「スタートが遅い/もう少し早くエンジンがかかっていたら」進路指導の先生にお話を伺うと、こうした感想を頂くことが珍しくありません。将来就きたい職業がある、勉強したいテーマがある、目的意識の高い高校生は、スムーズに大学選びへと入っていきます。一方、多くの高校生は「みんなが行くから」「就職する時に有利だから」と、“とりあえず”感覚でスタートしがち。そうした結果、大学入学後の大きな変化に戸惑うのです。「時間割は自分で組み立てなければならないの?」「自分は本当にこの分野を学びたかったのかな?」と。
高校までの学びが「学年・クラスという集団を単位とし、基礎知識を覚える」ことに主眼が置かれていたのに対し、大学では「学生一人ひとりが、自分で考えながら、学びを自分でデザインする」ように変化します。常に「自分」がどうしたいのかが問われ続けますし、また具体的な目標が(少しずつでも)設定できないことには、例え面倒見の良さを掲げている大学でもフォローできません。
つまり「何のために学ぶのか?」という問いには「自己実現のために」。「誰のために進学するのか?」という問いには「自分のために」。この極めてシンプルながら本質にあたる部分を、本人と保護者の皆様で話し合って頂くところから大学選びがスタートすると私たちは考えています。
もう一つ、進路指導の先生の言葉を借りると「気持ちはわかるけれど、推薦指定校の存在と大学のネームバリューにこだわる親御さんが多い」。
大切なお子様の将来を考えて、指定校推薦によるリスク回避を第一に考えたり、自分のために学ぶのなら(あるいは、どうせ行くのなら)「難関・名門・偏差値の高い大学へ行きたい」という希望もあるでしょう。「学びへの意欲」「本人の学力」「入学後のビジョン」がバランス良くかみ合っている状態で、それをめざすのは素晴らしいことですが、「その大学に入ること」だけが先行してしまうと「何のための、誰のための進学か?」という本来の目標を見失いかねません。繰り返しになりますが、学びたいことを自由に学べるかわりに、大学は学びに対する責任を学生に要求します。ですから「とにかく良い(と言われている)大学に進めば良い」で入学できても、それが本人のためになるとは限らないのです。
「大学全入時代」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃると思います。18歳人口の減少により、進学希望者数と入学定員数が一致することをさしますが、それは全体の数値を見渡した傾向であり、お子様のめざす大学が入りやすくなるという根拠にはなりません。
むしろ、大学・短期大学進学率が50%を越えていることは、大学卒業者の増加(大卒者の大衆化)を招き、結果的に「どこの大学を出たか」よりも「大学で何を学んできたのか」が問われる時代になりつつある/すでになっている点をご賢察いただきたく思います。
そして「大学進学とは個人の能力を高め、これからの社会にふさわしい力を養うサービスを購入すること」という感覚を持って頂きたいのです。いま各大学では、他大学との差別化をはかるためにさまざまな改革が実施されています。教育、研究、施設の拡充、専門スタッフの増強等々、続々と誕生する大学の新しい個性は、「どのようなサービスを購入すべきか」という皆様の厳しい目があってこそ、その重要性・必然性が浮き彫りになるのです。