃないかという思いがありました。みなさんが普段生活するなかで腸や便について強く意識することはないかもしれませんが、実は腸内環境って人のコンディショニングや健康にかなり影響を与えているんです。
冨士川
当たり前ですけどアスリートって試合の日にベストパフォーマンスを発揮するために徹底的にコンディション調整に励んでいるんですよね。そこが我々一般人にはあまりない意識です。その結果が現れる腸内環境を研究すれば、きっと一般の人の健康にも寄与できると考え、私もAuBに参加しました。アスリートは食事や運動量、競技成績など生活や健康状態に関するデータが多く、腸と健康の関係性を分析しやすい環境にあります。そうした解析を礎に、人々の健康課題の解決方法を探っていきました。
──具体的にはどのように研究を進め、社会的な還元へとつなげていったのでしょう?
鈴木
まずは検体となる“アスリートの便”を集める作業が大変なんですが、そこは僕の現役時代の人脈が生きる部分でしたね。初めてアスリートに「うんちをください」と言ったのは、プライベートでも親交のあるラグビー日本代表の松島幸太朗選手。彼の返事はもちろん「えっ? 何言ってるの?」と驚いていましたが、「将来のアスリートのためになるから」と念押しして快諾してもらいました。今では一流のアスリートたち700人以上の検体を採集するまでに至っています。
冨士川
700人のアスリートが被験者なんて、普通ならありえない数だと思います。世界でも類を見ないんじゃないでしょうか。私たち研究員はその検体を分離して培養し、そこから受け取った膨大なデータを分析して腸内細菌の特性を調査していきました。研究を進めるうちに、腸内の「酪酸菌の多さ」と「菌の多様性(種類の豊富さ)」がアスリートと一般の方では顕著に異なり、またこれらは人の健康に大きな影響を与えていることが明らかになりました。この研究結果を形にしたのが、腸活サプリの「AuB BASE」です。
鈴木
「AuB BASE」は、食とテクノロジーが融合したいわゆる“フードテック”と呼ばれる分野の商品ですね。データやAI、IoTといったテクノロジーを用いて食の問題を解決していく新領域の研究分野です。AuBは今後も腸内細菌の研究を進め、ゆくゆくは人間の健康を食とデータからカスタマイズしていくのが理想です。“ある大事な日”にベストコンデションを持っていきたいのは、アスリートだけではありません。一般の人でも会社のプレゼンがあったり大事な予定があったり、学生だと受験やテスト、はたまた修学旅行があったりするかもしれない。すべての人をベストコンディションにして、伸び伸びと生活してほしいと思って研究しています。
──経営者と研究者という立場のおふたりですが、お互いにコラボレーションすることにどういったメリットを感じていますか?
鈴木
そもそもアスリートの便がこんなに研究材料として役に立つものだと思ってなかったので、詳しくデータを出すことの意義を感じています。単に腸内細菌のデータだけをもらっても意味がないですが、遺伝子系や血液系といったさまざまなデータを掛け合わせ分析することで、非常に価値のある資産になっています。大学や企業の研究者とも共同研究を行い、僕が抱いてきた想いを一丸となって形にしています。
冨士川
どんな分野でも同じですが、高いレベルのデータを集めることに意味があると思っています。その点、アスリートを被験者にすると非常に価値のある素材が集まってくるので、そこをビジネスにつなげていくやりがいがありますね。鈴木の求める商品化であったり社会的な還元の求めるレベルも高く、「すべての人をベストコンディションに」というゴールに向かって日々奮闘しています。
──最後に、大学進学を志す高校生にメッセージをお願いします!
冨士川
大学ではさまざまな技術を学ぶことができますが、その技術の応用先を常に意識していると手応えを感じるかもしれません。今は企業へのインターンシップなどが簡単にできるような社会なので、学生時代からそういった場所にどんどん飛び込んでみてください。自分の研究の先にどういった社会があるか想像する手立てになればいいなと思います。
鈴木
現役時代は、まさか自分で起業して腸内細菌の研究に携わるなんて思ってもいなかったんです。スポーツ選手は寿命があるので30歳くらいで引退なのかなと思ってはいましたが、最初から具体的なビジョンがあったわけではありません。でも生きていると、自分ができること、やるべきことのヒントがあちこちに転がっています。それが僕の場合は、「腸に助けられてきた」という経験だった。だからいま高校生であるみなさんも、とにかく興味のあることに全力で挑戦してみてください。そうすればきっと、どんどん新しい道筋が見えてくると思います。
「AuB BASE」の
ココがスゴイ!
新型コロナ禍でも注目を集める「酪酸菌」が腸活をサポート!

4年間、計700人以上のアスリートから便のサンプルを取り、腸内細菌を研究してきたAuB株式会社。アスリートの腸内は一般の人と比べて「酪酸菌の多さ」や「菌の多様性が高い」という研究成果を腸活サプリとして商品化したのが「AuB BASE(オーブベース)」だ。腸内にある悪玉菌の発育を抑制し、免疫力をコントロールすると言われている酪酸菌。新型コロナウイルス感染拡大の影響で一層注目を集めるその酪酸菌をメインに、乳酸菌やビフィズス菌など29種類の菌を摂取することができる。一般モニターによる検証結果によると、AuB BASEを摂取すると腸内細菌の多様性を平均7.5%増やしながら、酪酸菌を平均3.7%増加させることに成功。「すべての人をベストコンディションに」。AuBが目指すその大きな夢がついに動き出した。

アスリートの腸内環境の研究から生まれたAuB BASE。酪酸菌をメインに29種の菌を独自配合している