観光事業の政策を立案したい。

■ どんな世界?
海外旅行が自由化されて今年で45年。自由化元年の1964年にはわずか13万人だった海外旅行者数は、ジャンボ機の就航で幕を開けた1970年代以降の大量輸送時代と1980年代後半の円高の影響を経て爆発的に増え、2000年には史上最高の1782万人を記録した。
国民にとって海外旅行はいまや一般的なレジャーとしてすっかり定着し、特にインターネットが普及してからは多種多様なスタイルで旅を楽しむ傾向が顕著に。各国の観光サイトにアクセスして情報を集め、自分で旅をプランニングしたり、ネットのコミュニティを通じて激安ツアーを探したり、あるいは逆に旅行会社に細かくリクエストして自分だけのツアーを手配してもらったり……。
もちろんそうしない人にとっても選択肢は豊富で、例えばパッケージツアーは、価格はもとよりテーマも観光名所巡りからマニアックな体験ものまで幅広く、また参加対象者も高齢者や病気を抱えた人向けのプランが企画されるなど、利用者のさまざまなニーズに対応している。
一方、日本を訪れる外国人旅行者数は、ここ数年うなぎ昇り。アジアでは中国に次ぐ14の世界遺産を誇る日本の自然や歴史への注目の高まり、さらに2010年までに訪日外国人旅行者数1000万人をめざす国家的プロジェクト「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が追い風となり、年間60〜80万人以上のハイペースで増え続けてきたのだ。2007年度には834万人を記録。なかでも韓国や中国を筆頭にアジアからの客が目立ち、経済発展が著しい中国やロシアの「新富裕層」と呼ばれる人々の豪遊ぶりがしばしばメディアで取り上げられることも。この影響で外資系の一流ホテルが次々と日本に進出し、大都市がホテル戦争の様相を呈したのも記憶に新しい。
ところで観光は時代を最も敏感に反映する産業のひとつである。日本における観光事情のマクロな流れはこれまで説明した通りだが、昨秋の世界的な経済不安がこのところの状況を一変させてしまった。
燃油サーチャージの高騰が原因で2007年には1729万人と3年連続の前年比マイナスとなった海外旅行者数は、サーチャージ価格の安定と急激な円高により今後の伸びが期待される反面、人々が消費を控える傾向が予想されるため楽観視はできない。さらに訪日旅行者の方は相当な落ち込みが懸念されている。順調に発展してきたこの分野にしのびよる不安。だがこうした変化に対応し、画期的なアイデアで活路を切り拓くことも、観光事業に関わる醍醐味なのだ。
■ 何を学ぶ?
観光業界の活性化に伴い、大学でも「観光」を学問の対象としてとらえ、研究する学科が増えている。現在、大学の観光系学科では旅行業やホテル産業、交通業などの「観光産業」、テーマパーク、リゾート開発などの「観光開発」、観光立地計画に欠かせない「観光事業」など、さまざまな視点から観光について学ぶことができる。
観光産業を研究テーマに選んだ場合は、旅行や接客に関する基礎的な知識やマナーのほか、ホスピタリティ・マインド(おもてなしの心)も習得。さらに語学や地域研究、観光経済学、ホテル経営論、旅行企画論、観光交通論など、幅広い領域の科目を履修していく。
観光開発や観光事業では、都市開発論やリゾート開発論、観光法、環境政策論、環境事業経営論などの専門科目が用意されており、観光事業の企画立案能力を身につけることが可能だ。
いずれのテーマを選んだとしても、語学力の育成にウエイトが置かれている点が観光系学科の大きな特徴だ。なかには英語に加えて、中国語や韓国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語、インドネシア語、タイ語など、豊富な言語に対応している学科もある。さらには、各地の地域研究を通じて、異文化理解を深めていくことも、観光系学科の目的だ。
■ どう選ぶ?
観光を専門的に学ぶ学科には、観光学科や観光産業学科、観光文化学科、国際観光学科などがある。これらの学科には、観光文化や観光計画など、目的に合わせてコースや履修モデルを設置している場合が多い。
また、国際文化学科や語学系の学科などに進み、異文化研究や語学の視点から観光について学ぶこともできる。この場合は、観光よりも地域研究や語学の習得に重点が置かれた教育がなされている点に注意したい。
■ 資格は?
旅行業務に関する代表的な資格として、「国内旅行業務取扱管理者」「総合旅行業務取扱管理者」の2つがある。前者は国内旅行を、後者は国内外の旅行を扱う旅行会社が、営業所ごとに必ず1名以上の有資格者を置かなければならないことが規定されている。
このほかにも「通訳案内業」の資格がある。語学力に加えて、日本の地理や歴史、文化、産業、経済に至るまで、幅広い知識を持っているかどうかを試されるもので、第1次試験(筆記試験)と第2次試験(口述試験)によって合否が決まる。
語学の習得度をはかりたいなら「実用英語技能検定(英検)」や「TOEIC」のほか、「実用フランス技能語検定」「スペイン語技能検定」など、各語学ごとに検定試験が行われているので目的に合わせて活用したい。
さらに「観光英語検定」や「旅行業英語検定」など、観光業務に必要な英語のスキルをはかる試験や、旅行地理の知識を問う「旅行地理検定」などもあることを覚えておこう。
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