生物の力を活かして環境と健康を守る技術を開発したい。

■ どんな学問?
21世紀が「環境の世紀」ともいわれるように、環境問題はいまや人類共通のテーマ。産業廃棄物や公害などの身近なものから、地球温暖化・オゾン層破壊・酸性雨など世界規模の問題まで、取り組むべき課題は多岐にわたる。環境科学は、こうした課題に科学的なアプローチを試みて問題解決の方法を探る学問だ。
環境問題がにわかにクローズアップされたのはここ数十年のことだから、環境科学も比較的新しい学問である。だがこの学問には、従来のアカデミズムとは明確に一線を画す特徴がある。それは、研究の早急な実用化が求められることだ。“待ったなし”の環境破壊に手を打つべく社会の要請から生まれた学問だから、環境や生命の不思議を探究するだけでは事足りない。また実用化が大きな使命であるため、環境科学は、物理学、生物学、化学、医学といった自然科学や社会科学の大半の学問領域をカバーしている。つまり幅広い既存の学問の成果を役立てながら実用化をめざす、ダイナミックな学問なのだ。
■ どんな成果が?
これまでいくつもの画期的な技術や研究が、環境科学からもたらされた。例えば、環境保全の試みでは、生物の働きで自然に戻る性質を持つ生分解性素材の開発、環境に配慮したバイオ燃料の開発、バクテリアの力で有害廃棄物を分解するとともに有用な薬品をつくりだす技術の開発、廃棄する魚などからコラーゲンを取り出す研究……。ほんの一例を挙げたたけでも、その研究内容の幅広さがわかるだろう。すでに実用化されている研究も多い。
医療の分野でも、コウモリを真似た視覚障害者用超音波レーダーをつくる試みや、生命体の機能をヒントに、人工的に設計・構築した材料で人工筋肉や人工臓器をつくる素材を開発する試みなどが大学の研究室で進められている。
生命環境科学を学ぶことは、未来に貢献することといっても過言ではない。
■ どう学ぶ?
環境科学へのアプローチは実に多岐にわたる。なかでも最近注目されているのは、生物が進化の過程で獲得してきた機能や構造といった生体のシステムを分析し、その成果を新しい医療技術の開発や、環境に適合する材料の開発などに応用する研究だ。
こうした研究・開発は、化学や農学、生物学や材料工学、さらには分子レベル・ナノレベルでの生命活動の研究など、実にさまざまな分野の成果を活かしながら行われている。そうした状況を見ると、環境科学を学ぶ足がかりは、生物学や化学、物理学や工学といった基礎的な知識が重要だといえるだろう。
生命科学(生物や化学)から出発した人は、環境科学を学ぶ過程で物理学や工学に関心の幅を広げ、逆に工学的知識が豊富な人は、それをベースに生命科学に触手を伸ばしていくわけだ。いずれにせよ、自分の基盤となる学問領域を確立することが第一歩だ。
そしてその基盤のうえにフィールドワークを積み重ね、生命体が生息する環境の実態を具体的に調査・分析する作業も重要となってくる。すなわち、教室での体系的な知識の習得と、現場での実践的な技術の習得を両方学ぶことも、この分野における学び方の特徴といえるかもしれない。
■ 何を学ぶ?
「生命環境を学びたい」と感じたきっかけを振り返ってみよう。キーワードはバイオテクノロジー、ヒトゲノム、マングローブ、クリーンエネルギー、環境アセスメントなど、どんなことでもいい。引き金が何であれ、あなたが関心を持った科学的または化学的事柄が、生命環境と少しでもリンクするならば、学びの道は開かれる。
大学での学びは通常、生物学や化学、物理学の基礎に始まる。そうして、自分自身の興味や関心に応じた方向へとさらに深い研究を進め、理学系・工学系のさまざまな知識と技術を学ぶことになる。一方で、このところ環境問題に関する法的整備が急ピッチで進んでおり、環境関連の資格も増えている。大学によってはこうした法律知識や資格取得を中心に据え、文系的思考の学生を受け入れるところもある。
理想としては、素材や材料の開発、医薬品や食品の開発、あるいは環境評価や環境改善の技術といった将来の進路を見据え、具体的なイメージを持って学部・学科やコース、履修科目を選ぶとよいだろう。
■ 将来は?
現在の地球環境、世界情勢のどれを見ても、この分野の人材はますます求められるようになるはず。事実、国や地方公共団体はもちろん、化学・医薬品、建設、食品、情報・通信、サービス業といった幅広い企業が専門的な環境評価能力や環境技術を身につけた人材を求めている。分野によっては慢性的な人材不足も指摘されている。大学での学び方次第で、生命と環境に関わる企業に就職することはもちろん、大学院に進学して研究者となる道や、社会で経験を積んだのちに独立して環境コンサルタントや開発コンサルタントとして活躍する道も考えられる。
■ どう選ぶ?
まず、「環境」や「生命」を名称に含む学科や専攻をチェックしてみよう。あるいは「物質」や「化学」といったキーワードで大学を探し、「環境」と「生命」に関わるカリキュラムやコースを持っているかどうかを調べてもいい。より具体的に将来の進路を描くならば、その学科や専攻を担当する教授の研究論文に目を通したり、関心のある企業の研究室を調べたりすることから絞り込んでいくこともできる。