食と健康のプロになりたい。

■ どんな世界?
近年、私たちをとりまく「食」の環境は大きく変化し、その影響がさまざまなところで現れている。例えば、「メタボ」。これは「メタボリックシンドローム」の略称だが、バランスの悪い偏った食生活や運動不足によって肥満化した内臓が原因となり、糖尿病、脳卒中、高血圧、肥満などの病気になりやすい状態のことを表している。
また肥満とは逆に若い世代、特に女性に多いのが間違ったダイエットによる弊害だ。見た目は細くスレンダーだが、貧血、骨粗鬆症、便秘などを起こし、健康状態を悪化させている。こうした日頃の生活習慣の積み重ねが原因となる“生活習慣病”は、現代社会が抱えている大きな健康問題のひとつだ。これら生活習慣病の予防には、継続的な運動と栄養バランスのとれた食生活が重要になってくる。この食と健康について、高い専門知識と技術を備えたプロが「栄養士」であり、それよりさらに高度な知識と技術を身につけたスペシャリストが「管理栄養士」と考えていいだろう。
2000年の栄養士法改正で、「傷病者に対する療養のため必要な栄養の指導」「個人の身体の状況、栄養状態等に応じた高度の専門知識及び技術を要する健康の保持増進のための栄養の指導」などが盛り込まれたことによって、医療と連携した栄養指導や、個別的できめ細かな栄養指導が、管理栄養士の業務として重要になってきた。
また、それまでの「登録制」から「免許制」に変更され、罰則も強化。管理栄養士は、まさに栄養に関するプロ中のプロとして責任ある仕事をこなすことが求められているのだ。
具体的な活躍の場としては、1回300食以上、または1日750食以上の食事を供給する集団給食の施設では、管理栄養士の指導・監督が義務づけられていることから、学校、保育所、病院、介護施設、給食センター、企業の食堂などが一般的。その他、地域の保健所で市民の栄養相談など公務員として勤務することも。また、近年ではスポーツ業界からの要請も多く、栄養や食事面から勝利へと導くために、スポーツチームやトップアスリートのサポートスタッフとして活躍する管理栄養士も増えてきている。その他、食品メーカーなどで品質管理や商品開発に携わるなど、栄養系の専門知識を活かして栄養指導を含めたお客様相談などへの道も開かれている。
また、2005年には未来を担う子どもをはじめ、全ての国民が健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等を目的にした「食育基本法」が成立。2010年までの5年間は「食育推進基本計画」が実施され、社会、地域、学校、企業ぐるみで、健康的な生活を送るために、食に関するあらゆる知識を育む取り組みが積極的に進められている。
さらに、2009年からは特定健康診査・保健指導が始まった。これは、生活習慣病予防のための新しい検査・指導だ。これらのことから、栄養のスペシャリストとなる管理栄養士のニーズは、今後ますます高まることが予想されるだろう。
■ どんな試験?
管理栄養士になるには、国家試験に合格することが必要になる。そのためには、4年制の管理栄養士を養成する学科を卒業し栄養士の資格を得て、はじめて国家試験を受けることができるのだ。
ちなみに、栄養士は厚生労働大臣が指定した栄養士養成施設(大学・短大・専門学校)を卒業し、その後各都道府県に申請すれば、無試験で資格取得できる。そのため、栄養士養成施設を卒業し、栄養士の資格を得てから実務経験(2年制の養成施設は3年以上、同様に3年制は2年以上、4年制は1年以上)を積めば、管理栄養士を養成する学科を卒業してなくても、受験は可能だ。
試験は大変難しく、試験の合格率は平均20%前後と決して高くない厳しい状況だ。
試験科目には「社会・環境と健康」「人体の構造と機能および疾病の成り立ち」「食べ物と健康」「基礎栄養学」「応用栄養学」「給食経営管理論」の9科目190門と、応用試験10問の200問となる。
■ どう選ぶ?
管理栄養士をめざすなら、最初から4年制の管理栄養士を養成する学科へ進学するのが一番の早道だろう。管理栄養士養成施設は、家政学部、栄養学部、生活科学部などに設置される管理栄養学科、栄養学科、健康栄養学科などで、大学によっては専攻として設置されている。大学案内でよく確認しておきたい。
■ 何を学ぶ?
現代社会の多様なニーズに対応できる管理栄養士として、必要な専門能力を養う。栄養学、食品衛生学、公衆衛生学など、栄養士としての基本的な分野はもちろんのこと、保健所や介護福祉施設などの地域福祉にも大いに関わることから、福祉、保健分野もカバー。疾病予防など医学的な視点、健康増進を目的としたスポーツ科学的な視点など、人・食・社会・運動・医療・福祉を幅広く学ぶことになる。
卒業時には栄養士資格、栄養教諭一種免許(教職課程の履修が必要)、食品衛生監視員、食品衛生管理者の資格が取得できる。さらに、消費者の視線で「食」に対する情報を発信したり、食空間をコーディネイトするなど、食に対する高度な技術と知識を持つ「フードスペシャリスト」や、食品化学やバイオテクノロジーなど、食品に関する科学的な知識をベースに食品関連の技術者として働くスペシャリストの称号「フードサイエンティスト」などの資格取得をめざしてもよいだろう。
いずれにしても、どこの大学も管理栄養士という難試験合格を目的としているため、授業、実習に時間を割いているところが多い。自立心の高い人には、やりがいのある職に就くためのステップとして、ぜひ、チャレンジして欲しい。