マンガの可能性を追求し、新しい価値を生み出したい。

■ どんな状況?
タイトルをいちいち挙げるまでもなく、多くの映画、テレビドラマはマンガを原作としている。この傾向は国内だけでない。海外制作の映画も日本のマンガを原作としたものが多々ある。小説離れが叫ばれて久しいが、今や日本のマンガは世界が注目する「鉱脈」であり、『鉄腕アトム(映画の米題:Astro Boy)』など、「古典」の発掘まで行われているという驚くべき状況だ。
テレビの深夜放送枠でマンガ原作のアニメが多数放映されているのは、高校生諸君には説明するまでもないだろう。パンフレットや広告にマンガやアニメのキャラクターを使っている大学もある。
マンガは小説に比べて一段低く見られていたのも過去のこと。不況風が吹く出版業界としては、マンガに活路を見いだそうと必死だ。小説もマンガとして読ませるべく「マンガ化した文芸作品」も流通している。教育・学習への応用も盛ん。歴史や古典などを題材としたマンガを、とっつきやすさ、理解しやすさから参考書代わりに手に取った人も多いのではないだろうか。
■ これからどうなる?
特に青年誌の部類は駅の売店(つまり漫画雑誌を買える場所)が合理化で減少した結果、大きな影響を受けている。電車の中でマンガを読んでいる人がめっきり減ったのは携帯電話やモバイルゲーム機だけの影響ではないのだ。
コミック本も少年誌も、売れ行きは決して好調とは言えないが、出版不況の中、数少ない光明のひとつだ。加えて、止まる気配のない活字離れと相対的に評価が上がる一方のマンガ特有のわかりやすい表現。これに「電子コミック」の普及が、今後のマンガ関連業界の未来を決めると言われている。
CDが売れなくなった代わりにダウンロードという新しい音楽配信法が普及したのとまったく同じことが、果たしてマンガにも起こるかどうかということだ。
そこに大きな影響を与えそうなのが、今年の1月にアメリカで発表されたiPad。雑誌、新聞、書籍もこのモバイルひとつで可能というものだが、その成功はマンガのコンテンツにかかっているのかもしれない。ゲームやビデオがパソコン普及に一役かったように、マンガの情報コンテンツがiPadのようなモバイルの普及をバックアップする可能性は大だ。しかも、499ドルというお手頃な値段であることから、普及には大きな期待が持てる。現在は、マンガの情報配信は携帯が主だが、さすがにマンガを読むハードとしては最適とは言い難い。これが専用モバイル機器とも言えるようなハードが普及すれば飛躍的な発展につながるのでは。
当然、マンガ関連業界も一変する。現在もコミック本への二次加工、コンビニ用コミックへの三次加工などを受け持つプロダクションや、キャラクター商品の企画・販売、アニメ化、映画化などに関わる関連業界があるが、情報コンテンツとしての価値が高まれば大きなビジネスに発展する。
ところでマンガ好きで有名な前総理大臣は「マンガの殿堂」建設に意欲的だったが、マンガ文化は行政が政策的に発展させるようなものではない。もし、そうなったら、マンガは間違いなくつまらないものになる、と思うのは筆者だけだろうか?
■ マンガ家になるには?
日本ではマンガの活用範囲、ビジネス規模が伸張しているにもかかわらず、その元を生み出すマンガ家の育成教育は、あまり変わっていない。プロのマンガ家になるには、マンガ誌で募集される新人賞を受賞、自分の師事するマンガ家のアシスタントやマンガプロダクションなどで制作スタッフとして技術を磨いて独り立ちする、直接出版社のマンガ誌編集部に作品を持ち込む、といった方法が大部分を占めている。
■ 大学でマンガを学ぶ?
そうした伝統的な方法とは異なる、新しいマンガ家への道として現れてきているのが、大学に設置されたマンガを専門的に学ぶ学科やコース・専攻だ。ここで好きなことを仕事にするレベルまで実力を伸ばすのだ。
日本のマンガは、日本人が思っている以上に文化的な価値もあり、国際的評価も高い。日本発の文化として世界に発信され注目される存在であり、学問的アプローチの重要性が認識されてきたということだろう。
2000年、日本初のマンガ学科が設置されたのを皮切りに、メディア・コンテンツ・キャラクター造形などの学部・学科が次々に誕生した。学生一人ひとりが個性に応じた作品作りに取り組めるとともに、編集やマーケティング、評論などマンガを取り巻くさまざまな知識を習得できるようになった。有名マンガ家を教員に招いているのも大きな特徴だ。
また、マンガ家を助けながら人気作品を作り上げていく編集者など、マンガ産業やコンテンツを支える人材育成も視野に入れ、多彩な教育を行っている。
これは日本だけではない。中国では国策としてマンガ、アニメを多くの若者に学ばせている。外貨獲得に、あるいは国際競争コンテンツとして有力だという判断からだ。驚くことに中国全土の大学の約4分の1にマンガやアニメを専攻する学科があるという。しかしまだまだ規制だらけの中国。テクニックは日本に追い付いても、政府が喜ぶ作品ばかりを作っていては世界の人々には感動は与えることは不可能だ。
マンガ家は自分で自由にキャラクターを生み出し、ストーリーを考える。構成力、描画力、発想力、表現力などさまざまな資質が求められるが、全部が優れている必要もない。大切なのはまずは楽しめる力。それを自分以外の人にも楽しんでもらえるスキルと、独りよがりにならない柔軟で多角的な視点だ。