マンガの可能性を追求し、新しい価値を生み出したい。

●どんな世界?
日本のマンガ(アニメも含めて)は、欧米やアジア諸国をはじめ世界中でヒットし、愛されている。手塚作品やジブリ作品に限らず、さまざまなアニメやコミックが多くの人の心をつかみ、2006年には、メリアム・ウェブスターの英語辞典第11版に「MANGA」が掲載されるなど、マンガは国際語として浸透。またマンガ原作のテレビドラマや映画の増加、ネットマンガ(オンラインマンガ)の流行、携帯端末での読書など、マンガは日常に溢れている。
もともと日本のマンガ表現は、室町時代の絵巻物「鳥獣戯画」などに始まり、江戸時代の浮世絵、明治時代のポンチ絵を経て、戦後のストーリー・マンガへと発展してきた。日本のマンガがアメリカン・コミックスやバンド・デ・シネ(フランスのマンガ)と大きく異なるのは、劇画、ストーリー・マンガという独自の世界を構築してきたことにある。今やマンガは日本固有の文化・芸術であるだけでなく、国際的な競争力を備えたコンテンツとしてさらなる発展が見込まれている。
具体的には、従来の週刊誌や月刊誌、単行本として市場に流通するだけではなく、テレビアニメやDVD、映画、ゲーム、キャラクター商品などさまざまなマンガ関連産業がある。またマンガ特有のわかりやすい表現がメディアコミュニケーションの視点から高く評価されるようになり、その展開も多彩だ。
例えば、教育・学習への応用、テレビCM、広告などエンターテイメントの枠を超えて利用されたり、作品や作家ゆかりの地での街作りプロモーションやイベント、ミュージアム、テーマパークの建設・運営など新規ビジネスも誕生。経済産業省も15兆円とも言われるコンテンツ産業の市場規模に注目、中核となるマンガに対する支援や育成に本腰を入れ始めた。マンガをめぐる社会環境は今、大きく変わりつつあるのだ。
●最新事情は?
ハリウッド映画を国策としてビッグビジネスに育てたアメリカとは異なり、日本のマンガ界が自力で成長してきたためか、マンガ家育成教育はビジネス規模のわりに発達していない。プロへの道としては、出版社が雑誌媒体上で開催するさまざまなマンガ・コンクールに入賞し、新人マンガ家としてデビューするほか、専門学校等で実技を中心に学んだ後、マンガプロダクションなどで制作スタッフとして技術を磨き、独り立ちするといった方法がある。そのため10代でのデビューも珍しくない替わりに、読者アンケートなどで人気が落ちれば作品打ち切りもあるという、新旧交代のスパンが短い厳しい世界だ。
そうした現状の一方、ここ数年大学に相次いでマンガを専門として学ぶ学科やコースが新設されている。かつては「学生が本を読まなくなる原因」と白い目で見られていたマンガだが、社会的な影響力の大きさに対応、学問的アプローチの重要性が認識されてきたというところだろう。2000年、日本初のマンガ学科が設置されたのを皮切りに、メディア・コンテンツ・キャラクタ造形などの学部・学科が誕生。学生1人ひとりが個性に応じた作品作りに取り組めるとともに、編集やマーケティング、評論などマンガを取り巻くさまざまな知識を習得できるようになった。
有名漫画家を講師に招いているのも大きな特徴だ。マンガ家をめざす人だけでなく、マンガ産業やコンテンツを支える人材育成も視野に入れ、多彩な教育を行っている。
マンガ好きを売りにする政治家も現れるなど、マンガを取り巻く環境は大きく変わってきた。少し前ならマンガ好きは間違いなくマイナスイメージだったのだが。
文化論や作品論などの見地からマンガを取り上げるケースも多々ある。日本文学や日本文化に関する講義の中でマンガが取り上げられたり、海外との比較論の材料になったり。マンガに対する学問的なアプローチはまだまだ始まったばかり。歴史や体系化を含め、今後の研究成果に注目したい。
●どう選ぶ?
自分でキャラクターを生み出し、ストーリーを考え、レイアウトを工夫し、絵と文字を組み合わせた表現で独自の世界を作り上げる。そのすべてに関わるマンガ家になるには、ユーモアのセンス、構成力、描画力、発想力などさまざまな資質が考えられるが、そのすべてに長けていなくてはならないというものでもない。
むしろ必要とされるのは、たくさんの読者をひきつけるために、独りよがりにならない、柔軟で多角的な視野と、魅力的なストーリーやアイデアを発想するための人間や社会を観察する鋭い目だ。
進学先としては大学のマンガ系学科や専門学校が考えられる。そのうち大学では、マンガの歴史や文化、ビジネス、批評などの理論面と、制作を通してデッサンや表現技術などの技術面を学ぶ場合が多い。またデジタル技術など新しい表現方法や発表形態にも着目、独自の観点からマンガに関わる人材育成に努めている学科もあるので、各学科の教育内容やカリキュラムをチェックし、志望に合うところを選びたい。
また、美術系学科で表現やデッサン力などの基礎的な素養を身につけるのも1つの方法だろう。まだまだ広がるマンガ世界に柔軟に対応できるよう、学生時代に広い視野を身につけておきたい。
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