人にやさしい建築物を設計したい。

■ どんな世界?
私たちが暮らす住宅から、学校や図書館、公園、娯楽施設、鉄道に飛行機、さらには道路や橋に至るまで、建築物は人々の生活基盤に関わる大切な存在だ。法律の改正、新しい工法による建造など、建築・設計は時代とともに大きな進化を遂げながら、成長・発展してきた。
「建築物を建てる」ということは、防災技術、環境問題など、生活や社会に深く関わることでもある。現在の建築・設計が抱えているテーマをいくつか紹介しよう。
まず「建物の質」について。構造計算書偽装や欠陥住宅などさまざまな問題が続発し、建築・設計業界に関する社会の目は厳しいものとなっている。多くの建設会社では、“安かろう悪かろう”というイメージを払拭すべく、ローコストと高品質の両立に注力。特に地震大国日本では耐震性への関心が強く、建築物の耐震性向上への技術開発が進んでいる。同時に、約30年と言われる日本の住宅寿命を伸ばす試みも生まれている。高耐久性の建物を建てることが、長い目で見ればローコストにつながるという考え方だ。「建築物は長く存在し続ける社会資産」という意識が、少しずつ社会に根付いてきたとも言えよう。質の問題は今後も、建築・設計の重要なテーマとなりそうだ。
次に、「環境との共生」について。リサイクル可能な建築部材を使用したり、環境や自然に配慮した冷暖房・給湯システムや照明機器を積極的に採用して省エネルギー化を進めるほか、生ゴミから堆肥を作る生ゴミ処理機、雨水や排水を再生利用できる浄水システムの導入など、環境との共生は近年、建設業界が最も力を入れているテーマだ。廃棄物の抑制や再資源化、シックハウス対策などさまざまな取り組みが求められており、建築部材メーカーと建設業界とが協力しながら、リサイクルシステムの構築が進みつつある。最後に、「ユニバーサルデザイン」について。これは高齢者や障害者が自立して安全な生活を送れるよう、室内の段差をなくしたり、使いやすい設備を設けていこうとするバリアフリーの考えを一歩進めたものだ。健常者や障害者、高齢者を問わず、あらゆる人々が使えるように建築物をデザインするというアプローチで、高齢化社会の到来を背景に、この傾向は今後も強まると考えられる。
■ どんな仕事?
建築・設計には、大きく「意匠設計」「構造設計」「設備設計」の3つの分野がある。
まず意匠設計は、建築基準法に基づいて建物の配置や間取り、つまりデザイン(意匠)を考える。構造設計は、法律の基準をクリアした強度のある構造にするため、荷重や風・地震など外部からの力を構造計算により割り出し、梁や柱の大きさを決める作業。設備設計は、建物内に電気やガスの配管や、照明・空調設備などの配置を考える作業だ。
ビルやマンションなどの大規模な建築物の場合、これらの作業を分担して行うケースがほとんどだ。対して、戸建て住宅などの小さな建築物の場合は、一人の建築士がすべて担当するケースが多い。建築図面を書くだけでなく実際に現場に足を運び、工事の進捗状況や作業内容を管理するのも建築士の仕事。設計から施工、引き渡しまでのすべての段階に関わる、総合プロデューサーと言ってもいいだろう。
■ 資格は?
まずめざしたいのは、国家資格である建築士の資格取得。建築物の設計・管理を行える資格で、一級、二級、木造の三種がある。資格によって建築物の規模・構造物が異なり、建築学系の学科を卒業すると受験資格が得られる二級建築士は、300平方メートル以下の鉄筋コンクリート・鉄骨建築物と、1000平方メートル以下の木造建造物(用途などの条件あり)の設計・工事・管理を担当。すべての建築物を手がけることのできる一級建築士受験には、2年以上の実務経験が必要になる。
このほか、建築設備の設計・工事管理を行う建築設備士、インテリアの専門資格であるインテリアプランナー、さらには福祉住環境コーディネーターなど、建築関係の資格にはさまざまな種類がある。また国際化が進む中、UIA(国際建築家連合)やAPEC(アジア太平洋経済協力)等の機関における資格との相互認証などの動きも活発。時代のニーズに合わせ、今後もさまざまな資格が誕生すると考えられる。
また大学では、国際化を意識しJABEE(日本技術者教育認定機構)認定に対応したカリキュラムを用意することも増えてきている。国際協定加盟国の大学院に進むときや、仕事のうえで国際的な認定修了資格が必要なとき、あるいは外国の資格に挑戦しようとするときなど、「JABEE認定プログラム修了」が大きな意味を持ってくる。社会的認知度はまだまだ低いが、将来注目されるキーワードになりそうだ。
■ どう選ぶ?
建築士として建築や設計の現場で働きたいのなら、建築士の資格取得を念頭に置くことが大切だ。受験資格が取得できるのは、工学部などに設置されている建築学科や、芸術学部の建築デザインコース、家政学・生活科学系の住居学科や生活環境学科など。また建築分野の中で、主に意匠について学びたいのなら建築デザイン学科、建築学全般について学びたいのであれば、工学や理工学系学部に設置されている建築学科など、志望に応じて学習内容をチェックしておきたい。
なお建築学以外にも、建築物の新素材開発や自然と建築物の調和など、さまざまな方向から建築にアプローチできる。前者は材料学科や化学科、物理学科などで学ぶことができるし、後者なら農学科、環境学科、資源科学科などが最適だ。また、政治や行政の分野で建設に携わりたい、不動産を扱いたいなど、目的に応じた関連学科も調べておきたい。
大学選び.comで、キーワード「芸術」を検索
大学選び.comで、キーワード「生活」を検索
大学選び.comで、キーワード「建設・土木」を検索
大学選び.comで、キーワード「建築」を検索