SUPER LAB.

Laboratory

芝浦工業大学 
工学部 電気工学科 宇宙ロボットシステム研究室

テーマは宇宙からドローン、医療まで
ロボットと動力学がつなぐ近未来

芝浦工業大学 工学部 
安孫子 聡子准教授

2015年度安孫子研究室メンバー

ゼロからものをつくり上げ、
思い通りに動かすことができる

 ロボティクスとダイナミクスの融合――。それが、私が担当する宇宙ロボットシステム研究室がめざすもの。ロボットを「動力学」の原理に基づいて、制御する手法を模索することを意味します。研究の軸となるのは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の捕獲・除去を目的とした宇宙ロボットの開発です。宇宙環境特有の力学特性や環境を理解し、適切な制御システムを検討しています。
 世界中で数多くの人工衛星が打ち上げられた結果、現在、地球の軌道上に故障や衝突事故に起因するスペースデブリが無数に散らばっている状態です。そこで、これらを人工衛星に取り付けたロボットアームでキャッチしようというのが研究の目的です。課題となっているのは、無重力空間で大型のスペースデブリが不規則な回転をしながら浮遊しているため捕獲が非常に難しいこと。そこで、電磁特性を用いて、スペースデブリの回転を制止させる「渦電流ブレーキ」のシステムを考案中です。
 宇宙ロボットで培った技術は、宇宙以外の分野にも展開可能です。例えば、UAV(無人航空機)の研究。これは、何かと話題の「ドローン」のような航空ロボットを指すもの。研究室では、特に4つのプロペラの推力方向が変化する機構を有する「クアッドチルトロータUAV」の開発に力を入れています。
 通常のドローンと違い、機体が斜めになった状態でも空中で安定したホバリング飛行ができるのがこのUAVの大きな特徴です。これまで研究室で改良を重ねてきた制御プログラムをベースに市販のパーツなどを組み合わせながら、基盤をゼロから作製し、実際に飛行実験も行っています。
 宇宙ロボットとUAVの研究の接点はいわゆる、「運動方程式」にあります。まったく違うように見える双方の研究で用いる力学の理論には共通点があるのです。
 さらに、ロボティクスの技術を医療分野にも応用していきたいと考えています。これから取り組む研究室の新たなテーマは、脳外科手術で用いるシミュレータの開発。ここで用いられるのは、「ハプティック・インターフェース」というCG空間に作成された脳組織の触覚情報をオペレータに提示する技術です。めざすのは、脳組織に手を加える手術をまるで本物のように行えるシステム。難度の高い脳外科手術の成功率を上げるために技術面から貢献できるのではないかと考えています。
 いずれの研究においても、ゼロから自分のイメージ通りにものをつくり上げ、思い通りに動かすことができる点に面白さがあります。頭と手をフル稼働させて、試行錯誤を繰り返すことで、技術者としての基本姿勢も自然に身につくことでしょう。
 ぜひ皆さんも大学時代に" 尖った" 得意分野を見つけて、研究をとことんまでやり切ったという体験をしてほしいですね。そこで得た自信は社会のどの分野でも役立つ大きな武器になるはずです。ユニークで幅広い研究テーマに出会える芝浦工業大学は、その舞台として相応しいのではないでしょうか。

01
スペースデブリを捕獲・回収する
宇宙ロボットの研究・開発

 安孫子准教授のキャリアの軸となるのは、人間がアクセスすることが困難な環境で活躍するロボットの研究。そのテーマのひとつが宇宙環境。近年、スペースデブリ(宇宙ゴミ)と人工衛星の衝突事故などによって顕在化する宇宙環境の悪化。これを阻止するため、大型のスペースデブリを安全に捕獲するための実験装置を開発し、検証を行っている。電磁特性を用いて、不規則に回転するスペースデブリを静止させる「渦電流ブレーキ」という独自技術の提案を行っている。

02
あらゆる姿勢で安定飛行できる
無人航空ロボットの開発・制御

 「航空ロボット」の重要な研究テーマのひとつ。具体的には、機敏な運動性能を持つUAV(無人機)の設計・開発・制御に取り組んでいる。学内の研究設備を活用し、実験を繰り返しているのは、4つの回転翼の推力方向が変わる機構を持つ「クアッドチルトロータUAV」の飛行制御。推力方向が機敏に変化することで、従来のドローンに比べ、風や外乱などの環境対応、多様な飛行形態の実現が期待される。これまで困難とされていた高所での複雑な作業などを実現するのが目的。その具体的な活用法を機体設計と共に検討している。

03
ハプティックインターフェースを
用いた脳外科手術シミュレータの開発

 脳外科手術では、若手医師のトレーニング環境が乏しいという課題がある。そこで研究室では、「遭遇型ハプティックインターフェース」という触覚情報を提示する技術を応用した脳外科手術シミュレータを開発中。脳組織からの微小な反応をオペレータに提示し、実際の手術に限りなく近いシミュレータの構築をめざしている。これは電気電子工学や機械工学の知識を医療で応用する新たな研究領域。北海道大学や防衛大学校との共同研究を積極的に行い、実用化への道を模索している。

田代 健悟

大学院理工学研究科
電気電子情報工学専攻 修士課程1年
埼玉県立 坂戸高等学校出身

自分でつくって、
動かしてみて初めて
仕組みを理解できる

 もともとミニ四駆などが好きだったので、研究室でUAVを自作し、操作する研究に携われるのは本当に楽しいです。自分の手でつくって、動かしてみて、初めて複雑な機械の仕組みを理解できることはたくさんあります。また、気が合う仲間と助け合い、教え合う関係が築けるのも研究室の面白さだと思います。

※インタビュー内容は取材当時のものです。