RESEARCH×TEAM
Team

株式会社メルカリ
 

AIエンジニアリングチーム

国内最大級のフリマアプリ「メルカリ」。誰もが、簡単に安心して売り買いができるインターネット上のフリーマーケットだ。そこで働く開発エンジニアたちは、AIを用いた先進的なテクノロジーによって、約1300万人を超えるユーザーの使いやすさを追究している。海外出身者も半数ほど在籍する「AIエンジニアリングチーム」の精鋭メンバーの中から、木村俊也さんと千葉竜介さんに開発の裏側を聞いた。

Engineering Director of AI Engineering

木村俊也

北陸先端科学技術大学院大学
情報科学研究科 博士前期課程修了

Software Engineer of AI Engineering

千葉竜介

筑波大学大学院 システム情報工学研究科
コンピュータサイエンス専攻 修士課程修了

より簡単で、より安全な売買をめざして
AI技術を活用したサービス開発に挑戦中!

──Webやスマホアプリで簡単にものの売り買いができるメルカリ。AI技術はどのようなところに活用されているのでしょう?
木村
メルカリでは、2017年からAI技術をサービスに導入しはじめ、その活用方法は多岐にわたっています。AI技術をサービスに活用することによってめざしているのは「簡単な売買」と「安心な売買」の実現。「簡単な売買」では、“AI出品”や“写真検索”といったサービスを開発し、お客さまにとっての便利さを追究してきました。例えば、AI出品というのは、話題の「ディープラーニング1」を活用して開発したもの。これは、機械学習と呼ばれるAIを実現させるための技術で、お客さまが商品を出品する際に撮影した写真を瞬時に解析し、商品名やカテゴリ、ブランドといった項目を自動で推定する機能です。この機能の導入によって、新規のお客さまの出品完了率、また1人あたりの出品数に貢献しました。
千葉
私が開発に携わっている写真検索は、お客さまが撮影した写真をもとに、メルカリ上に出品されている同一商品や類似商品を探す機能です。サービス開始時から日々蓄積された数十億規模の商品データを、ディープラーニングや画像認識といったAI技術によって判別する。高精度な機械学習モデルの構築によって、こうしたサービスが実現しています。
木村
このあたりが、お客さまがより簡単に出品や検索ができる環境づくりをめざしたサービス開発です。それに加えて、利用規約違反の商品・取引を自動検知する“違反検知システム”など、「安心な売買」についても技術面から促進してきました。
──具体的な業務内容について、例えば「写真検索」の技術開発はどのようなチームで進めていったのですか?
千葉
写真検索開発のエンジニアは、大きく分けて3つのチームに分類できます。最もお客さまに近いアプリの運用を担当する「フロントエンドエンジニアチーム」、その裏でデータの処理を行う「バックエンドエンジニアチーム」。私が所属しているのはさらにその裏の、機械学習を用いて前述のような技術開発に挑戦する「AIエンジニアリングチーム」です。このチーム内にも2種類のエンジニアが在籍していて、一方は実験を積み重ねて機械学習のアルゴリズム2を開発するモデリングエンジニア。もう一方がそうして開発されたモデルを実際にメルカリサービスで使えるようにシステムを構築するSysML3エンジニアです。写真検索の開発は、エンジニア約7人で共同してシステム構築に挑戦。私はSysMLエンジニアで、写真検索のアルゴリズムをシステムとして実装することを担当しました。
木村
モデリングの作業には高い経験や知識が必要ですが、千葉さんの行う作業には、加えてインテグレーション(現サービスの形に統合)する技術やインフラ構築などのシステムづくりを行う能力が必要です。このようにチームメンバーの強みを生かしながら作業分担をし、最適なサービスの実装につなげています。私の業務は、彼らAIエンジニアリングチームメンバーのマネジメントをすること。一人ひとりと週に1回はミーティングの機会をつくり、彼らとこまめにコミュニケーションを取りながら、仕事への想いを共有しています。チームの半数が海外出身のエンジニアだというのも、メルカリの特徴。このようにしてメルカリアプリは、さまざまなタイプのエンジニアによって運用されているのです。
──仕事のやりがいと、今後挑戦してみたいことを教えてください。
千葉
メルカリは私自身もよく使いますし、家族や知り合いのなかにも使ってくれている人がいます。そうした身近なサービスを日々よくしていけることは、仕事へのモチベーションに直結しています。
木村
不要になったものが売買されることで循環するサービス、そのサービスをよくしていくという「社会的なインパクトの大きさ」がやりがいにつながっているよね。メルカリの特徴は、自分が持っているものに「そんな価値があったんだ!?」と認識できることだと思います。高校生が持っているものなんかは、価値がわかりづらいものが多い。しかし、例えばトレーディングカードやフィギュアなど、他人にとっては思わぬ価値を示すものもあります。所持しているあらゆるものを撮影しておいて、求めている人がいれば知らせてくれる、そんなしくみをつくり出すことも夢ではありません。
千葉
そのために、売買をさらに簡単にしていくことがこれからの課題ですね。より手間をかけずに出品でき、ほしいものが一瞬で見つかる環境をつくること。写真検索に関しては、検索スピードの速さや精度アップなど、まだまだ課題はあります。そうしたサービスの質向上に挑戦できるのもやりがいのひとつですね。
──最後に、エンジニアを志す高校生へメッセージをお願いします!
千葉
プログラミングのいいところは、コンピュータが1台あれば始められるところ。興味があるならば、迷わず始めてみてほしいと思います。そうすれば、みるみるうちにのめりこんで、勝手に技術が身についていくはずです!
木村
高校時代に学んだ知識はすべて今の仕事につながっている実感があるので、目の前の勉強に一生懸命、取り組んでいってほしいですね。とりわけ数学はコンピュータサイエンスの基礎となるので重要です。あと忘れてはいけないのが英語! エンジニアは英語の文献を読む機会が多いうえに、日本国外の人と仕事をすることも多いので英会話力も身につけなければなりません。
千葉
私は、IT業界に女性エンジニアがまだまだ少ないことが気になっています。エンジニアは男女関係なく活躍できる場。メルカリでも女性エンジニアがたくさん活躍しているので、女子高校生のみなさんも興味があればぜひ、一歩踏み出してみてください!
用語解説
1 ディープラーニング

人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつ。膨大なデータを読み込み、自ら学習していくところが特徴。人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模したシステムであるニューラルネットワークがベースになっている。

2 アルゴリズム

問題を解決するための手順や方法のこと。プログラムを作成する基礎となる。

3 SysML

機械学習システムの構築と運用を担当するエンジニア。

メルカリの
ココがスゴイ!
“AI出品”の導入で「売る」ことを簡単に

2017年10月よりサービスを開始した“AI出品”は、「売る」ことを劇的に簡単にした機能だ。そのしくみは、ディープラーニングや自然言語処理といった機械学習の組み合わせで、撮影したものの写真から情報を瞬時に解析するもの。商品名やカテゴリだけでなく、人気ブランドであればブランド名すらも自動で入力してくれる。

ほしいものをすぐに探せる機能“写真検索”

「売る」簡単さだけでなく、「買う」ことの簡単さをめざしたのが、2019年3月に実装された“写真検索”という機能。その手順は極めて簡易的で、ユーザーは、検索画面で「写真から探す」を選択、または検索キーワード窓のカメラアイコンを選択し、探したい商品をスマートフォンカメラで撮影するだけ。メルカリ上で出品されている商品画像を対象に検索を行い、画像と同じ商品もしくは類似商品を検索してくれる。